町が移るとき、名に残るもの
丘の上の Castell Vell と、平地へ移った町。カステリョン・デ・ラ・プラナの市立博物館は、二つの場所を分けて都市の来歴を説明しています。今の市を知る手がかりは、古い城の名と、移転を許した文書にあります。市立博物館MUCCのCastell Vell案内
もう一つ、現在の呼び名にも二つの形があります。Castelló de la Plana と Castellón de la Plana。人口表の名前と、日本語で親しまれる音とを照合しながら、漢字案を考えます。
歴史表記
MUCCの現代解説は、マグダレナの丘にある Castell Vell をアンダルス起源の城塞とし、1251年の移転特許と1252年の新しい町の成立を説明します。市の観光局の解説は、1251年9月8日の移転許可と、1252年の四旬節に移ったという伝承を区別しています。許可文書の日付と、記念祭が受け継ぐ移転の日取りは、同じ種類の証拠ではありません。MUCC、市観光局「Orígenes」
ここで確認したのは公的施設による現在の解説です。1251年の文書原本・画像や全文の校訂翻刻を読んだわけではありません。丘の城塞、移転先の中世の町、現在の広い自治体を同じ範囲とせず、日本語の歴史的漢字表記の原典も未確認として残します。
自治体名の時点を分ける
2024年12月17日の州令187/2024は、Castelló de la Plana から二言語形 Castelló de la Plana/Castellón de la Plana への名称変更を認めました。2025年1月20日掲載の官報本文で確認できます。これは名称を変更した当時の行政文書であり、中世史を解説するページとは別の性格の一次資料です。官報、州令187/2024の単一条文
本稿で用いる2025年1月1日基準の人口表の行名は「12040 Castelló de la Plana」です。官報掲載日より前の基準日の名称と、官報が記録する変更後の二言語名を混ぜません。名称変更の条文は新しい都市の創設ではなく同じ自治体の呼称変更を扱っています。表の短い名を理由に Castellón 側を別都市として増やすこともしません。
日本語での用例
スペイン観光公式サイトの日本語版は、見出しに「カステリョン・デ・ラ・プラナ/カステリョー・デ・ラ・プラナ」を並べます。本稿の日本語名は前者、原語名は選定対象の Castelló de la Plana と、その二言語形を併記します。公式日本語観光案内
同案内がカステリョン県の県都と記す市を扱い、県全域の人口と取り違えません。スペインの国家の首都はマドリードであり、ここでいう県都とは別です。
中国語圏その他の表記との比較
市中心部のNH Castellón Mindoroを運営するMinor Hotelsの公式中国語ページは、所在地を「卡斯特利翁-德拉普拉纳市中心」と記します。ホテル自身が場所を案内する現代用例であり、都市の公認漢字名を制定した資料ではありません。ページの成立・更新年月は確認できません。公式ホテル案内、見出しと「亮点」
原文の地名は「卡斯特利翁-德拉普拉纳」。引用では「纳」を含めた字形を保ちます。本誌の「卡斯翁」は前半五字の「特利」と後半全体を省く三字案です。残した三字の字体は変えませんが、短縮しているので「改」です。この三字と同一形の都市名使用例を確認した、という主張ではありません。
二文字・三文字案の比較
卡斯翁
前半音写の最初の二字と終わりの一字を残す案です。日本語の通常の音読みだけではカステリョンにならず、特に中間のテリョに当たる音が失われます。「デ・ラ・プラナ」も表せないため、日本語名と原綴りを添えます。
卡翁
最初と最後を残す二字の調整案です。三字案より短いものの、音の手がかりはさらに減ります。同名や似た名の都市を呼び分けるには不十分で、今回この二字の既存都市名用例も確認していません。
平原城
丘から平地へ移ったという市の解説を手がかりに、本誌が意味から組み立てた三字案です。「創」に当たり、原語の厳密な逐語訳や古い漢訳とはしません。ヘイゲンジョウという読みでは現地名の音が消え、同じような地形を持つ他都市にも通じてしまいます。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
カステリョン・デ・ラ・プラナ(Castelló de la Plana/Castellón de la Plana)
所属国
スペイン
暫定制定都市名
卡斯翁――改
制定状態
暫定制定・原典継続調査
INE年次人口センサス表68065による2025年1月1日の通常居住者人口は183,709人。自治体コード12040の municipio 全域です。中世の移転先だけでも、カステリョン県全域でも、近隣自治体を加えた都市圏でもありません。INE表68065
使用したのは2026年11月7日保存の2025年版です。公表日は2025年12月2日、対応PXの作成日表示は2026年4月30日。保存CSVのSHA256は 9e37188faa63aa86e7a8648469834beaa2e728e5338e3364ef1ce4685178d419、該当行は物理27722行です。代表点は選定資料に保存されたGeoNamesの位置を継承し、自治体境界ポリゴンの版は独立に確認していません。
採らなかった表記と未解決点
「卡斯特利翁-德拉普拉纳」は現代用例として残しますが、三字へ縮める判断は本誌が負います。日本語の伝統的漢字形、漢字の初出・命名者、採用三字と同一形の直接用例は未確認です。「卡斯翁」だけでは都市と県の区別もできないため、自治体コードと原名の対応を保持します。
1251年の移転許可については当時の文書原文の確認が残ります。名称の二言語形についても、本稿は直接読んだ2024年の州令と保存人口表の対応を示す範囲にとどめ、名称をめぐる全史や訴訟の全経過まで確定したとはしません。
参考資料
- MUCC:Centro de Interpretación Castell Vell。市立博物館の現代解説。成立・更新年不記載。1251年原文書の代わりにはしません。
- 市観光局「Cultura」。「Orígenes: de la Magdalena al llano」。許可日と移転伝承を分けた現代解説。
- スペイン官報:州令187/2024。2024年12月17日成立、2025年1月20日掲載、単一条文。公式Webの当時本文を直接確認。
- スペイン観光公式サイトの日本語案内。日本語の二形と県都の説明。
- Minor Hotels:NH Castellón Mindoro、中国語案内。施設運営者自身の所在地用例。成立・更新年月不記載。
- INE「Población según municipio y sexo」表68065。上記保存版、12040、男女計・2025年。
- スペイン憲法。第5条、国家の首都はマドリード。
- GeoNames:Castelló de la Plana。選定資料から継承した代表点。人口・境界の証拠ではありません。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第三百七十五号
第三百七十五号はブルゴスを取り上げます。
