万国漢字志

都市篇 · フランス

万国漢字志 都市篇 第百九十五号|ブザンソン――美術館の名から、町の三字へ――

図録の書誌にあるブザンソンと総領事館の活動報告にある贝桑松を照合。字形を調整した貝桑松を暫定案とする。

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美術館の名から、町の三字へ

一冊の展覧会図録から、外国の町の名を覚えることがあります。1997年刊の『ブザンソン美術館展』も、その入口の一つです。国立国会図書館の書誌には、題名とともに「ブザンソン ビジュツカン テン」という読みが記録されています。

一方、中国の在ストラスブール総領事館が伝える同地の美術館の催しには、贝桑松という三字が現れます。カタカナではブザンソン、漢字では贝桑松。その二つをたどりながら、本誌で使う字形を考えます。


歴史表記

ブザンソンの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 古い地理書や紀行の該当頁で、漢字・読み・対象都市を確かめられたわけではありません。初出や選字者も要継続調査です。

1997年の図録の題名はカタカナです。また、今回読んだのは図書館の書誌であり、図録本文そのものではありません。書誌に記録された題名を確認できたことから、本文中に漢字の別名があるとも、ないとも断定できません。

後に挙げる贝桑松は、2020年の中国語の活動報告にある表記です。その使用例を、日本語の古い漢字表記の証拠に置き換えることはしません。


日本語での用例

国立国会図書館サーチの『ブザンソン美術館展』の書誌によれば、図録は北海道立帯広美術館ほかの編集、北海道新聞社の出版で、刊行年は1997年です。会期・会場の注記には、同年2月22日から3月30日までの北海道立帯広美術館などが記録されています。

国立情報学研究所のCiNiiの書誌は、日本語の題名にフランス語の並列題名を添えています。その末尾にあるのがBesançon。カタカナ名と原綴りの対応を、同じ図録を記録した書誌で確かめられます。

本稿の現代日本語都市名は、このブザンソンとします。美術館名に含まれる都市名の用例であって、日本語表記の最初の使用を特定したという意味ではありません。


中国語圏その他の表記との比較

中国の在ストラスブール総領事館は、2020年1月28日付の春節行事の報告で、贝桑松美术博物馆という名称を使っています。催しが行われたのは同月25日と記されています。

注目したいのは、美術館名だけで終わらないことです。同じ記事の都市間交流に触れる段落には贝桑松市も現れます。三字が施設名の一部分としてだけでなく、町の名としても使われていると分かります。

原資料は「贝」で、本誌が提案する「貝」ではありません。贝を貝へ替えるのは本誌の字形調整です。三字全体の順序や、後の桑・松は保ちます。

これによって中国語の発音を日本語の音読みへ移したことにはなりません。「貝桑松」は本稿ではブザンソンを指す都市名として読みます。台湾などでの独立した用例や地域差については、今回の確認範囲を超えています。


二文字・三文字案の比較

貝松

最初と最後を残す、本誌の二字の短縮案です。短く収まる一方で、中の桑が失われます。確認した中国語の用例に、この二字だけの形はありません。省いてよいとする根拠も、今回の資料からは得られませんでした。

武山松

日本語名の「ブ」「ザン」「ソン」を手がかりに組み直す、本誌の三字の創案です。読みの手がかりは作れますが、それぞれを日本語の通常の音だけで過不足なく表せるわけではありません。実際に使われている三字とのつながりも薄くなります。

貝桑松

原資料の贝桑松から、最初の一字だけを貝へ替える三字案です。標準字数に収まり、原資料へ戻るときも変更箇所が分かります。今回はこの形を採ります。

桑や松という木の字が並ぶのは印象的ですが、そこから町名の語源や土地の植生を説明することはできません。ここでは、確認した地名表記の構成字として扱います。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ブザンソン

所属国

フランス

原資料で確認した現代中国語表記

贝桑松

暫定制定都市名

貝桑松――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

既存の贝桑松を基に、贝を貝へ調整するため「改」とします。貝桑松という形の日本語の歴史用例を確認できた、という制定ではありません。

人口はINSEEの2023年基準で118,489人。2025年1月1日の境界によるブザンソン自治体全体の人口で、2026年1月1日に発効した版です。周辺自治体を含む都市圏人口ではありません。


採らなかった表記と未解決点

貝松は短縮、武山松は日本語名からの創案として比較しました。いずれも、本稿で確認した既存の別名としては扱いません。

日本語の歴史的漢字表記とその読み、初出、選字者は引き続き調査します。図録本文の確認も残ります。書誌を見たことと本文を読んだことを区別したまま、調査を進めたいと思います。

今回の根拠は、図録の題名を記録する書誌と、現地の行事を伝える中国語の活動報告です。美術館を介して現れた町の名を、その資料で確認できた範囲から三字へ整えました。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第百九十六号

次回はルーアン。日本の美術館の作品名と、中国語の都市交流の記事に現れる名を読み比べます。