万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百四十号|バルセロナ――Barcino から四字の都市名へ――

現代の機関用例「巴塞罗那」を検討し、日本語用の「巴塞羅那」を暫定提案する。


古代の名と、今の四文字

バルセロナ市の歴史案内を読むと、現在の都市名の前に Barcino という名が現れます。一方、在スペイン中国大使館経済商務処の都市案内では「巴塞罗那(Barcelona)」。古い名と現在の漢字表記は、資料の種類も時代も違います。四字をただ昔からの当て字として並べず、それぞれの出所から考えます。


歴史表記

市が運営する Meet Barcelona の「La Barcino romana」は、ローマの植民市の名称を「Iulia Augusta Faventia Paterna Barcino」と紹介しています。ここで確認したのは自治体による現代の歴史解説です。古代の碑文や写本の原物・画像を直接読んで確認したわけではありません。

Barcino と現在の Barcelona を結びつける現地の説明は確認できますが、音や綴りが変化した全段階、地名の究極の語源は本稿では確定しません。日本語の歴史的な漢字表記も原典画像では未確認です。古代の植民市と現代の広い自治体全域が同じ範囲だったとは扱いません。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトの日本語都市案内は「バルセロナ」を見出しとし、Barcelona を併記しています。本誌もこのカナを採ります。古代の Barcino を現在の日本語都市名として置き換えるのではなく、歴史上の別の形として紹介します。


中国語圏その他の表記との比較

在スペイン中国大使館経済商務処の「主要城市」(2021年6月30日)は「〖巴塞罗那(Barcelona)〗」と表記しています。漢字とアルファベットが一つの見出しで結びつく、現代の機関自身の使用例です。そのページにある2021年当時の人口説明は採用しません。

日本語用の案では「罗」を「羅」へ替え、「巴塞羅那」とします。巴・塞・那は原文のままです。この字形調整は本誌が行ったものであり、原文引用では「巴塞罗那」を保ちます。今回の調査だけで台湾等における用例や中国語全体での統一標準は主張しません。


二文字・三文字案の比較

巴那

両端だけを残す二字案です。原文の中ほど二字が失われ、元の四字をたどりにくくなります。これは本誌の比較用の省略案です。

巴塞那

羅を落とす三字案です。標準の三字に収まっても、都市名の「ロ」に対応させられる部分を省くことになります。今回確認した一次資料にこの省略形はありません。

巴塞羅那

四字を保って字体だけを調整する案です。本稿では、字数を縮める利点よりも、出典との一字ずつの対応を優先します。ただし、日本語の一般的な読みでは塞を「サイ」などと読み、この並びから「バルセロナ」を自然には再現できません。「ル」も独立した字として示されず、カナの併記が必要です。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

バルセロナ(Barcelona)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

巴塞羅那――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

原資料の「巴塞罗那」に対して罗→羅の字体調整を行うため「改」とします。二・三字を標準とする本誌の例外として四字を保つのは、短縮による欠落を避けるためです。日本語で昔から使われた表記であるという認定は含みません。

INE年次センサスの2025年1月1日値では、人口は1,713,247人。対象はコード08019の municipio 全域で、同名の県、カタルーニャ全域、都市圏人口とは区別します。


採らなかった表記と未解決点

巴那・巴塞那は比較案にとどめ、簡体字を含む原文の「巴塞罗那」は資料の引用に限って残します。Barcino の漢字音写を新しく作り、それを現代都市名として採ることもしません。

歴史的な日本語の当て字、中国語表記の初出と命名者、字体調整後の独立した機関用例は要継続調査です。現代の中国語表記が見つかったことで、古代地名からの連続した漢字表記史が確認できたとは言えません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百四十一号

次号の題材は、人口と都市の同一性の確認を経て案内します。