万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第九十三号|バサール――同じ名の町と県を分ける

トーゴのバサール。JICAの踏査日程とINSEEDの2022年都市人口表を照合し、GeoNamesの集落別名「巴萨」を日本語の字体へ直した「巴薩」を暫定案とする。同名の県とは分けて扱う。

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翌日の踏査へ

前号のノッツェは、JICA調査団の2012年4月7日の踏査日程にありました。その翌日、ソコデからの経路に現れるのが、今回の**バサール(Bassar)**です。トーゴの都市を引き続き調べます。

短い日程表では一つの地点ですが、地名索引では同じBassarという名が集落と行政区に分かれています。漢字の別名を採る前に、どちらの項目を見ているのかを確かめる必要があります。


日本語のバサールを確かめる

JICA『トーゴ共和国 トーゴロジスティクス回廊 開発・整備計画策定調査 詳細計画策定調査報告書』は、2012年4月の報告書です。印刷2頁(PDF12頁)、1-5「日程」の4月8日に、ソコデ、バサール、カブへ進む現地踏査が記されています。抽出テキストと原頁画像の両方で、このカタカナを確認しました。

日本語名を補う資料として、コトバンク掲載の『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』にも、バサールとBassarを対応させ、トーゴの町を説明する項目があります。同じページの別の事典からの言及には、インドのBasarh村も出てきます。同じカタカナが並んでも、今回の町とは別です。

JICAの日程は当時の調査記録として読み、現在の交通状況の根拠にはしません。事典の古い推計人口も、今回の都市人口には採りません。

バサールを漢字で記した日本語の歴史資料や地図、日本語における巴薩・巴萨の使用または提案例は、現時点では原典未確認です。日本語のカタカナ用例と漢字用例を分け、歴史的漢字表記は継続調査とします。


集落の別名にある「巴萨」

GeoNamesのトーゴに限定したBassar検索結果には、集落のBassar、識別番号2367568と、第二級行政区域のBassar、識別番号2367567が別々に載っています。今回の漢字形は、集落項目の別名欄にある巴萨です。Basar、Bassari、Paasɛɛなどと同じ欄に掲載されています。

ここで確認できたのは、地名データベースがこの集落の別名として巴萨を登録しているという事実です。検索結果は別名ごとの登録元、登録日、選字者を示していません。中国語圏の公的標準形や、台湾で定められた表記とは認定しません。別名欄のローマ字形から、現地名の語源や漢字の選定過程を復元することもしません。

本誌の暫定案は、掲載形の「萨」を日本語で用いる字体の「薩」へ直した巴薩とします。GeoNamesの今回の集落欄に巴薩がそのまま載っていた、という意味ではありません。日本語の都市索引へ取り込むために、本誌が字体を選び直す段階を含みます。


二字と三字を比べる

巴薩

確認できた二字形の構成を保つ案です。都市篇の二文字・三文字という標準に収まり、音を補う一字を新たに足さずに採れます。読みは現代日本語名のバサールとします。「巴」「薩」の字義を町の歴史や性格へ結びつける根拠は、今回の資料にはありません。

巴萨

GeoNamesで実際に確認した掲載形です。資料中の表記として残し、日本語の暫定制定名とは区別します。字体の違いを理由に別都市とは扱いません。

三字への拡張

今回の集落欄には、採用の根拠にできる三字の漢字形は確認できませんでした。カタカナの長音や末尾に合わせて、裏づけのない一字を足す案は作りません。

既刊第六十七号のグラン・バッサムには巴薩姆を採っていますが、あちらはコートジボワールのGrand-Bassamです。BassarとBassamの綴りや漢字の冒頭が似ていても、同じ地名ではありません。巴薩を巴薩姆の省略形とはしません。


都市の人口を県へ広げない

GeoNamesの集落2367568の掲載HTMLは、北緯9.25025度、東経0.78213度を示します。行政区域2367567には別の座標があり、本稿では集落の位置を採ります。外務省のトーゴ基礎データが示す国の首都はロメであり、バサールは国の首都として扱いません。

人口はINSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)のBassar行を用います。2022年の都市別居住人口で、男性1万6,636人、女性1万6,520人、合計3万3,156人です。男女の合計も一致します。

原頁画像でBassar行と表題を確認し、続く印刷34頁(PDF52頁)で、表末尾の出典がINSEED、第5回人口・住宅国勢調査(RGPH 5)、人口の空間分布、2022年であることも照合しました。

この数字は、表題どおり都市の人口として採ります。同名の県や自治体全域の人口には読み替えません。都市の集計境界と行政境界の詳しい対応は未確認です。また、GeoNamesの集落欄には別の人口値が載りますが、その表示から基準年や集計範囲を確定できないため、今回の人口の根拠には用いません。

町の名を確かめる資料と、町に住む人を数えた資料は、それぞれ別の役割を持っています。同じ綴りを見つけるだけでなく、項目の種類と表の見出しまで読むことで、一つの都市の記録になります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

バサール

所属国

トーゴ

暫定制定都市名

巴薩――創

制定状態

暫定制定・漢字別名の登録元と日本語用例は継続調査

編纂綱領の「既」は、日本語で使用または提案された例を確認できる表記です。今回は日本語の漢字用例を確認していません。集落に登録された巴萨を参考に、本誌が日本語の都市索引へ巴薩を新たに選定するため、区分は「創」とします。漢字形そのものを無から作ったという意味ではありません。


採らなかった表記と未解決点

根拠のない三字への拡張と一字略称は採りません。日本語の歴史的漢字表記、巴薩・巴萨の日本語使用・提案例、GeoNamesの漢字別名の登録元・初出・選字者、中国語圏の公的な都市直接用例は継続調査です。

都市名の語源、命名者、創設年も、今回の確認資料だけでは確定しません。同名の県、住民の民族名、現地語の名称の関係を、漢字の字義や別名の一覧だけから説明することは避けます。都市人口の集計境界も、今後確認する事項として残します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第九十四号

次回の都市は調整中です。未収録の都市について、日本語名と漢字形の根拠を確かめてから選びます。