万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百十三号|ブレーメン――「不来梅」の三字と、市を指す範囲――

公的日本語用例のブレーメン市と現代中国語の不来梅を照合し、來への調整案を検討する。州と市の人口を分け、三字の意味と町の由来を結び付けない。

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市へのリンクに書かれた名

在ハンブルク日本国総領事館の滞在手続の案内に、ブレーメン市/ブレーメン州という行があります。その下には市の窓口と住所、そして市のホームページへのリンク。市と州に同じ名が現れることを、実用的な案内の一行が見せています。

一方、中国外交部に掲載された市長訪問の報告では、不来梅という三字を使っています。日本語でこの三字を眺めると、「来ない」と読めそうな部分に目が留まります。しかし、その意味から町の名の由来を説明することはできません。

今回は、出典にある形をどこまで残し、どこを本誌の判断で調整するかを考えます。人口についても、同じ名の州全体へ範囲を広げず、市単独の値を採ります。


歴史表記

ブレーメンの日本語の歴史的な漢字表記は、現時点では原典未確認です。 古い地理書や紀行の紙面で、漢字の形と、それに付いた読みを確かめる調査が残っています。

今回確認した不来梅は、現代中国語の公的なウェブ文書の用例です。古い日本語の刊本や、その電子翻刻から得た漢字ではありません。したがって、日本語での伝統表記や歴史表記として認定しません。

中国語の表記がいつ成立したのか、誰が選んだのかも、この報告だけでは分かりません。文書に表示された日付は用例を位置付ける手がかりであり、地名表記の初出年月日ではありません。


日本語での用例

総領事館の「長期滞在される方に必要な手続」では、「主要な市のホームページ」の欄にブレーメン市/ブレーメン州とあり、住所の末尾にはBremenと記されています。

カタカナとアルファベットの対応を、同じ案内の中で確かめられる例です。本誌の現代日本語都市名もブレーメンとします。手続の内容をここで案内し直すのではなく、都市名の日本語用例として参照しています。

ただし、この一行を根拠に市と州の統計範囲を同じにすることはできません。本稿の対象は、連邦統計局の自治体一覧でBremen, Stadtとされる市です。ブレーマーハーフェンを加えた州全体とは区別します。


中国語圏その他の表記との比較

中国外交部の「驻汉堡总领事林动到任拜会德国联邦参议院议长、不来梅市市长博文舒尔特」は、2026年1月7日の訪問を伝えています。本文の表示日時は同月9日21時58分で、題名にも本文にも不来梅があります。

本誌で検討する不來梅は、そこにある来を來へ替えた形です。原文そのものは不来梅であり、不來梅をこのページで見つけたことにはしません。今回の資料だけで台湾などを含む中国語圏全域の用字も認定しません。

三字は中国語で外国の都市名を表す用例として扱います。不と来を続けて「来ない」、梅を植物名と読んで、そこから都市の語源を作ることはしません。字の意味が目に入りやすいほど、地名を表す働きとの区別が必要になります。


二文字・三文字案の比較

布梅

先頭と末尾を二字にまとめる、本誌の比較案です。布の「フ」、梅の「バイ」を手がかりにしても、ブレーメンの全体の音にはなりません。「レー」や末尾の「ン」をどう担わせるかが残ります。

今回、この二字をブレーメンの略記として使った資料は確認していません。短い形を作れたことと、既存の表記を見つけたことは別です。

布礼門

布・礼・門を並べる、本誌の三字比較案です。礼の「レイ」、門の「モン」は日本語で音の手がかりになりますが、「フレイモン」と「ブレーメン」の間には濁音や母音の違いがあります。

原文の不来梅との字の対応も失われます。日本語の音を意識した案として残し、歴史的な用例とはしません。

不來梅

確認した不来梅の三字と順序を保ち、来だけを來に調整する案です。資料に戻って都市名を照合しやすく、二字に縮める規則を新たに作らずに済みます。

ただし、日本語で不を「フ」、來を「ライ」、梅を「バイ」と読んでもブレーメンにはなりません。三字を採り、読みはブレーメンと添える方針です。中国語の用例を土台にしても、日本語の普通の音読みだけで読める表記にはなりません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ブレーメン

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

不来梅

暫定制定都市名

不來梅――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

現代中国語の用例をもとに来を來へ調整するため、「改」とします。この調整は本誌によるもので、日本語で古くから使われていたという認定ではありません。

人口はドイツ連邦統計局(Destatis)の自治体一覧年次版による、2025年12月31日現在588,413人です。人口と自治体境界の基準日はともに同日、2026年8月版を用います。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計です。対象はブレーメン市単独の自治体全体で、ブレーメン州全体、ブレーマーハーフェンとの合算、都市圏の人口ではありません。住民登録簿による別集計を代用していません。


採らなかった表記と未解決点

布梅と布礼門は、比較のために本誌が組んだ案として残します。日本語の音に寄せる利点がありそうでも、既存の用例や、読みを省略してよい根拠は確認できていません。

不来梅をそのまま採る選択肢もあります。今回は來を用いる調整を選びましたが、この字体変更によってブレーメンの音に近付くわけではありません。

日本語の歴史的な漢字、初出、選字者は未確認です。市を指す名前と州を指す名前が同じでも、本稿で数える都市は一つ。漢字の選び方とともに、その名前が指す範囲も明記しておきます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百十四号

次回はエッセンを予定しています。日本語の交流事業の報告と、中国語の二字表記を照合します。