万国漢字志

都市篇 · ポルトガル

万国漢字志 都市篇 第四百十五号|アルマダ――四字の音写を三字に整える「阿馬達」――

現代中国語の公的用例「阿尔马达」を原字のまま確認し、日本語字形への変換と一字の省略を分けて三字案「阿馬達」を考える。


川向こうの町と、自治体全域

ポルトガル観光局の日本語ページは、テージョ川南岸の町を「アルマダ(Almada)」と紹介します。リスボンを望む町として語り、コスタ・ダ・カパリカもアルマダ市の一部だと記しています。ポルトガル観光局「Almada」

ただし、川辺から見える中心部と、人口を数える自治体全域は同じ範囲ではありません。本稿の対象はポルトガルの Almada、DICO 1503の concelho、すなわち municipio 全域です。リスボン大都市圏全体やアルマダの市街地だけを数えるものではありません。


歴史表記

アルマダ市の「Centro Histórico de Almada」は、地名がアラビア語の「Al-ma’dan」に由来し、「鉱山」を意味すると説明します。同じページは1147年の征服と1190年の勅許状にも触れます。アルマダ市「Centro Histórico de Almada」

これは現在の市が公開する歴史解説です。ページには成立・更新年月の明示がなく、今回、中世のアラビア語文書や1190年勅許状の原本を読めたわけではありません。「Al-ma’dan」という説明を、当時の綴りを原史料で確定した成果や、日本語の漢字地名の実例にはしません。

一方、市歴史文書館の2023年史料集には、1973年6月16日付の Decreto n.º 308/73 が、当時の『Diário do Governo』の紙面画像と全文翻刻で収録されています。原文は「Artigo único. É elevada à categoria de cidade a vila de Almada」とし、同名の concelho の所在地である vila を cidade に昇格させました。『Almada na História』第36号、21–24頁

今回確認したのは史料集の翻刻本文で、収録された紙面画像の取得には成功せず、画像を独自に判読していません。この法令は20世紀の都市昇格を示す原資料です。中世の地名語源や漢字表記の原典ではありません。また、法令が cidade と concelho を書き分けるように、1973年の市街地の地位を、現在の自治体人口の範囲と同一視しません。日本語の歴史的漢字形は確認できなかったため、本稿では掲げません。


日本語での用例

ポルトガル観光局の日本語版は見出しと本文で「アルマダ」を用います。外務省の2016年「世界の学校」も、カシーリャス・テージョ高校を「アルマダ市」の公立高校として紹介しています。ポルトガル観光局、外務省「世界の学校 ポルトガル共和国」

本稿の現代日本語名は、この二つの公的用例に従ってアルマダとします。いずれも現代のカナ表記の用例であり、歴史的な漢字表記の証拠ではありません。


中国語圏その他の表記との比較

在ポルトガル中国大使館は、2023年12月8日付の記事で、現地校での行事を「阿尔马达市安塞尔莫·安德拉德集团学校活动」と記しています。記事には市長と市政府への言及もあり、この「阿尔马达市」はポルトガルの当該都市を指す現代の公的用例です。在ポルトガル中国大使館の記事

引用では簡体字の「阿尔马达」をそのまま保持します。本誌案では「马」を日本語で用いる「馬」に、「达」を「達」に改め、「尔」を省きます。こうして得る「阿馬達」は、確認した四字をそのまま採用した形ではありません。字形変換と短縮を本誌が加えるため、区分は「改」です。「阿馬達」という同一三字で当該都市を呼ぶ実例は確認していません。


二文字・三文字案の比較

阿馬達

「阿尔马达」から「尔」を省き、残る簡体字を日本語字形の「馬」「達」に改める三字案です。アルマダのア・マ・ダに近い三つの位置を残せますが、カナ名の「ル」に当たる手がかりを失います。通常の日本語音読みを並べてもアルマダとは読めないため、カナ名と原綴りを必ず添えます。

阿爾馬

確認した四字の前半を日本語字形に直し、末尾の「达」を省く三字案です。「阿爾」でアルに近い並びを残せても、語末のダが消えます。「阿爾馬」が当該都市の略称として使われる直接用例も未確認です。

阿達

先頭と末尾だけを残す二字案です。短い反面、「尔马」を省くため、原名のルマに当たる部分がまとめて失われます。ア・タツなどの通常の日本語読みから対象都市を特定することもできません。短さを優先しすぎるため採りません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

アルマダ(Almada)

所属国

ポルトガル

暫定制定都市名

阿馬達――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

ポルトガルINEの年次住民人口推計による2025年12月31日の人口は202,896人です。指標0012918の保存済み全件JSONから、geocod=1B01503、Sexo=T/HM、Grupo etário=T/Total の Almada 行を照合しました。これは concelho 全域の通常居住者推計で、中心市街地、cidade、freguesia、リスボン大都市圏、歴史地区だけの人口ではありません。INE指標0012918

用いた2026年11月8日保存JSONは4,352,035バイト、SHA256は 484f57d193b2985b8ea067be791bf0430f7e525d2629fe29964b2a5a15686944 です。該当要素 /0/Dados/2025/19584 の原値は 202 896、数値欄は 202896。メタデータの最終更新日は2026年6月22日で、地理次元05257はCAOP2020と、2024年1月1日発効のNUTS2024を用います。INEメタデータ

INEの2026年7月広報は、2025年推計の基準日を12月31日とし、行政資料を統合する方法だと説明しています。INEWS第66号9頁 DGTのCAOP2020カタログでも、印刷104頁に「ALMADA 1503」を確認しました。DGT「Catálogo de entidades da CAOP2020」

市の案内は、市街地を約95,000人、municipioを約175,000人とする2011年値を別々に示しています。この旧年値を2025年人口に混ぜず、範囲が違うことの確認だけに使います。アルマダ市「Que tipo de cidade é Almada?」

ポルトガル政府の国別案内が首都をリスボンと明記するため、アルマダは国家首都ではありません。ポルトガル政府「Sobre Portugal」 座標は選定資料のGeoNames代表点を継承し、今回再取得していません。自治体境界ポリゴンそのものも再検証していません。


採らなかった表記と未解決点

「阿馬達」は、現代の公的な中国語音写を日本語の三字案へ調整したものです。日本語の伝統地名、現地の公称、歴史史料に載る漢字名ではありません。「阿尔马达」の原字と本誌案を混同せず、同一三字の当該都市用例が見つかるまでは「既」としません。

日本語の歴史的漢字形、漢字表記の初出・命名者、「阿馬達」「阿爾馬」「阿達」の直接用例は未確認です。地名のアラビア語由来説についても、中世原文書と語形変化の検証を残します。1190年勅許状の原本、現在の municipio 境界と中世・1973年の範囲の対応も未確認です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第四百十六号

第四百十六号は、セイシャル(Seixal)を取り上げます。