万国漢字志

都市篇 · ポルトガル

万国漢字志 都市篇 第四百十三号|ブラガ――古代名と現代の三字「布拉加」――

古代碑文のブラカラ・アウグスタと現代中国語の「布拉加」を分け、当該都市への直接用例がある三字を検討する。


古代の名と、いまの三字を分けて読む

ポルトガル観光局の日本語ページは、この町を「ブラガ(Braga)」と書きます。同じページには古代名「ブラカラ・アウグスタ(Bracara Augusta)」も現れます。二つの名のあいだには長い時間があります。ポルトガル観光局の日本語案内

一方、中国駐ポルトガル大使館の2024年の告知は、開催地を「葡萄牙布拉加市」と記しています。現代の三字「布拉加」は、古代名を漢字へ直したものではありません。古代のラテン語名と、現代中国語の音写を別々に確かめます。


歴史表記

ブラガ市の「Braga Romana」公式サイトは、Bracara Augusta の成立をアウグストゥス期、紀元前1世紀末に置きながら、正確な年代はなお議論があると説明します。また Bracara は先住集団 Bracari の名またはその領域、Augusta はアウグストゥス期のローマ都市成立を示す、という現在の解説を載せています。ブラガ市「Braga Romana」

これは2026年の歴史再現事業に付された現代の解説です。古代人が書いた同時代本文そのものではありません。同ページも、紀元前137年の Bracari を伝えるアッピアノスは事件より後代で土地の外から書いた史料なので、慎重に読む必要があると明記しています。

原資料に近い手がかりとして、マドリード・カルロス3世大学の碑文データベースは、ブラガ大聖堂に残る2世紀の石板を次のように転写しています。

conventu{u}s Bracar(a)aug(ustani) d(edit)

ここに見える Bracar(a)aug(ustani) は、都市名の主格 Bracara Augusta そのものではなく、「ブラカラ・アウグスタのコンウェントゥス」の属格形を略記したものです。丸括弧は編者が補った文字、波括弧は転写上の訂正を示します。碑文画像の取得には成功していないため、石面を独自に判読したとはしません。DEpHis碑文103

日本語で使われた歴史的漢字地名は、今回確認できませんでした。ラテン語の古代名が確認できることと、日本語の漢字表記が存在したことは別です。


日本語での用例

ポルトガル観光局の日本語版は、見出しを「ブラガ(Braga)観光」とし、本文でも「ブラガ」を繰り返し用います。本稿の現代日本語都市名もブラガとします。日本語の都市紹介

同ページの「ブラカラ・アウグスタ」は古代名のカナ表記として参照します。現在の自治体名のカナを示す「ブラガ」と同じ欄にあるからといって、古代都市と2025年の municipio 全域が同じ境界だったとは考えません。


中国語圏その他の表記との比較

中国駐ポルトガル大使館が2024年3月11日に出した「漢語橋」大会の告知には、会場として「葡萄牙布拉加市Alberto Sampaio中学」とあります。住所の末尾にも原綴り Braga が併記されています。大使館告知、開催地欄

ここでは三字の原字をそのまま引用します。「布」「拉」「加」はいずれも日本語で使う字形と同じで、簡体字を日本の字体へ変換する操作はありません。当該都市を三字そのままで呼ぶ公的な直接用例を確認できたため、本誌の区分は「既」です。ただし、中国語での現代用例であって、日本語の伝統的漢字名やポルトガル側の公称漢字名ではありません。2024年の例は初出や命名者を示す資料でもありません。


二文字・三文字案の比較

布拉加

中国大使館の当該都市用例を一字も変えずに採る三字案です。資料との結びつきが最も明確です。一方、日本語の通常の音読みを並べれば「フ・ラツ・カ」などとなり、そこからブラガを自然に復元することはできません。カナ名と原綴りを併記して用います。

布拉

「布拉加」から末尾の「加」を落とす二字案です。二字に短くできますが、語末のガに対応する手がかりを失います。省略は本誌が加えるため「改」であり、「布拉」だけを当該都市に使う直接用例は未確認です。

武羅賀

日本語の音読みでブ・ラ・ガへ近づけるために選んだ三字の創案です。読みの手がかりは増えますが、「武」「羅」「賀」という字義は都市史や公的用例から導いたものではありません。この読みは本誌が漢字の読みを組み合わせるもので、現地ポルトガル語の音やアクセントを精密に示すものではありません。資料にある表記を退けて新しい字を当てる積極的な理由に乏しいため、採りません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ブラガ(Braga)

所属国

ポルトガル

暫定制定都市名

布拉加――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

ポルトガル国立統計院(INE)の2025年住民人口推計で、ブラガの人口は212,635人です。基準日は2025年12月31日、対象はDICO 0303、INE地理コード1120303の municipio/concelho 全域です。INE指標0012918

2026年11月8日保存の公式JSONでは、該当セルは /0/Dados/2025/19593 にあり、原行は geodsg=Braga、dim_3=T、dim_3_t=HM、dim_4=T、dim_4_t=Total、valor=212635 です。元ファイル全体のSHA256は 484f57d193b2985b8ea067be791bf0430f7e525d2629fe29964b2a5a15686944。更新日は2026年6月22日です。

地理区分はCAOP2020を基礎とし、NUTS2024を用いるINE版です。ポルトガル地方自治総局の自治体ページも、Braga concelho とその構成単位である freguesia を書き分けています。この人口は歴史地区、中心市街地、Bracara Augusta の遺跡範囲、個々の freguesia、ブラガ県、周辺都市圏の人口ではありません。地方自治総局のBragaページ

ポルトガル政府の国情報は、国の首都をリスボンとしています。ブラガはポルトガルの国家首都ではありません。ポルトガル政府「Sobre Portugal」

都市ID、国、自治体コード、現代名を組み合わせ、綴りの似るBragançaや人名のBragaと区別します。代表点は選定資料のGeoNamesから継承したもので、今回再取得していません。自治体境界ポリゴンの独立検証にも用いていません。


採らなかった表記と未解決点

「布拉加」を採る理由は、当該都市への同一三字の直接用例があり、日本語でも使う字形だけで構成されることです。中国語の読みや運用を日本語へそのまま移せるという意味ではありません。日本語では必ず「ブラガ」を添えます。

日本語の歴史的漢字表記、漢字名の初出と命名者は未確認です。「布拉加」についても、今回確認した2024年より前の初出や、誰が定めたかは分かりません。2世紀碑文は編集済み転写本文を読み、石面画像を確認できていません。古代の Bracara Augusta、後代の市街、現在の municipio の境界がどこまで重なるかも継続調査に残します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第四百十四号

第四百十四号は、ポルトガルのアマドーラ(Amadora)を取り上げます。