同じ地名の横に、違う数字がある
トーゴの都市人口表をたどり、今回はBadouを取り上げます。日本語名は本誌でバドゥと仮置きします。公的な日本語統一形や現地発音を確認し終えた、という意味ではありません。
統計年鑑では11,503人。地名データベースでは24,000人。同じBadouという見出しでも、すぐに増減の話にはできません。数えた年と範囲を揃えて初めて、二つの数字を比較できます。
今回は町を説明する材料を、確認できた人口表と地名記録に絞ります。その記録と、これから提案する漢字名も分けて読みます。
都市人口表のBadou
INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)を確認しました。表題は2022年のトーゴ都市別居住人口を男女別に示すものです。Badou行は男性5,704人、女性5,799人、合計11,503人。二つの数の和も一致します。
続く**印刷34頁(PDF52頁)**の表末尾には、INSEED、RGPH 5、2022年人口空間分布資料という出典があります。対象行だけでなく、表題と続頁の出典を原頁画像で確認しました。
ここで採るのは、統計が都市Badouとして数えた居住人口です。県やコミューンの全域人口、2026年現在の推計人口ではありません。統計上の都市範囲と行政境界の対応は未確定として残します。
同じPDF51頁の上部には、前の表の「Préfecture / Commune」という見出しも残っています。途中の頁から読むときは、最初に見えた見出しをそのまま下の表へ当てはめないことが大切です。Badou行が属するのは、その下で始まる都市別の表3.21です。
地名の代表点と、年次のない人口
GeoNames公式RDF、識別番号2367660では、名称Badou、国コードTG、居住地分類P.PPL、北緯7.58333度・東経0.6度を確認しました。これは町の代表点であり、町域の境界を表しません。
同じ記録に人口24,000人もありますが、人口の対象年は示されていません。記録文書の更新日があっても、それを人口調査の実施年に読み替えることはできません。したがって、今回の人口には年と表の対象が明記されたINSEEDの11,503人を採ります。
二つの数字の差から人口減少を説明することもしません。年次と集計範囲が揃っていない数字は、増減の系列にはできないためです。
外務省のトーゴ基礎データが示す国の首都はロメです。Badouは国の首都ではありません。地方行政上の役割については、今回の資料だけから確定しません。
歴史表記と日本語での用例
今回確認した統計原表と地名記録の形はBadouです。日本語の歴史的漢字表記、漢字による先行使用・提案は、現時点では原典未確認です。原典を見つけていないことは、先例が存在しないことの証明ではありません。
日本語の定着したカタカナ形も継続調査とします。バドゥは本稿の読みを示すための仮置きであり、ローマ字Badouを併記して対象を明らかにします。地名の語源、命名者、命名年は未確定です。
中国語圏その他の表記との比較
中国語形を探す検索では「巴杜」という候補が現れましたが、今回、公的な地名資料の原頁と対応関係を確認できていません。中国大陸・台湾それぞれの公的掲載形は未確定とし、確認済みの歴史表記には加えません。
また、仮に中国語の用例を確認できても、それだけで日本語の漢字先例にはなりません。どの言語で、どの都市を指して使った文字なのかを確かめる必要があります。
二文字・三文字案の比較
以下は史料の掲載形ではなく、本誌が今回作る試案です。
馬都
二字案は馬都です。漢字ペディアの馬の音バと、都の音ト・ツを手掛かりにします。ただし通常の字音を並べただけでバドゥにはなりません。都をドゥに対応させる部分は、二字全体に読みを添える本誌の約束です。
この二字を暫定選定します。「馬の都」という地名の語源を主張するものではなく、馬の飼育や首都としての歴史を示す字でもありません。字義から町の性格を作らないようにします。
馬都宇
三字案は馬都宇です。末尾に宇を置き、ドゥの母音を別の字にも負担させる試案です。しかし、ドゥを都・宇の二字に分けることで、かえって独立した音が続くように見えます。原綴りのouという二文字を、そのまま二音と考えることもできません。今回は二字全体に読みを添える方を選びます。
馬都は既存表記の改訂としてではなく、今回の新しい選定として提示します。制定区分は創です。適切な先行用例が見つかれば、表記と区分の双方を見直します。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名(本誌の仮置き)
バドゥ
原綴り・所属国
Badou/トーゴ
暫定制定都市名
馬都
読み
バドゥ(二字全体に対応させる本誌の当て字)
制定区分
馬都――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
一字略称は制定しません。日本語の先例と今回の提案を区別して残します。
採らなかった表記と未解決点
馬都宇は末尾の音を二字に分ける根拠が乏しいため採りません。検索上の中国語候補は、公的原典を確認するまで別の調査課題として残します。
日本語名の定着形、歴史的漢字表記、中国語圏の公的用例、現地発音、語源と命名者、都市統計の境界は未確定です。24,000人という別の人口についても、対象年と範囲が分かるまでは増減の議論に使いません。
地名を一つに定めても、そこに付く数字まで一つの意味になるわけではありません。Badouの人口は資料の条件とともに、馬都という文字は提案であることとともに記録します。
参考資料
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』。表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)。表題、Badou行、続頁の出典を原頁画像で確認
- GeoNames、Badou(2367660)公式RDF。名称、国コード、居住地分類、代表座標を確認。人口24,000人は年次不明のため不採用
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」。国の首都ロメを確認
- 日本漢字能力検定協会「漢字ペディア・馬」。字音の資料であり、都市名用例ではない
- 同「都」。字音ト・ツの資料であり、バドゥという読みを保証するものではない
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百六号
次回もトーゴの都市人口表にある未収録都市を候補とし、原本で地名と集計範囲を確認してから選びます。
