学校と屋根付き施設に置かれた二つの投票所
1963年4月30日付トーゴ共和国官報の印刷267頁を開くと、左上にBOULOHOUという名前が二度並びます。一方の設置場所は学校、もう一方は屋根付き施設を指すHangarです。投票所の名と、その投票所が受け持つ地域が別々の欄になっています。
今回の対象は、モ県のBoulohou。日本語索引名を暫定的にブロフ、漢字案を武路布とします。地名の欧文用例は確認できますが、このカタカナと漢字は日本語の先行用例を採録したものではありません。
前号サイブデから引き継いだ候補はBoulohouとGbalédjéでした。後者は観光省の2021年記事で滝の整備調査に現れます。今回は、既刊ジャルクパンガと同じ自治体の資料を回収でき、1963年の投票所から近年の登録拠点まで用途の違う記録を照合できるBoulohouを選びました。人口の順位や表の掲載順を理由にした選定ではありません。
歴史表記|欧文の地名を採録する
官報の投票所番号15/54には学校、16/55にはHangarが指定されています。施設の具体的な用途や構造は、この表では分かりません。前者の管轄欄にはBoulohouのほかFolo、Souroukou、Tassiなどが並び、後者にもBoulohouが含まれています。
同じ地名が二行あることから、同名の町が二つあるとは読めません。表が区別しているのは投票所とその管轄です。また、1963年の学校を、現在の学校と建物まで同一と認定することもできません。
これは欧文の歴史的用例です。日本語の歴史的漢字表記を確認したわけではないため、漢字案の区分を「史」にはしません。地名の初出年、集落の創建年、命名者は、いずれも今回の資料では確定できませんでした。
小郡と集落は同じ名前でも別の範囲
2018年1月8日付官報の印刷8頁、2017年12月20日付政令第2017-141/PR号は、Mô 1の管轄にDjarkpanga、Boulohou、Kagningbaraの三小郡を挙げ、中心地をDjarkpangaとしています。Boulohouは自治体全体の名称でも、その中心地でもありません。
ANIDの中央州登録拠点一覧では、小郡欄と集落欄の両方にBOULOHOUが入り、施設欄にEPP BOULOHOUがあります。同じ小郡のAGBAMA-SOMOU、SOUROUKOU、TASSIは別の集落欄です。この一覧により、行政区域名に加えて集落名としても使われることを確認できます。
1963年官報にもSouroukouやTassiが現れます。綴りと周辺の名前がつながることは同一地域を照合する手掛かりですが、当時の投票区と現在の小郡の境界が一致する証明にはなりません。都市篇で扱いますが、独立した市の資格を認定するものでもありません。
市場表だけが「Boulouhou」と書く
INSEED『中央州統計年鑑2022–2023』の印刷49頁、表1-52は、Boulouhouの市場を火曜日と記しています。前号予告ではBoulohouとして紹介しましたが、原表には中間にuのある綴りが載っています。
同じ年鑑の行政・人口表はBoulohouです。道路台帳の印刷281頁、表3-48には、Boulohouからgbangadèを経てDjarkpangaへ至る農村道路があり、別の路線にはBoulouhouという形もあります。本稿では同じモ県内の資料のつながりから市場名を対応候補として扱いますが、綴りの差が誤植なのか別の転写なのかを断定しません。市場の正確な地点もこの表だけでは決まりません。
前号のSaiboudèは月曜日、Tindjassiは火曜日、Djarkpangaは水曜日でした。曜日が違う市場もあれば、同じ火曜日の市場もあります。表から商人の巡回順まで推定することはできず、2026年現在の開催状況も現地確認していません。
日本語・中国語形と転写の限界
今回確認した政府資料はBoulohouまたは大文字のBOULOHOUを使います。この集落へ直接対応する公的な日本語カタカナ形、日本語歴史漢字形、中国語圏の公的漢字形は、今回の探索では確認できませんでした。先行用例が存在しないという結論にはしません。
本誌のブロフは、Bou・lo・houをブ・ロ・フという目印に近似させた索引用の転写です。特に末尾houをフとするのは本誌の暫定判断です。フランス語風にhを読まずにウへ寄せる案や、ホウと写す案を、現地音を聞かずに排除することはできません。
地名全体の現地音源は未取得・未聴取です。hに相当する子音の有無、母音の質と長短、音節の区切り、強勢や声調は未確認です。ouという綴りを見ただけで長母音を認定せず、今回の索引名には長音符を置きません。ブロウ、ブロホウなどの別転写は継続調査として残し、音源が得られた際には漢字案も一緒に見直します。
二字・三字の候補
武布
二字にまとめる案です。しかしブとフだけでは、中間loに対応させたロを落としてしまいます。二字に収めるためにこの目印を省く案は採りません。
武呂布
三つの目印を残せます。呂にはロの字音があり、音の面では比較に残る案です。呂が路より現地音に近いという判断は、今回の資料からはできません。
武路布
武のブ、路のロ、布のフを目印にする三字案です。指定読みをブロフとして暫定採用します。
路を使うからといって、町の語源が道路だという意味にはしません。武の軍事、布の織物についても、地名の由来や特産品を表す根拠はありません。武呂布との選択は本誌の編集判断であり、現地音で優劣を確認した結果ではありません。字音辞典が裏付けるのは各字の読みであって、地名全体の先例ではないため、区分は創です。
人口は小郡、座標は集落の索引点
年鑑の印刷53頁、表2-5は、2022年国勢調査によるBoulohou小郡の人口を、男性2,932人、女性2,899人、計5,831人としています。Djarkpanga小郡の19,374人、Kagnigbara小郡の5,317人と合わせると、Mô 1自治体の30,522人です。
本稿の5,831人は同名小郡全域の数字です。集落単独の人口や連続した市街地の人口へ読み替えません。
位置にはGeoNamesのBoulohou、ID 2367303を使います。保存済みのトーゴ地名データでは、綴りがBoulohou、種別が居住地の点で、北緯8.76648度・東経0.67232度です。別名欄にはBoulo、Gbolohoもありますが、これを日本語漢字形や公式改称の証拠にはしません。
この座標は集落を探すための暫定索引点です。公式の中心点、学校や市場の位置、小郡境界を示すものではありません。名称の一致はありますが、政府の境界図との点単位の照合は未了です。人口の範囲と座標の指す点を同じ範囲として描きません。
トーゴの首都は外務省基礎データのロメです。Boulohouは今回の行政資料ではモ県Mô 1内の地名です。
万国漢字志の暫定案
暫定日本語都市名
ブロフ
原綴り・所属国
Boulohou/トーゴ
暫定制定都市名
武路布
指定読み
ブロフ
制定区分
武路布――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
採らなかった表記と未解決点
武布は中間の省略を理由に採らず、武呂布は比較案として残します。先行漢字形が未確認であることを隠さず、今回の三字を本誌の提案として記録します。
現地音、日本語・中国語圏の先行形、命名者、BoulohouとBoulouhouの綴りの関係、集落単独の人口、公式地図との照合は未解決です。学校の名称が時代をまたいで現れることから、校舎や投票区まで連続すると断定することも避けます。
参考資料
- トーゴ共和国官報、1963年4月30日号。印刷267頁(PDF17頁)、投票所15/54・16/55。原頁確認。
- 同官報、2018年1月8日号。印刷8頁(PDF8頁)、政令2017-141/PR。原頁確認。
- INSEED『中央州統計年鑑2022–2023』。印刷49頁・表1-52、53頁・表2-5、281頁・表3-48。各原頁確認。
- ANID「List of Centrale Registration」。小郡・集落・施設の各欄。
- 観光省、Kpètè BènaとGbalédjéの滝の調査、2021年12月30日。候補比較。
- GeoNames「Boulohou」。トーゴ地名データの保存原本で該当行確認。© GeoNames、CC BY 4.0。公式中心座標としては扱わない。
- 漢字ペディア「武」「路」「布」「呂」。字音の根拠。
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」。首都の確認は既刊の調査を継承。
(2026年10月17日調査。地名全体の現地音源未聴取。)
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百二十三号
同じMô 1のKagnigbaraと、滝の調査から残るGbalédjéを比較します。小郡・集落・自然地形の対応を確認し、既刊とつながる一次資料の内容から次の一都市を選びます。
