万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第百四号|ブリッタ――計画図の町と、人口表の町

トーゴのBlittaを、JICAの物流回廊計画とINSEEDの2022年都市人口表から読む。都市人口は10,915人。日本語の漢字先行用例は原典未確認で、布利多を本誌の創案として暫定選定する。

以前のnote記事を読む

港から離れた町に、港を考える

前号に続き、トーゴの都市人口表に載る未収録都市を調べます。今回はBlitta。日本語の見出しではブリッタと仮置きします。公的な日本語統一形を確認した、という意味ではありません。

日本語の調査報告書を開くと、この地名の横に「ドライポート建設」とあります。海の港ではなく、内陸の物流拠点を考える計画の中の町です。完成した施設を紹介する記事と、建設を提案する文書とでは、読めることが違います。

町を知る入口は計画図でした。ただし、漢字を選ぶ根拠と、計画を語る根拠も分けておきます。


日本語報告書に現れるBlitta

JICA『トーゴロジスティクス回廊開発・整備計画策定調査 ファイナル・レポート 要約』、2013年10月、印刷9頁(PDF14頁)、表4を確認しました。表題は「提案したコンセプトの概要」です。

四つの輸送網の考え方が並び、コンセプト3と4にBlittaにドライポート建設という項目があります。両案はロメとBlittaの間の鉄道改善も掲げています。原頁画像で表題、地名、建設項目を確認しました。

ここから確かめられるのは、調査団が2013年の報告書でBlittaを物流拠点の候補として扱ったことです。この頁を、ドライポート完成の証拠や、現在の鉄道運行の証拠には使いません。図の丸や線も都市の行政境界を表したものではありません。

日本語で書かれた公的報告書の用例ですが、地名そのものはローマ字です。「ブリッタ」というカタカナや漢字表記を、この頁で確認したとは書けません。現地発音と日本語の定着形は継続調査とし、都市の同定にはBlittaを併記します。


人口表では、都市と県を分ける

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)は、トーゴの都市別居住人口を男女別に並べた表です。Blitta行は男性5,404人、女性5,511人、合計10,915人。和も一致します。

続頁の印刷34頁(PDF52頁)で、表末尾の出典がINSEEDのRGPH 5、2022年人口空間分布資料であることを確認しました。表題、対象行、続頁の出典を原頁画像で読みました。

採用するのは、この表が都市Blittaとして集計した人口です。県全域やコミューン全域の人口ではなく、2026年現在の推計でもありません。統計上の都市範囲と行政境界がどこまで一致するかは未確定です。

同じ地名が別の集計単位にも使われる場合、数字だけを拾うと町が急に大きく見えてしまいます。今回の10,915人には「2022年」「都市別居住人口」という条件を付けて残します。

GeoNames公式RDF、識別番号2367423では、名称Blitta、国コードTG、居住地分類P.PPL、北緯8.32335度・東経0.98595度を確認しました。これは代表点であり、町域でも計画上のドライポート用地でもありません。付属人口9,735人は年次がこのRDFから分からないため、今回の人口には採りません。

同RDFにはBlita、Blita-gareなどの別名もありますが、用例の年代や初出は示されていません。歴史表記の証明には使いません。外務省のトーゴ基礎データが示す国の首都はロメで、ブリッタは国の首都ではありません。


歴史表記と中国語形の確認状況

今回読めたJICA報告書とINSEED原表にある形はBlittaです。日本語の歴史的漢字表記、漢字による先行使用・提案は、現時点では原典未確認です。見つけられなかったことを、過去に存在しなかったことの証明にはしません。

中国語では検索結果に**布利塔(Blitta)**が現れ、中国商務部のトーゴ投資ガイドの鉄道説明が候補になります。ただし商務部の配布先を開くと2025年版であり、検索結果が示す2024年版と同一ではありませんでした。2024年版の別の掲載先も取得できず、該当版の原頁を確認できていません。

したがって布利塔を、今回確認済みの中国語公的用例や日本語の既存表記としては扱いません。版、頁、都市への対応を原本で確認することが次の課題です。台湾の公的掲載形も未確定です。


二文字・三文字案の比較

以下は本誌が今回比較のために作る案です。都市名の史料掲載形ではありません。

布多

二字で最初と最後の音に文字を割り当てる試案です。漢字ペディアの布には音フ、多にはタがあります。布を濁音に対応させる扱いも本誌の約束で、辞書がこの都市の読みを定めているわけではありません。

短くなりますが、リに対応する字がありません。今回の仮置き名ブリッタとの対応を見せるには、二字では省略が大きいと判断します。

布利多

三字案は布利多です。漢字ペディアの利の音リを中央に置きます。通常の字音を並べるとフ・リ・タであり、ブリッタとは一致しません。布をブへ対応させ、促音を独立した字にしない部分は、三字全体に読みを添える本誌の約束です。

三つの音の位置にそれぞれ文字を置けることを評価し、この案を暫定選定します。現地発音を忠実に写したとも、各字にブリッタという通常の読みがあるとも主張しません。布の字義から織物の町だと説明したり、利や多から交易の繁栄を導いたりもしません。

検索に現れた布利塔に似ていますが、確認済みの日本語用例の修正として採った案ではありません。最後に多を置いた三字は今回の新たな選定であり、制定区分は創とします。中国語候補の原本確認と、この日本語の提案は別の作業です。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名(本誌の仮置き)

ブリッタ

原綴り・所属国

Blitta/トーゴ

暫定制定都市名


布利多

読み

ブリッタ(三字全体に対応させる本誌の当て字)

制定区分

布利多――創

制定状態

暫定制定・原典継続調査

編纂綱領第三条・第五条・第九条に従い、日本語の先行用例、中国語の候補、今回の創案を区別します。適切な先行用例が確認できれば、表記と区分を見直します。一字略称は制定しません。


採らなかった表記と未解決点

布多は中央の音を省くため採りません。布利塔は原頁未確認の検索上の候補として残し、歴史表記には加えません。

日本語の定着したカタカナ形、歴史的漢字表記、漢字先行使用、中国語圏の原本用例、地名の語源と命名者、現地発音、都市統計の境界は継続調査です。物流計画の実施状況も今回の確認範囲外です。

計画図に町が載ったこと、人口表に町が載ったこと、漢字都市名が使われたこと。その三つにはそれぞれ別の証拠が必要です。今回は最初の二つを原頁で確かめ、三つ目を本誌の提案として置きます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百五号

次回もトーゴの都市人口表の未収録都市を候補とし、原本で地名と集計範囲を確認してから選びます。