万国漢字志

都市篇 · フランス

万国漢字志 都市篇 第百九十四号|ブーローニュ・ビヤンクール――区切りの両側を六字で残す――

国土交通省の日本語名と観光局中国語冊子の布洛涅-比扬古を照合。扬を揚へ替えた六字を、両部分を保つ字数例外として改の暫定案とする。

以前のnote記事を読む

区切りの両側を残す

ブーローニュ・ビヤンクール。カタカナで書くと、途中の点が一息つく場所になります。国土交通省の都市政策の報告にも、パリ近郊の視察先として、この市名が出てきます。

同市の観光局が公開する中国語の建築散策冊子では、布洛涅-比扬古。こちらも名前の途中で区切られています。今回は前半だけを抜き出さず、両方の部分をどう残すかを考えます。


歴史表記

ブーローニュ・ビヤンクールの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 古い地理書や工業の紹介書などにある漢字と読み、表記の初出や選字者は、要継続調査です。

参考にする観光冊子は、1930年代の建築をめぐる案内です。冊子が扱う建物の年代を、その冊子にある中国語名の成立年代として扱うことはできません。古い建築を現代の中国語で紹介する資料として読みます。


日本語での用例

国土交通省は2019年12月6日、「日仏で都市政策に関し協議~第6回 都市政策に関する日仏交流会議を開催~」を発表しています。本文はパリ近郊のブーローニュ・ビヤンクール市での事業地区の視察を紹介し、写真の説明にも同じ名を使っています。

本稿の現代日本語都市名には、ここにあるブーローニュ・ビヤンクールを採ります。二つの部分をつなぐ中点も、この資料に合わせます。都市の種別を示す市は、名前そのものとは分けます。

報告に並ぶ視察先は、それぞれ別の自治体や事業地区です。パリ近郊という位置の説明を、パリ市の人口へ含める理由にはしません。本稿の対象も、ブーローニュ・ビヤンクールという一自治体です。


中国語圏その他の表記との比較

ブーローニュ・ビヤンクール観光局が公開する「30年代 建筑探索 路线」中国語版には、布洛涅-比扬古とBoulogne-Billancourtが併記されています。巻末には同じ中国語名を含む観光局名と所在地も載っています。

冊子の表紙は建築散策の案内を示し、冒頭では両大戦間の建築を紹介しています。これは観光局が自ら公開する案内なので、町のラテン文字名と中国語名を対応させて確かめられます。ただし、刊行年月が書かれた箇所は今回確認できていません。

原資料の漢字六字のうち、扬は本誌で揚へ替えます。また、原資料のハイフンは制定する漢字名では省き、布洛涅比揚古と続けます。二つの部分に含まれる漢字自体は削りません。この続けた六字の形を、原資料にそのまま印刷されている形とは区別します。

布洛涅と比扬古がそれぞれ名前の前半・後半に対応することは、この併記から読めます。一方で、各字の意味から都市名の語源を説明したり、日本語の一音ずつに対応させたりすることはしません。


二文字・三文字案の比較

布古

全体の最初と最後を採る、本誌の二字の短縮案です。とても短くなりますが、原資料の六字の大部分が落ちます。この二字だけで当該都市を指す用例は、今回確認していません。

布比古

前半から布、後半から比と古を残す、本誌の三字の案です。両方の部分を残そうとはしていますが、どの字を省くかは本誌の新たな判断になります。この形を支える既存用例も確認できていません。

布洛涅

原資料の前半三字をそのまま抜き出す案です。三字には収まるものの、後半のビヤンクールに対応する部分がすべて消えます。今回の冊子は両方を備えた都市名を示しており、前半だけを同じ自治体の正式な略称だとは確かめられません。

布洛涅比揚古

原資料の両方の部分を残し、字形と区切りを調整する六字の案です。標準の二字・三字は超えますが、どの字がどこから来たのかを示せます。今回は、短縮のために一方を消すより、この六字を例外として残します。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ブーローニュ・ビヤンクール

所属国

フランス

原資料で確認した現代中国語表記

布洛涅-比扬古

暫定制定都市名

布洛涅比揚古――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

扬を揚へ替え、ハイフンを省いた形は本誌の調整なので、区分は「改」です。元の六字をそのまま使った「既」とはしません。字数の例外を認める理由は、原資料で対応する二つの部分を保ち、根拠のない短縮を避けることです。

人口はINSEEの2023年基準で119,019人。2025年1月1日の境界によるブーローニュ・ビヤンクール自治体全体の人口で、2026年1月1日に発効した版です。パリ市や広域の人口は加えていません。


採らなかった表記と未解決点

布古と布比古は本誌の短縮案、布洛涅は原資料の一部だけを抜き出す案として比較しました。いずれも、今回の資料が当該自治体の独立した略称として示す形ではありません。

二字・三字に収める原則は、長い地名を比べ直すきっかけになります。ただし、字数を満たすために確認できた名前の半分を落とすなら、その省略にも根拠が要ります。今回は六字を残し、資料と本誌の変更点を追える形を選びました。

日本語歴史原典の漢字と読み、漢字名の初出と選字者、台湾などの地域差、現地音声の精密な確認は継続調査です。観光冊子の刊行年月も未確認のまま残し、建築の年代から補いません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第百九十五号

次回取り上げる都市は、改めてお知らせします。