万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百七十号|ブレーマーハーフェン――五字の港町を、ブレーメン市と分けて読む――

中国総領事館の不来梅哈芬を、経済産業研究所の日本語用例と照合。Bremen市と異なる自治体の範囲を守り、五字を保つ暫定案と短縮の限界を記す。


港のある場所と、市の境界

ブレーメンとブレーマーハーフェンは、似た名前を持ち、同じ州に属します。それでも、二つの市を一つの人口へまとめてよいわけではありません。Bremerhaven市の公式資料は、市域の面積とブレーメン市に属する海外港区域の面積まで分けて示しています。

中国駐ハンブルク総領事館の市議会議長訪問報告では、市名は不来梅哈芬。今回はこの五字を保つ案と、二字・三字へ縮める案を比べます。短くする前に、どの市を表しているのかを確かめておきます。


歴史表記

ブレーマーハーフェンの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 現代中国語の不来梅哈芬を、日本で使われてきた古い漢字名として扱うことはできません。

市公式の「Unsere Stadtgeschichte」は、1827年の港町の成立を説明し、1939年にWesermündeへ編入されたこと、1947年にBremerhavenの名へ戻りBremen州の一部となったことを述べています。

ここで参照したのは、市が現在提供する歴史解説です。1827年の土地取得文書や1947年の行政文書原本を読んだわけではありません。Wesermündeという歴史上の名前も、不来梅哈芬の漢字の初出を示すものではありません。名称の変遷と日本語漢字の確認は分けて調べます。


日本語での用例

経済産業研究所が公開する「洋上風力産業拠点の形成による地域振興・雇用創出」の概要には、ドイツの産業拠点の一つとしてブレーマーハーフェンが出てきます。岩本晃一による2016年2月発行、16-P-004の紹介ページです。

この箇所は他の地域と並べて立地を説明しています。企業名や船名を市名へ読み替えたものではありません。本稿が確認したのは電子ページの概要で、リンク先論文の全頁を実見したとはしません。

在ハンブルク日本国総領事館の商工会議所会頭への表敬報告にも、ブレーメンとブレーマーハーフェンを並べた用例があります。2022年11月21日の掲載表示で、本文の訪問日は11月17日です。商工会議所の名前だけでなく、両地を述べる本文を用字の補助にします。

添える現代日本語の読みはブレーマーハーフェンです。資料にあるカタカナを、五字の通常の日本語読みの証明として扱うことはできません。


中国語圏その他の表記との比較

中国駐ハンブルク総領事館の「林动总领事到任拜会不来梅哈芬市议长」は、2025年12月27日15時58分の表示です。本文が報告する訪問日は12月10日。不来梅哈芬市の議長への訪問として、この五字を使っています。

中国外務省に同じ報告があり、情報源は駐ハンブルク総領事館、本文も同じ日付と市名です。これは別々の二報で独立に裏付けたというより、同じ報告の掲載先を確かめたものです。

本誌案の不来梅哈芬は、この文字列を無変更で用います。字体を変える操作も、字を省く操作もありません。ただし、日本語の歴史的用例を確認したことにはならず、台湾など他の中国語圏の用字や五字の初出も今回未確認です。


二文字・三文字案の比較

梅芬

原文の途中と末尾から一字ずつ残す、本誌の二字比較案です。既存の市名用例は未確認です。短くなりますが、不・来・哈を落とす根拠がありません。バイ・フンと読む例でも、ブレーマーハーフェン全体は再現できません。

不梅芬

先頭・中ほど・末尾の三字を選ぶ本誌案です。これも既存の都市名の用例は未確認です。省く来と哈が不要だとする資料はなく、三字に収めても日本語の読みの隔たりは残るため採りません。

不來梅哈芬

既刊の都市篇第二百十三号はBremenを不來梅とし、来を來へ調整しています。それに字面を合わせるなら、不來梅哈芬という五字の調整案も考えられます。ただし、この字体調整後の形を今回の出典で確認したわけではありません。本稿では確認した文字列を無変更で採る方針を優先し、來への変更案は残します。

不来梅哈芬

確認できた五字をそのまま採る案です。二字・三字を標準とする本誌では五字の例外ですが、短縮を支える用例がない現在、出典の市名へ戻れる形を優先します。

末尾を削って不来梅だけにすると、Bremenを表す形との区別が失われます。市が異なるという今回の確認を、表記の段階で曖昧にする利点はありません。五字の長さはこの区別を保つ理由にもなります。

それでも、日本語の通常の音読みを五字分並べて、ブレーマーハーフェンという読みを導けるわけではありません。読みは日本語資料から添えるもので、漢字の音読みをつないだものではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ブレーマーハーフェン

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

不来梅哈芬

暫定制定都市名

不来梅哈芬――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

確認した中国語の五字を無変更で採るため「既」です。「史」や「伝」とする根拠は今回得ていません。

人口はDestatis年次版の2025年12月31日現在118,502人。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計で、人口・自治体境界とも2025年12月31日、2026年8月刊の版を用います。対象はBremerhaven, Stadt、自治体コード04012000の全体です。Bremen州全体でも、既刊のBremen市(自治体コード04011000)でもありません。

市公式の「Allgemeines」は、ブレーメン市に属する海外港区域を除いたBremerhavenの面積を93.77平方キロメートル、その港区域を7.71平方キロメートルと分けています。本稿の自治体別統計も面積93.77平方キロメートルの市の行です。港名でまとめた範囲を人口へ代用せず、Bremen市との内包二重計上を避けます。


採らなかった表記と未解決点

梅芬と不梅芬は本誌の比較案で、確認済みの略称ではありません。五字を保つ案を採っても、日本語でそのまま読める形にはならないため、都市名の読みを添えます。

漢字の初出・選字者、日本語の歴史刊本での用例、他の中国語圏の形、根拠のある短縮形は継続調査です。訪問報告の議長や総領事を、この漢字名の命名者だとすることもできません。

市公式ページに載る別の人口は住民登録簿に基づく値です。基準日や統計体系が異なるため、Destatisの公式人口更新統計へ差し替えません。また、1827年の港町と、合併・改称を経た2025年の自治体範囲が同一だったと主張するものでもありません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百七十一号

次回はボトロップ(Bottrop)を予定しています。人口基準の掲載順に沿い、市名の現代用例と漢字案の根拠を調べます。