万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百十九号|ボーフム――二字の波鸿と、つくばの連携記録――

つくば市の日本語用例と中国大使館の波鸿市を比較。字体を調整した波鴻を暫定案とし、読みと歴史漢字の未確認点を示す。


つくばの記録にあるボーフム

つくば市長の2019年11月の記録には、科学技術分野の連携合意書を結んだ相手としてボーフム市が登場します。大学どうしの交流が都市間の連携へつながった、という当事者の報告です。

同じ町は、中国大使館の行事報告では波鸿市と書かれています。こちらは中学生の中国語競技会の話。二つの記録を並べると、日本語のボーフムと漢字二字との距離が見えてきます。本誌では鸿を鴻に改めた波鴻を暫定案にします。


歴史表記

ボーフムの日本語の歴史的な漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回確認できたのは、日本の自治体が使うカタカナと、中国大使館が使う現代中国語の漢字です。

中国語の波鸿が確認できたことを、日本語の古い地理書に波鴻が載っていた証拠にはしません。初出の刊本、漢字を選んだ人物、日本語での漢字表記の普及範囲も未確認です。

また、つくば市の報告に登場する大学間交流の開始年を、都市の漢字表記が成立した年へ読み替えることもできません。交流の歴史と、文字の使用を確かめられる資料の日付は分けます。


日本語での用例

つくば市の「つくば市長公式ブログ2019年11月」には、11月25日の項目として、ドイツのボーフム市と科学技術分野の連携合意書を締結した報告があります。本文でも、つくば市とボーフム市を都市間の連携の当事者として記しています。

確認した日本語の都市名はボーフムです。ここでは大学名だけから都市名を推定する必要がありません。市の名として使われています。

ページ上部の更新日は2023年3月1日ですが、対象は2019年11月の記録です。更新日と11月25日の出来事を混同せず、このページを2019年当時の紙面そのものと認定することもしません。確認したのは現在提供されている公式の電子本文です。


中国語圏その他の表記との比較

中国駐ドイツ大使館の「北威州举办第三届中学生汉语竞赛」では、開催地の大学を波鸿大学と記すだけでなく、地元の小学生について述べる箇所に波鸿市とあります。都市を指す用例として確認できます。

掲載表示は2010年3月16日、本文の競技会開催日は3月6日です。十日の隔たりを残して読みます。これは中国大使館が掲載した現代中国語の用例で、日本語の歴史表記ではありません。

本誌案の波鴻は、この二字の順序を保ち、鸿を日本語で用いる字体の鴻へ調整した形です。原文をそのまま写したわけではないため、原文の波鸿と本誌案を分けます。台湾など別地域での使用や、漢字二字の初出までは、この一資料から確定しません。


二文字・三文字案の比較

波鴻

確認した波鸿から字体を調整する二字案です。出典との対応を一字ずつ示せること、標準とする二字・三字に収まることを採用理由にします。

ただし、波を「ハ」、鴻を「コウ」と読んでも、ボーフムにはなりません。中国語で使われる字を日本語の字体にすることと、日本語で発音を復元できることは別です。ボーフムの読みを添えて用います。

波夫

ボーフムの前半を意識して本誌が比較用に組んだ二字案です。確認済みの中国語表記から鴻を夫へ置き換えることになり、末尾のムも表しきれません。

今回の調査でこの形の既存用例を確認したわけではありません。波鴻より読みやすいと断定する根拠もなく、置換の積極的な理由が弱い案です。

波夫牟

夫・牟にフ・ムの読みを期待する、本誌独自の三字比較案です。日本語の音を手掛かりに字を組む方向は見えますが、波の通常の読みだけで冒頭のボーを示せるわけではありません。

三字を並べても自動的にボーフムと読める形にはならず、既存用例も未確認です。出典のある二字を離れて新たな三字を作ることは、今回は見送ります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ボーフム

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

波鸿

暫定制定都市名

波鴻――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

鸿を鴻へ調整した本誌の案なので「改」とします。日本語に伝わった歴史的表記として「伝」「史」を与える判断ではありません。

人口はDestatisの自治体一覧年次版による2025年12月31日現在358,880人です。人口と自治体境界の基準日はともに同日、使用した版は2026年8月版。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計で、対象はBochum, Stadtの自治体全体です。ルール地方全域や周辺都市を足した都市圏の人口ではありません。


採らなかった表記と未解決点

波夫と波夫牟は本誌の比較案で、確認した歴史表記や既存の略称ではありません。波鴻を採るのも音の再現が完全だからではなく、現代の使用例と字体調整の範囲を説明できるためです。

日本語の古い漢字用例、波鸿の初出、選字者は継続調査とします。資料に現れた市長や競技会の主催者を、漢字の命名者と認定する根拠はありません。

原文の鸿を残す方が現代中国語の資料を検索しやすい場合もあります。本誌の字体調整を、出典側の綴りを訂正する行為とはしません。資料紹介では波鸿、本誌の暫定案では波鴻と書き分けます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百二十号

次回はヴッパータールを予定しています。日本語の用例と、現代中国語に見える複数の漢字表記を比べます。