万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第九十九号|シンカセ――国境の名と町の名、「真加瀬」の三字案

トーゴ側のシンカセを、同名県と国境施設から区別する。JICAの日本語名、国連報告書の中国語形、2022年都市人口56,830人を照合し、日本語の読みを重視した三字の新案・真加瀬を暫定選定する。

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国境を示す名、人口表に載る町

前号のチャンバに続いて、トーゴの都市人口表を読みます。都市人口表でアニエとノッツェの間に載る未収録の町が、Cinkassé――シンカセです。

日本語の資料でこの名を探すと、国境や物流回廊の説明に行き当たります。JICAの報告書では、ブルキナファソ側にもトーゴ側にもシンカセという名が付されています。名前だけを拾うと、どちらの国の町を指しているのか見失いそうです。

今回は、トーゴ側の都市シンカセを対象とします。漢字の候補を考える前に、町・県・国境施設の範囲を分けておきます。


日本語での用例はシンカセ

JICA『西部アフリカ包括的OSBP支援協力プログラム形成協力準備調査報告書』の第3章、**印刷105頁(分割PDF21頁)**には、節の見出しと表の名称欄にシンカセが現れます。名称欄はラテン字のCinkasseと日本語のシンカセを並べ、国の欄はブルキナファソ側とトーゴ側を区別しています。原頁画像で確認しました。

この資料から、日本語の地名用例としてシンカセを採ります。ただし、ここで説明されているのは国境施設です。ブルキナファソ側の施設や通関事情を、トーゴ側の都市全体の説明へ移すことはできません。施設の状況も当時の記録であり、現在の運用を示すものとは扱いません。

一方、GeoNamesの集落項目は名称をSinkassé、別名をCinkasséなどと記録しています。国コードはTG、地物分類は集落を表すP.PPLです。本稿では統計表に合わせて原綴りをCinkasséとし、Sinkasséは同じ集落項目に登録された別綴りとして残します。

今回確認したRDFには日本語・中国語の別名登録はありません。日本語名の根拠はJICA、町の識別と座標の根拠はGeoNames、と資料の役割を分けます。


歴史的な日本語漢字表記は未確認

今回確認した日本語資料では、カタカナのシンカセが使われています。都市を指す歴史的な日本語漢字表記や、制定に採れる日本語漢字の先行使用・提案は原典未確認です。

検索で見つからないことは、不存在の証明ではありません。古い地図や地理書の画像本文も含め、継続調査とします。後で示す真加瀬は、今回の本誌による新案です。


中国語の辛卡赛と国境地域

国連に提出されたトーゴ政府報告書CEDAW/C/TGO/1-5(2004年)の中国語版54頁には、辛卡赛という形があります。OHCHRの公式配布一覧から確認できる文書です。

同頁の表7は社会状況の地理的分布を扱い、草原区の地点名に辛卡赛を挙げています。英語版49頁の同じ表では、対応する地点がCinkasséです。さらに「1.2.2. 在边境地区」と英語版の対応節でも、辛卡赛/Cinkasséがトーゴとブルキナファソの北部国境の地名として示されています。両言語の原頁画像を照合しました。

ここで確かめられるのは、辛卡赛がCinkasséに対応する中国語の地名用例だということです。記述は国境地域を扱っており、その範囲が2022年の都市人口の集計境界と一致するかは未確定です。当時の社会状況を現在の都市紹介へ読み替えることもしません。

中国語の用例が確認できても、日本語の漢字表記として先行使用があったことにはなりません。中国語形の初出・選字者、台湾等での公的標準は未確認として残します。


56,830人は県でも国境両側でもない

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)には、Cinkasséの2022年居住人口が男性28,056人、女性28,774人、合計56,830人とあります。表題はトーゴ各都市の居住人口を男女別に示すものです。続きの印刷34頁(PDF52頁)では、出典をINSEEDの第5回国勢調査、2022年の人口空間分布資料としています。表題・数値・出典を原頁画像で確認しました。

同年鑑の表3.18、印刷25頁(PDF43頁)には、県CINKASSEが128,959人、自治体CINKASSE 1が75,992人と載っています。町と同じ名を含んでいても、都市表の人口とは別です。

本稿で採る56,830人は、トーゴの統計が都市として集計した居住人口です。県全体、自治体全域、国境の両側を合わせた人口には使いません。都市の細かな統計上の境界は、この表だけでは確認できず、要継続調査です。

GeoNamesのトーゴ側の集落代表点は、北緯11.10389度、東経0.00944度です。市域の境界を示す座標ではありません。RDFの人口値は今回の国勢調査値と異なるため、人口にはINSEEDを用います。

所属国はトーゴです。外務省の基礎データは国の首都をロメとしています。シンカセは国の首都ではありません。


二文字・三文字案の比較

二字に縮めると何が落ちるか

シンカセを「シン・カ・セ」と捉えると、三つのまとまりが残ります。試案として「真瀬」と二字に縮めれば、真のシンと瀬のセは示せますが、中央のカが落ちます。

これは本稿で比較のために置く試案であり、既存の都市名用例ではありません。短さだけを優先して、地名の音を一つ省く理由は今回見いだせませんでした。

中国語の三字をそのまま採る案

辛卡赛は、実際の中国語資料にある形として保存します。ただし、その三字が中国語で使われていることと、日本語のシンカセを読み取りやすいことは別です。

国連文書の形は国境地域の地名用例であり、日本語での先行用例も未確認です。今回は、その文字列を日本語の制定名へそのまま移す案は採りません。

真加瀬

本誌の三字案は真加瀬です。漢字ペディアの「真」には音読みシン、「加」には音読みカ、「瀬」には訓読みせが示されています。二字の音読みと一字の訓読みを組み合わせ、シン・カ・セに対応させます。

この組合せは、町の名として辞書に載る読みではありません。各字にある読みを本誌が地名用に組み合わせた当て字です。原語の発音やアクセントを完全に再現したとも主張しません。

三字を選ぶ理由は、日本語資料のカタカナ名を省略せず、既存の漢字の読みで対応を説明できることです。瀬には水辺を連想させる意味がありますが、地名の語源や町の地形から選んだ字ではありません。真や加にも、この町の性格や歴史を説明する意味を持たせません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

シンカセ

原綴り

Cinkassé(GeoNamesの名称はSinkassé)

所属国・対象

トーゴ側の都市。県全体やブルキナファソ側の国境施設は含めない。

中国語の確認形

辛卡赛――国連報告書の地名用例。都市人口の集計範囲との一致は未確定。

暫定制定都市名


真加瀬

読み

シンカセ

制定区分

真加瀬――創

制定状態

暫定制定・原典継続調査

編纂綱領第三条・第四条・第五条・第九条に従い、日本語の先行用例、中国語の確認形、本誌の提案を分けます。中国語の辛卡赛が存在するだけでは、日本語での使用・提案を条件とする「既」にはできません。

今回は、制定に採れる日本語漢字の既存用例を確認できない現段階で、日本語名の三つの音のまとまりを残すため、真加瀬を新たに選定するので「創」とします。中国語形の字体だけを調整したものではなく、日本語の読みを基準に別の三字を組み合わせる案です。

日本語用例が未確認だから自動的に創とするのではありません。二字で生じる音の省略、中国語形の用例の範囲、各字の読みとの対応を比較して選びました。先行用例が見つかれば、表記と区分を再検討します。


採らなかった表記と未解決点

二字の真瀬は中央のカを残せないため、中国語の辛卡赛をそのまま採る案は日本語の読みを優先するため、今回は採りません。辛卡赛の用例自体は保存します。

日本語の歴史的漢字表記、漢字の先行使用・提案、中国語形の初出・選字者、地名の語源と命名者は未確認です。都市の統計上の境界、国連文書の国境地域との範囲の関係も未確定です。一字略称は制定しません。

シンカセを探すと、資料の中では国境が先に見えてきました。それでも人口表に戻れば、トーゴ側の町の一行があります。本誌の真加瀬は、その都市に対応させる日本語の暫定案として置きます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百号

次回もトーゴの都市人口表に載る未収録都市を候補に、日本語名と漢字形の根拠を確認してから選びます。