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都市篇 · セネガル

万国漢字志 都市篇 第四十六号|カップスキリング――四字「斯基靈角」と二つの由来説

カップスキリングはセネガル南西端、ディエンベリング・コミューンに属する海浜観光地。大西洋岸の村を基盤に1970年代から観光開発が進み、2023年の村人口は1万1042人。

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「岬」をどこへ置くか

都市篇第四十六号は、セネガル南西端の海浜観光地、カップスキリングです。

前号のウスイから大西洋岸へ下ると、砂浜と椰子の木、その背後に国際空港を備えたカップスキリングがあります。日本語名の「カップ」は、フランス語や英語のCap、すなわち岬を表します。

中国大陸向けの旅行案内には、

斯基林角

という形が見えます。「角」を後ろへ置き、Skirringを「斯基林」と写した四字形です。正字体へ直すと、

斯基靈角

となります。

都市篇では二字・三字を主流としています。しかし今回は、「岬」を含む既存の四字形を残すか、短く組み直すかを考えます。


日本語では「カップスキリング市」

外務省の海外安全情報は、ジガンショール州の対象地域を説明するなかで、カップスキリング市及びジガンショール市と記しています。岬や空港だけではなく、居住地を直接指す日本語の公的用例です。

在セネガル日本国大使館の報告にも、ジガンショールと並んでカップスキリングが現れます。JICAの水産分野の報告書は、零細漁業の計画地にカップスキリング水揚げサイトを挙げています。現代日本語では、このカタカナ形が外交、援助、漁業の資料にまたがって使われています。

国立国会図書館サーチでは、カップスキリング、キャップ・スキリング、Cap Skirring、斯基靈角を分けて調べました。今回確認できた公開書誌と検索可能な本文からは、この場所を指す日本語の歴史的漢字表記を特定できませんでした。

これは、過去の日本語資料に漢字表記が存在しないという証明ではありません。西アフリカ沿岸の水路誌や海図、旧フランス領西アフリカの地誌には、全文検索できない資料も残ります。そのため、歴史表記は未収録とし、日本語原典の調査を続けます。


中国語圏の二つの組み立て方

中国大陸向けのClub Med公式サイトは、カサマンスでの滞在を紹介する文章に斯基林角を用いています。これは「Skirring+岬」と組み立てた意訳併用形です。

一方、香港向けの同社サイトは、リゾート名を卡普斯基靈と記します。こちらはCapも含め、カップ・スキリングという音の並びを五字で写しています。さらに、オンライン共同編集資料には簡体字の开普斯科灵も見えます。

三つは同じではありません。

  • 斯基林角は、Capを意味で訳し、Skirringを音で写す
  • 卡普斯基靈は、Cap Skirring全体を音で写す
  • 开普斯科灵は、別の字で全体を音写する

中国気象局の観測地点一覧は、観測所名を中国字へ置き換えずCAP-SKIRRINGのまま載せています。中国政府や国連が都市の標準名としてどの漢字形を定めたかは、今回の資料から確認できません。

そこで本稿は、中国語圏で場所を直接指す用例があり、Capの意味も読める斯基林角を比較の基準にします。ただし、これは日本語の歴史的漢字名ではありません。


現地では「主要村」

日本の外務省は分かりやすく「市」と記しますが、セネガルの行政資料では扱いが異なります。

ウスイ県議会は、県内の自治体としてウスイ、ムロン、ディエンベリング、ウクート、サンチャバ・マンジャックの五コミューンを挙げています。カップスキリングは独立したコミューンではなく、ディエンベリング・コミューンの内部にあります。

セネガル国土整備庁の公式地理データは、Cap SkiringをVillage important、主要村に分類しています。政府の漁業報告も、ジガンショール州ウスイ県カブルス郡、ディエンベリング・コミューンに位置する場所として扱います。

したがって、ここでいう「都市篇」は世界の居住地を比べるシリーズ名であり、カップスキリングが法制度上の市であることを意味しません。国の首都でも、州都や県都でもありません。セネガルの首都はダカールです。


村人口は1万1042人

アサン・セック大学の2024年博士論文は、セネガル国家統計・人口経済分析庁の2023年国勢調査を引き、ディエンベリング・コミューンの人口を2万5902人、そのなかで最大の村カップスキリングを、

1万1042人

と記しています。

この二つの数字を混ぜてはいけません。2万5902人は複数の村を含むコミューン全体、1万1042人はカップスキリング村です。都市一覧には後者を採ります。ただし、村別人口の原表そのものは今回取得できず、大学論文が国勢調査を引用した数値であることも明記しておきます。

セネガル国土整備庁の公式KMLは、主要村Cap Skiringの集落点を北緯12.38964527473176度、西経16.7387586202905度に置いています。小数第六位へ丸めた北緯12.389645度、西経16.738759度を地図に使います。

近接する国際空港の公式基準点は別の座標です。地図に使う一点は空港の滑走路ではなく、国土整備庁が村落として登録した地点です。また、村の法定境界の重心でもありません。


漁村から海浜観光地へ

セネガル文化・工芸・観光省は、カップスキリングをカサマンスの代表的な海浜観光地と紹介しています。大西洋、マングローブ、森林、水田が近接する環境は、北部の乾燥した海岸とは異なる景観をつくります。

アサン・セック大学の研究は、1960年代のカップスキリングを漁業を中心とする小さな村として描きます。1960年代末にはジガンショールの飛行クラブ関係者が未舗装の滑走路を設け、1970年代初頭にClub Medを核とする観光開発が進みました。

Club Medの設置年は資料により1973年と1974年に分かれます。造成、施設設置、営業開始のどこを起点とするかでも年が変わるため、本稿では1970年代初頭とします。

現在の空港は、ASECNAの航空情報でカップスキリング国際空港として掲載されています。村、観光地区、空港は互いに結びついていますが、同じ範囲ではありません。

観光開発は雇用と交通をもたらす一方、農地や水田、海岸環境との緊張も生みました。カップスキリングを砂浜だけのリゾートとして見ると、漁業と農耕を続けてきた周辺社会が見えなくなります。


Skyringという人物名

カップスキリングの名を、英国海軍の水路測量士ウィリアム・ジョージ・スカイリングに結びつける説があります。

水路測量史は、スカイリングがHMSビーグルの測量航海に参加し、1833年に測量艦エトナの指揮官として西アフリカ沿岸へ赴き、同年12月にロクソ岬付近で死亡したことを記録しています。

アサン・セック大学の博士論文は、英国側がこの人物を記念して岬をSkyringと改称した、と先行研究を引用します。地名が人物名を受け継ぐという説明です。

ただし、今回確認できたのは後世の研究による説明です。いつ、誰が、どの海図や命令でCape Skyringと定めたのかを示す命名文書は確認できませんでした。また、別の現地聞き取りには、Skirringをジョラ語の鶏の呼び名に結びつける説もあります。

人物名説は十九世紀の測量史と結びつきますが、競合する説明を消して確定語源とはしません。


由来人物と命名者を分ける

ウィリアム・ジョージ・スカイリングは、現在名の由来人物とする説に登場します。しかし、本人が自分の名を岬へ付けたとする資料はありません。むしろ説明上は、死後に英国側が記念して名を付けた人物です。

そのため、スカイリングを都市名の命名者としては登録しません。命名を決めた個人または機関と、その時期を確定できた場合に、由来人物とは別に記録します。

漢字形斯基林角についても、四字を最初に選んだ人物と時期は確認できません。旅行会社の掲載担当者を漢字表記の考案者とみなすことはできないため、漢字表記の命名者も未確認とします。


三字案と四字形を比べる

斯基靈角

中国語圏で場所を直接指す斯基林角を正字体へ直した四字形です。「角」がCapの意味を担い、斯・基・靈がSkirringの音を支えます。

斯基靈

三字に収まり、都市篇の標準字数にも合います。中国語圏の二つの形に現れるSkirring部分を取り出す案ですが、カップスキリング全体を斯基靈とする直接用例は確認できません。既存形から一般名詞の「角」を外すと、Capを落とすことにもなります。

基靈角

これも三字ですが、語頭のスに対応する「斯」を落とします。確認した資料の用字ではありません。

卡普斯基靈

香港向け資料にある五字形です。音の並びは保ちますが、Capを表す二字「卡普」が長く、字義から岬を読み取れません。

二字・三字を主流とする方針は、短ければ既存用例を切ってよいという意味ではありません。今回は例外として、場所への直接用例と「岬」の意味をともに保つ四字の斯基靈角を採ります。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、四字の斯基靈角を採ります。

根拠は、中国語圏でカップスキリングの場所を直接指す斯基林角が使われていることです。簡体字の「灵」だけを正字体の「靈」へ直し、字の順序と数は変えません。

制定区分は創とします。日本語の歴史的漢字表記を復元するのではなく、中国語圏の既存表記を日本語の都市索引へ新たに取り込むためです。「斯基林角」という文字列を本稿が初めて作った、という意味ではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名
カップスキリング

所属国
セネガル

中国語圏で確認した場所名
斯基林角/卡普斯基靈

暫定制定都市名
斯基靈角――創

制定状態
暫定制定・日本語原典と命名史を継続調査


採らなかった表記と未解決点

三字の斯基靈と基靈角は、カップスキリングを直接指す用例を確認できないため採りません。五字の卡普斯基靈は既存用例ですが、四字の斯基林角が場所への直接用例とCapの意味を両立するため、主案にはしません。共同編集資料の開普斯科靈も、公的な標準地名ではないため採りません。

未解決点は、日本語資料における歴史的漢字表記、中国政府・国連などによる都市の中国語標準名、Cape Skyringという名の命名文書、人物名説とジョラ語説の関係、都市名と漢字形を定めた人物と時期です。

人口は2023年国勢調査を引用する大学論文の村人口です。コミューン人口とは区別します。座標は公式地理データの村落点であり、空港基準点や行政境界の中心点ではありません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第四十七号

次は、カブルスです。

カップスキリングの南にある古い村へ進み、ポルトガル語の岬名と現地名がどう重なったかを調べます。