万国漢字志

都市篇 · コートジボワール

万国漢字志 都市篇 第七十八号|アシニ=マフィア――町とコミューンの同じ名――

アシニ=マフィアはコートジボワール南東部、大西洋と潟湖にはさまれた沿岸の町。同名の村・コミューンがあり、2021年のコミューン人口は21,941人。

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海と潟湖のあいだの名

都市篇第七十八号は、前号のジャックビルから東へ進み、コートジボワール南東部のアシニ=マフィアを取り上げます。海と潟湖のあいだにある町です。この名は一つの集落だけでなく、複数の村を含むコミューンにも使われます。今回の課題は、どの資料が町を指し、どの数値が広い行政区域を指すかを分けることです。

中国語の観光案内には「阿西尼-马菲亚(Assinie-Mafia)」とあり、「度假小镇」、すなわち行楽地の町と説明されています。漢字と欧文名が同じ箇所にあり、三字ずつをつないだ町名の直接用例です。ただし、公的な地名辞典でも日本語の歴史的表記でもありません。


日本語の呼び方は定まっているか

前号の予告は「アシニ=マフィア」としました。本稿でもこの読みを見出しに使いますが、独立した日本の公的資料で定着を確認した形ではなく、本誌の仮の片仮名表記です。日本語の旅行サービスには「アシニー・マフィア」なども見えます。長音と区切りの揺れを、別々の都市の証拠にはしません。

国際協力機構(JICA)の沿岸図は、Grand-Bassamから東へAssinie Mafia、Adiakéを並べています。対象の位置を確認できる一方、その図は欧文名の表示であり、日本語の漢字名の出典ではありません。今回確認した日本語資料から、この町に直接用いた歴史的漢字表記の原典は特定できませんでした。未確認は不存在の証明ではありません。


中国語の用例は町を指す

阿聯酋航空の中国語によるコートジボワール案内は、グラン・バッサムの次に「阿西尼-马菲亚 (Assinie-Mafia)」を紹介し、大西洋と潟湖にはさまれた行楽地の町と記します。この文脈で指されるのは沿岸の町です。同じ名のコミューン全域に、この字形を公称として用いたことまでは、この資料からは言えません。

原文の「阿西尼-马菲亚」は簡体字を含み、途中にハイフンがあります。本誌の暫定案「阿西尼馬菲亞」は、马を馬、亚を亞という繁体字相当の字形に換え、索引では区切りを外したものです。原文をそのまま引用した形ではありません。既存の中国語の字を日本語の都市索引へ暫定的に取り込む制定区分を「創」とします。中国語の六字を本誌が新造したという意味ではありません。字面から現地語名の意味や、名を付けた人物を推論しません。


村とコミューンを分ける

コートジボワール政府の2018年の政令はアシニ=マフィアのコミューンを設け、その範囲に同名の村をはじめ、Assinie-France、Assouindéなど複数の村と付属集落を含めました。つまり町の一点とコミューン全体は同じ広さではありません。19世紀末の現地紀行も、Assinieに属する別の小集落としてMafiaに触れています。古い資料のAssinie、Mafia、現在の複合名を無条件に同一視しません。

地図の点は、GeoNamesが居住地Assinie-Mafiaに置く北緯5.13384度、西経3.29096度を採ります。町を示す代表点であり、コミューンの重心ではありません。

2021年12月14日の国勢調査は、アディアケ県内のAssinie-Mafiaの人口を21,941人と記します。同国の2023年自治体選挙に関する政令別表も、コミューンAssinie-Mafiaの人口として同じ21,941人を掲げます。この欄は町の中心部だけの人口ではなく、自治体の数値です。コートジボワールの国の首都はヤムスクロであり、アシニ=マフィアは国都ではありません。


六字を短くしない理由

都市篇では二字・三字を標準にしています。しかし「阿西尼」だけでは、複合名全体ではなく広いアシニ地域を指す資料と区別できません。「馬菲亞」だけを町の独立した漢字名として用いた出典も確認できませんでした。原文が複合名全体に当てた字を、長いという理由だけで途中から削りません。

日本語での歴史的使用、原文の選字者、現地語でのAssinieとMafiaの語源は、いずれも未確定です。旅行案内の直接用例と、本誌が字体を整えた暫定案との境目を残します。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

アシニ=マフィア(本誌の仮表記。アシニー・マフィアなどの異表記あり)

所属国

コートジボワール

中国語の町名用例

阿西尼-马菲亚

暫定制定都市名

阿西尼馬菲亞――創

制定状態

暫定制定・日本語の歴史的漢字用例と原文の選字者を継続調査


採らなかった表記と未解決点

「阿西尼」だけをこの町の確定した漢字名とはしません。また「馬菲亞」だけで同じ町を指すと決めつけません。原文のハイフンを消した暫定案が、既存の中国語表記そのものであるかのようにも扱いません。

調査を続ける点は、日本語資料における町の片仮名名と漢字名、現地名の由来、そして漢字の選字者です。行政区域と村の範囲を示す原資料が増えれば、地図上の代表点と人口欄も見直します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第七十九号

次は、国境を越えたガーナ側のハーフ・アシニです。同じ「アシニ」を含む名が、別の国の町でどう使われるかを調べます。