翌日の踏査へ
前号のノッツェは、JICA調査団の2012年4月7日の踏査日程にありました。その翌日、ソコデからの経路に現れるのが、今回の**バサール(Bassar)**です。トーゴの都市を引き続き調べます。
短い日程表では一つの地点ですが、地名索引では同じBassarという名が集落と行政区に分かれています。漢字の別名を採る前に、どちらの項目を見ているのかを確かめる必要があります。
日本語のバサールを確かめる
JICA『トーゴ共和国 トーゴロジスティクス回廊 開発・整備計画策定調査 詳細計画策定調査報告書』は、2012年4月の報告書です。印刷2頁(PDF12頁)、1-5「日程」の4月8日に、ソコデ、バサール、カブへ進む現地踏査が記されています。抽出テキストと原頁画像の両方で、このカタカナを確認しました。
日本語名を補う資料として、コトバンク掲載の『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』にも、バサールとBassarを対応させ、トーゴの町を説明する項目があります。同じページの別の事典からの言及には、インドのBasarh村も出てきます。同じカタカナが並んでも、今回の町とは別です。
JICAの日程は当時の調査記録として読み、現在の交通状況の根拠にはしません。事典の古い推計人口も、今回の都市人口には採りません。
バサールを漢字で記した日本語の歴史資料や地図、日本語における巴薩・巴萨の使用または提案例は、現時点では原典未確認です。日本語のカタカナ用例と漢字用例を分け、歴史的漢字表記は継続調査とします。
集落の別名にある「巴萨」
GeoNamesのトーゴに限定したBassar検索結果には、集落のBassar、識別番号2367568と、第二級行政区域のBassar、識別番号2367567が別々に載っています。今回の漢字形は、集落項目の別名欄にある巴萨です。Basar、Bassari、Paasɛɛなどと同じ欄に掲載されています。
ここで確認できたのは、地名データベースがこの集落の別名として巴萨を登録しているという事実です。検索結果は別名ごとの登録元、登録日、選字者を示していません。中国語圏の公的標準形や、台湾で定められた表記とは認定しません。別名欄のローマ字形から、現地名の語源や漢字の選定過程を復元することもしません。
本誌の暫定案は、掲載形の「萨」を日本語で用いる字体の「薩」へ直した巴薩とします。GeoNamesの今回の集落欄に巴薩がそのまま載っていた、という意味ではありません。日本語の都市索引へ取り込むために、本誌が字体を選び直す段階を含みます。
二字と三字を比べる
巴薩
確認できた二字形の構成を保つ案です。都市篇の二文字・三文字という標準に収まり、音を補う一字を新たに足さずに採れます。読みは現代日本語名のバサールとします。「巴」「薩」の字義を町の歴史や性格へ結びつける根拠は、今回の資料にはありません。
巴萨
GeoNamesで実際に確認した掲載形です。資料中の表記として残し、日本語の暫定制定名とは区別します。字体の違いを理由に別都市とは扱いません。
三字への拡張
今回の集落欄には、採用の根拠にできる三字の漢字形は確認できませんでした。カタカナの長音や末尾に合わせて、裏づけのない一字を足す案は作りません。
既刊第六十七号のグラン・バッサムには巴薩姆を採っていますが、あちらはコートジボワールのGrand-Bassamです。BassarとBassamの綴りや漢字の冒頭が似ていても、同じ地名ではありません。巴薩を巴薩姆の省略形とはしません。
都市の人口を県へ広げない
GeoNamesの集落2367568の掲載HTMLは、北緯9.25025度、東経0.78213度を示します。行政区域2367567には別の座標があり、本稿では集落の位置を採ります。外務省のトーゴ基礎データが示す国の首都はロメであり、バサールは国の首都として扱いません。
人口はINSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)のBassar行を用います。2022年の都市別居住人口で、男性1万6,636人、女性1万6,520人、合計3万3,156人です。男女の合計も一致します。
原頁画像でBassar行と表題を確認し、続く印刷34頁(PDF52頁)で、表末尾の出典がINSEED、第5回人口・住宅国勢調査(RGPH 5)、人口の空間分布、2022年であることも照合しました。
この数字は、表題どおり都市の人口として採ります。同名の県や自治体全域の人口には読み替えません。都市の集計境界と行政境界の詳しい対応は未確認です。また、GeoNamesの集落欄には別の人口値が載りますが、その表示から基準年や集計範囲を確定できないため、今回の人口の根拠には用いません。
町の名を確かめる資料と、町に住む人を数えた資料は、それぞれ別の役割を持っています。同じ綴りを見つけるだけでなく、項目の種類と表の見出しまで読むことで、一つの都市の記録になります。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
バサール
所属国
トーゴ
暫定制定都市名
巴薩――創
制定状態
暫定制定・漢字別名の登録元と日本語用例は継続調査
編纂綱領の「既」は、日本語で使用または提案された例を確認できる表記です。今回は日本語の漢字用例を確認していません。集落に登録された巴萨を参考に、本誌が日本語の都市索引へ巴薩を新たに選定するため、区分は「創」とします。漢字形そのものを無から作ったという意味ではありません。
採らなかった表記と未解決点
根拠のない三字への拡張と一字略称は採りません。日本語の歴史的漢字表記、巴薩・巴萨の日本語使用・提案例、GeoNamesの漢字別名の登録元・初出・選字者、中国語圏の公的な都市直接用例は継続調査です。
都市名の語源、命名者、創設年も、今回の確認資料だけでは確定しません。同名の県、住民の民族名、現地語の名称の関係を、漢字の字義や別名の一覧だけから説明することは避けます。都市人口の集計境界も、今後確認する事項として残します。
参考資料
- JICA『トーゴ共和国 トーゴロジスティクス回廊 開発・整備計画策定調査 詳細計画策定調査報告書』、2012年4月。印刷2頁(PDF12頁)、4月8日の踏査日程のバサールをテキスト・原頁画像で照合
- コトバンク掲載『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』「バサール」。本文がトーゴの町Bassarを指すことを確認。同ページのBasarh村への言及と区別
- GeoNames、トーゴのBassar検索結果。集落2367568の巴萨と座標を掲載HTMLで確認。第二級行政区域2367567と区別。漢字別名の登録元・登録日は未確認
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』、表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)。Bassarの2022年都市別人口、表題、続頁の出典をテキスト・原頁画像で照合
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」、一般事情・首都ロメ
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第九十四号
次回の都市は調整中です。未収録の都市について、日本語名と漢字形の根拠を確かめてから選びます。
