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都市篇 · モロッコ

万国漢字志 都市篇 第七号|カサブランカ――五字の全称と二字の略称を分ける――

中華人民共和国外交部の領事サービス網は、カサブランカをモロッコ最大の都市で、主要港・経済の中心と紹介している。

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五字の全称と、二字の略称

都市篇第七号は、モロッコのカサブランカです。

中華人民共和国外交部の領事サービス網は、カサブランカをモロッコ最大の都市で、主要港・経済の中心と紹介しています。同じページには、五字の全称と二字の略称が一緒に示されています。

卡萨布兰卡(简称卡萨)

五字は都市を特定する全称、二字は公的資料に根拠を持つ略称です。どちらか一方を捨てるのではなく、役割を分けて万国漢字志へ取り込みます。


現代日本語では「カサブランカ」

外務省「モロッコ王国基礎データ」は、現在の日本語表記としてカサブランカを用いています。同資料が示すモロッコの首都はラバトであり、カサブランカは現在の首都ではありません。

今回確認した資料の範囲では、カサブランカの日本語による歴史的な漢字全称は確認できませんでした。未確認は不存在を意味しません。明治・大正期を含む地理書、新聞、地図などには、引き続き調査の余地があります。

したがって、日本語の歴史的漢字表記は未確認とします。後述する「卡薩布蘭卡」と「卡薩」は現代中国語圏の用例であり、日本語の歴史表記として扱いません。


中国語圏の五字「卡薩布蘭卡」

中華人民共和国外交部の領事サービス網は、簡体字で卡萨布兰卡と記しています。台湾の経済部国際貿易署も、最大都市の名を繁体字で卡薩布蘭卡としています。

「萨」と「薩」、「兰」と「蘭」は字体の対応です。二つの公的資料は、字体差を除けば同じ五字の全称を示しています。本稿では台湾資料に現れる字体にそろえ、卡薩布蘭卡とします。

ただし、これは中国語圏の現行表記です。日本語の歴史的な漢字全称が確認されたことにはなりません。万国漢字志がこの五字を日本語の都市索引へ取り込むため、制定区分は創とします。


公的な二字略称「卡萨」と採用字形「卡薩」

中華人民共和国外交部の同じページは、「卡萨布兰卡(简称卡萨)」と明記しています。「简称」は略称を示すため、二字の「卡萨」は資料にない形を本稿で新造したものではありません。

出典にある略称の字形は、簡体字の卡萨です。本稿では、全称を台湾資料の繁体字にそろえたのと同じ方針で「萨」を「薩」に正字化し、卡薩を採用略称とします。区分の既は略称そのものが既存であることを示し、「卡薩」という字形が日本語史料で確認済みだという意味ではありません。

この「卡薩」も日本語の歴史表記ではありません。日本語の歴史的用例が未確認であることと、中国語の既存略称が確認できることは、別々に記録します。


アンファから「白い家」へ

カサブランカ市の公式史は、この地の古い名をAnfaと記しています。その後、スィディ・ムハンマド・ベン・アブダッラーの時代に都市が再び発展し、Dar el-Beïda、すなわち「白い家」と呼ばれるようになった経過を説明しています。

同公式史によれば、1781年にスペイン商人が交易所を設けた後、スペイン語のCasa Blancaが広まりました。Anfa、Dar el-Beïda、Casa Blancaという流れは、都市名の変遷として確認できます。

一方、この資料はスィディ・ムハンマド・ベン・アブダッラーを地名そのものの命名者とは明記していません。都市の発展に関わる人物と、名称を造った人物を同一視できないため、本人を都市名または漢字表記の命名者とは認定しません。


人口と現在の都市範囲

GeoNamesが示す都市座標は、北緯33.58831度、西経7.61138度です。

モロッコ高等計画委員会が公表した2024年国勢調査の法定人口では、2024年9月1日現在のカサブランカ・コミューンの人口は321万5935人です。本稿の人口欄は、自治体に当たるコミューンの値を採用しています。

同じ資料では、カサブランカ県は321万8036人、カサブランカ=セタット地方は768万8967人です。コミューン、県、地方は行政範囲が異なるため、これらを一つの「カサブランカ人口」として混ぜません。


五字の全称と二字の略称を比較する

卡薩布蘭卡

五文字です。中国大陸の「卡萨布兰卡」と台湾の「卡薩布蘭卡」は、字体差を除いて一致し、対象都市を完全な形で示します。

日本語の歴史表記ではありませんが、公的資料に確認できる全称の卡薩布蘭卡を暫定制定都市名に置きます。

卡薩(出典の「卡萨」を正字化)

二文字です。中華人民共和国外交部が「简称」として明示した既存略称「卡萨」を正字化した形で、都市篇の標準文字数にも収まります。

ただし、二字だけを暫定制定都市名とすると、確認済みの五字全称との対応が見えにくくなります。そのため、卡薩布蘭卡を全称、卡薩を採用短縮形として併記します。

比較対象は、公的資料で確認できる五字の全称と二字の略称に限ります。直接用例のない三字形を新たに作って候補には掲げません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

カサブランカ

所属国

モロッコ

暫定制定都市名

卡薩布蘭卡――創

採用略称

卡薩――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査


採らなかった表記と未解決点

二字の「卡薩」は、公的資料にある簡体字略称「卡萨」を正字化して採りますが、五字の全称を置き換える主表記にはしません。また、資料に確認できない三字形は作りません。

未解決点は三つあります。

第一に、日本語資料における歴史的な漢字全称です。現在の日本の公的資料では「カサブランカ」を確認できますが、漢字による全称は今回の資料では未確認です。

第二に、中国語の全称「卡萨布兰卡/卡薩布蘭卡」と略称「卡萨/卡薩」の初出です。現在の公的用例は確認できますが、誰がいつ定めたかは確定できません。

第三に、AnfaからDar el-Beïda、Casa Blancaへ至る各名称の命名者です。市の公式史は名称の推移を説明していますが、特定の個人を命名者として示してはいません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第八号

次は、タンジェです。

日本語の現行表記、中国語圏の現行表記、歴史的な表記の証拠を分け、形をあらかじめ決めずに調査します。