万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第八十四号|アネホ――海辺の旧都と二つの三字形

トーゴの海辺の旧都。中国語の阿内霍と台湾辞書の阿內合を比べ、カントン人口と港の位置を区別する。

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ロメの東、海と湖のあいだ

前号のロメから東へ進み、トーゴの海辺の都市アネホ(Aného/Aneho)を訪ねます。トーゴがユネスコへ提出した資料は、南に大西洋、北にトーゴ湖、東にモノ川を置いて、アネホとグリジを含む一帯の地理を説明しています。

同じ町を、日本語資料は「アネホ」、中国語資料は「阿内霍」、台湾の地名辞書は「阿內合」と記します。音を受け止める三字の違いを、町の歴史とは分けて調べます。


日本語のアネホと歴史表記

JICAのロメ漁港整備報告書は、本文1-23頁で「ベナン国境に近い町アネホ」と記し、海岸侵食対策を紹介しています。図にも「アネホ」の名があり、対象都市を直接指す日本語用例として使えます。

一方、今回の調査では、日本語の地名として使われた歴史的な漢字表記を原典で確認できませんでした。中国語資料の漢字を、日本語の古い用例として数えることはできません。未確認は不存在の証明ではなく、近代の地理書や地図には調査の余地が残ります。


都市を直接指す「阿内霍」

直接本文を読めた邵旭ほか「中国加工番茄品种对多哥番茄产量的影响」の92頁は、試験地を「南部的滨海区阿内霍市周边20公里范围内」と記します。同頁の英語要旨にはAneho City、本文にはAného市もあり、阿内霍と対象都市の対応を確かめられます。

本稿では、この論文の都市直接用例を採用の根拠とします。ただし、表記の初出や漢字を選んだ人物まで分かったわけではありません。


台湾辞書の「阿內合」

台湾の国家教育研究院『外國地名譯名(第四版)』135頁には、「Aneho 阿內合 多哥」と、北緯6度17分・東経1度40分の座標が載ります。英字名と国名を伴う、直接の地名対応です。今回の確認は検索索引に抽出された該当行によるもので、原頁画像の照合は継続します。

阿內合は、末字が「霍」と異なる三字形です。「內」を「内」に置き換えるだけでは「阿内霍」にはなりません。繁体字と簡体字の差に加え、資料ごとの選字の違いとして残します。


旧都の建物と暫定一覧

ユネスコの「Agglomération Aného Glidji」は、トーゴが2021年12月16日に提出した世界遺産暫定一覧の項目です。世界遺産に登録されたという意味ではありません。

提出文書は、アネホとグリジを二つの歴史的な町からなる集積として説明し、ゼベの行政地区に残る建物群を、1887年から1897年までの最初の首都に結びつけています。アネホガンやアジドにはアフロ・ブラジル系の建築も挙げられます。建物が伝える交流の歴史は、この町に漢字名が付いた時期を示す証拠とは別です。


人口の範囲、港の位置

INSEEDの2022年国勢調査人口冊子、印刷37頁の表15では、アネホのカントン人口は2万8,237人です。カントンは行政区域であり、連続した市街地だけの人口とは限りません。同表のLacs 1自治体は5万2,994人で、アネホとグリジの二つのカントンを合わせた値です。本稿では両者を区別します。

UNECEのUN/LOCODEにあるTG ANEの「0614N 00136E」は、十進表記で北緯約6.233333度、東経1.6度となります。これは港の概略位置として示す座標で、市域の重心や人口を数えた区域の中心ではありません。分単位の元資料を、小数の桁数だけで精密な測量値のように扱わないことも必要です。


三字形の比較と暫定案

論文で中国語名と英字名の対応を確認できる「阿内霍」を主案とします。「阿內合」は台湾の公的地名辞書に根拠のある別形として残します。二字への省略には今回、直接用例が確認できないため、三字を保ちます。

現代日本語都市名

アネホ

所属国

トーゴ

暫定制定都市名

阿内霍――既

制定状態

暫定制定・日本語の歴史的漢字用例と命名者は継続調査

「既」は中国語資料に既存の使用例があることを示し、日本語で定着した表記という意味ではありません。その三字を本誌の日本語都市索引に採る判断は、今回の暫定案です。日本語史料の漢字用例、各形の初出と選字者、現地の都市名の由来と命名者は未確認です。字義から地名の意味を推定せず、確認できた使用例を採用の根拠とします。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第八十五号

次回の候補はグリジ(Glidji)です。アネホと並べて語られるこの町について、日本語名と漢字の直接用例から調べます。既存の漢字表記は、確認できるまで掲げません。