万国漢字志

都市篇 · スイス

万国漢字志 都市篇 第二百九十一号|バーゼル――条約に残る市名と、巴塞爾の三字――

外務省の条約成立地バーゼルと中国語の巴塞爾・巴塞尔を確認。馬是留などの音案と長音の限界を比較し、日本語への改案を示す。


街の名前と、三字のつながり

バーゼルの名は、都市の案内だけでなく条約の名前にも現れます。外務省の解説は、1989年3月、スイスのバーゼルで有害廃棄物の国境を越える移動などを規制する条約が作成されたと説明しています。

中国語の観光案内では、この街は巴塞爾、または巴塞尔。条約に残る日本語名と、中国語の三字形を出発点に、音から選び直す案も比べます。


歴史表記

バーゼルの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回の現行観光案内や機関の解説から、昔の地理書や地図の漢字用字まで確認したとはしません。中国語の現代用例と、日本語で古くから使われた形とは、別々に確かめる必要があります。


日本語での用例

外務省の「バーゼル条約」解説には、背景の節に「スイスのバーゼル」とあり、条約が作成された場所を指しています。条約名から都市を推測するだけでなく、本文で都市への言及を確認できます。

スイス政府観光局の日本語案内も、見出しをバーゼルとしています。本稿の日本語名と読みは、これらの実使用を根拠とします。外務省の現行解説は1989年の出来事を述べる資料ですが、今回その年の条約原本の紙面を読んだわけではありません。


中国語圏その他の表記との比較

スイス政府観光局の繁体字案内では巴塞爾 Basel、簡体字案内では巴塞尔とBaselの併記を確認できます。

末尾の爾と尔を区別します。繁体字版で巴塞爾を直接確認できても、日本語での漢字名の実用例を確認したことにはなりません。日本語へ取り入れる案としての区分は、本稿では「改」とします。


二文字・三文字案の比較

馬留

馬のバ、留のルから選ぶ二字の本誌創案です。短い字数に収まりますが、都市名のゼを落とし、最初の長音も表しません。この二字を市名に使う既存用例は未確認です。

馬是留

馬のバ、是のゼ、留のルを対応させる三字の本誌創案です。漢字ペディアで各字の読みを確認でき、馬留が欠くゼにも字を置けます。

ただし字音を並べたバゼルには、バーゼルの最初の長音が明示されません。留にはリュウという読みもあり、三字だけでこの街の名に限定することはできません。市名としての組合せの先例も未確認です。

巴塞爾

確認した中国語形を保ち、同じBaselを指す資料との照合をしやすくする三字案です。日本語の各字の読みをつなげても、そのままバーゼルとは読めません。今回は日本語への取り入れを「改」と示し、カタカナの読みを添えて採ります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

バーゼル

所属国

スイス

暫定制定都市名

巴塞爾――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

中国語で確認できた形を、日本語の都市名表記として取り入れる本誌の暫定案です。字形をそのまま保つことと、日本語で既に使われていることは同じではありません。日本語での漢字形の実使用を未確認のため、「既」や「史」とはしません。カタカナの読みを添え、現地語の発音を音声から検証した転写とも区別します。

人口はBFSの公式統計表による2025年12月31日現在180,097人。常住人口(Ständige Wohnbevölkerung)を対象とし、自治体コード**2701(Basel)**の市域全体の値です。州、郡、都市圏や市内の区を別に加えた人口ではありません。自治体範囲の基準日は2025年4月6日、統計表のデータベース表示は2026年6月です。人口の基準日と、区域・資料版の日付を分けて扱います。


採らなかった表記と未解決点

馬留は音の欠落が大きいため採りません。馬是留は日本語の字音から考える案として残しますが、長音と市名としての先例の問題があります。巴塞爾を選ぶのは、中国語資料との照合を優先するためです。

巴塞爾は日本語での歴史的漢字表記、あるいは定着した漢字名と確認できたものではありません。三字の字義から都市の命名由来を作ることも避けます。初出、命名者、日本語の漢字市名としての実使用は引き続き調べます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百九十二号

次はローザンヌ。資料で確かめながら、都市名の漢字表記を考えます。