万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百八十二号|バダホス――古い名を結ぶ前に――

ローマ都市との同定に慎重な市史を読み、中国語の現代用例から三字の暫定案を考える。


別名の多さと、確かさの違い

都市の古い名を並べると、時代を越えて一本の線が引けそうに見えます。けれども、バダホス市の歴史案内は、ローマ時代の都市としての起源を裏付ける証拠がないと記しています。名前が似ていることや、後世の別名一覧に載ることだけでは、同じ場所の歴史とは決められません。バダホス市「Historia」

スペインの自治体バダホスを対象に、古い名前の説明と現代の漢字用例を分けて読みます。


歴史表記

市史ページの「875」の項は、イブン・マルワーンによる都市の建設を説明します。一方で先史時代の居住と都市の成立は分け、ローマ期の Bathalius という同定には文書・考古資料の裏付けがないとします。Pax Augusta についてもポルトガルの Beja との対応を述べます。少なくとも、この市の現代解説を読んで、バダホスを無条件にローマ都市の継続とすることはできません。市史「138-25 A.C.」「875」

ここで読んだのは、成立・更新年月不記載の公的な現代解説です。市史の冒頭には868年への言及もあるため、875年の項をもって関連する全ての年代問題が解決したとはしません。中世の年代記原本やアラビア語原文・校訂翻刻は未見です。

市の「Al-Mossassa 2022」という題のページには、祭名の一部として Batalyaws の綴りがあります。これは過去を記念する現代の用例であり、中世の原筆を直接読んで得た形ではありません。題名の年と現行ページの日付表示も一致しないため、用例の初出年にはしません。市の祭礼紹介

日本語の歴史的漢字形の原典は、今回確認できていません。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトには「バダホスのカーニバル」という見出しと、所在地 Badajoz の併記があります。本稿はこの日本語名を採ります。同名の県と市を取り違えず、ここでは自治体バダホスを指します。公式日本語の催事案内


中国語圏その他の表記との比較

Minor Hotelsの公式中国語サイトは、西班牙の都市別宿泊地一覧に「巴达霍斯」を挙げています。そこからのリンク先は Badajoz の都市別ページを示すものです。確認できたのはホテル運営者自身の一覧本文とリンクであり、リンク先の詳細本文は今回取得できませんでした。公式中国語のスペイン宿泊地一覧

「巴达霍斯」は四字の現代中国語用例です。本誌は「达」を日本語で用いる「達」に替え、最後の「斯」を省いた「巴達霍」を暫定案にします。字形変更と省略を行うので「改」です。短縮後の三字を、そのままの実例として確認したわけではありません。


二文字・三文字案の比較

巴達霍

前半三字を残す調整案です。バ・ダ・ホに近い見取り図は作れますが、通常の日本語音読みではハ・タツ・カクなどとなり、バダホスとは読めません。とくに末尾のスに相当する部分を省いており、カナを添えて初めて都市名として伝わります。

巴霍

「达」「斯」を省く二字案です。短さの代わりに中間も語尾も失うため、読みを推定する材料が少なくなります。歴史的な略称や既存の自治体表記として確認したものではありません。

巴霍斯

「达」を一字だけ省く三字案です。日本語でも用いられる残りの三字には字形変更を加えませんが、省略そのものが本誌の調整です。「既」にはしません。語尾の手がかりを保てる一方、ダが欠けるため、採用案と比べても一長一短が残ります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

バダホス(Badajoz)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

巴達霍――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

INE年次人口センサス表68065による2025年1月1日の通常居住者人口は150,870人。自治体コード06015の municipio 全域です。歴史的な城壁内だけでも、バダホス県全域でも、国境の反対側を含む都市圏でもありません。INE表68065

使用したのは2026年11月7日保存の2025年版です。公表日は2025年12月2日、対応PXの作成日表示は2026年4月30日。保存CSVのSHA256は 9e37188faa63aa86e7a8648469834beaa2e728e5338e3364ef1ce4685178d419、該当行は物理9677行です。

現代のスペイン・06015という自治体の同一性と、中世の町や古代の居住地の同定は別に扱います。中世の城塞の範囲が現在の自治体全域だったとはしません。代表点は選定資料に保存されたGeoNamesの位置を継承し、境界ポリゴンの版は独立には確認していません。


採らなかった表記と未解決点

四字の「巴达霍斯」は、資料の原字形を保つ現代用例として残します。日本語の伝統的漢字形、漢字表記の初出・命名者、「巴達霍」と同一形の実際の都市名用例は未確認です。

古いラテン名や Batalyaws を漢字に写せば、それだけで歴史表記が復元できるわけではありません。原文・伝来・地理的範囲の照合が先に残ります。創作した音写を、未発見の原典の代わりにはしません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百八十三号

第三百八十三号はリェイダを取り上げます。