万国漢字志

都市篇 · セネガル

万国漢字志 都市篇 第三十二号|ダカール――三字の「達喀爾」を首都へ結ぶ

ダカールはセネガル共和国の首都。大西洋へ突き出すカーボベルデ半島に位置し、港と鉄道を基盤に西アフリカの政治・経済・文化の中心として発展した。2023年国勢調査のダカール県人口は127万8471人。

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「達喀爾」は日本語の旧表記か

都市篇第三十二号は、セネガル共和国の首都ダカールです。

台湾教育部の『重編國語辭典修訂本』は、都市名の見出しとして、

達喀爾

を掲げ、「セネガルの首都」と説明しています。中国大陸の外交・通商資料では、対応する簡体字形达喀尔が使われます。

三文字で都市篇の標準にも収まる、根拠の明確な漢字形です。ただし、中国語圏で使われることと、日本語で歴史的に使われたことは同じではありません。

日本の外務省は現在、カタカナの「ダカール」を用いています。日本語資料における「達喀爾」の直接用例は確認できていないため、旧表記の復元ではなく、中国語圏の既存表記を現代日本語の都市索引へ取り込む案として検討します。


中国語圏で確認できる三字

台湾教育部の辞典は、繁体字の達喀爾を独立した都市名として採録しています。港の説明も続きますが、見出しそのものに「港」は含まれません。

中華人民共和国外交部のセネガル情報は、达喀尔を同国の首都として掲げ、別の箇所では达喀尔港と記します。中国商務部の2025年版国別指南も「首都达喀尔」「首都达喀尔市」を用いています。

さらに、中国外交部の条約データベースでは、1971年12月7日に署名された中国・セネガル国交樹立共同公報の署名地が达喀尔です。都市を指す公的な使用を、現在の解説だけでなく外交記録でも確かめられます。

簡体字の「达」「尔」を日本の常用字体に機械変換したのではありません。繁体字形の達喀爾そのものを台湾教育部の都市名見出しで確認できるため、この三字を候補とします。


日本語資料ではカタカナを確認する

外務省の「セネガル共和国基礎データ」は、首都をダカールと記します。会計検査院が公開した在セネガル日本国大使館の資料も、所在地を「セネガル ダカール」としています。

国立国会図書館サーチと国立公文書館アジア歴史資料センターで「達喀爾」「達加爾」「達卡爾」を照合しましたが、今回、本文を確認できる日本語の歴史資料には到達しませんでした。

これは「日本語では一度も使われなかった」という証明ではありません。現段階で確認できる日本語の公的表記はカタカナであり、漢字形を日本語の歴史表記と認定する直接資料が未発見だ、という確認結果です。

したがって、達喀爾を「史」や「既」とはせず、制定区分は創とします。ここでの「創」は三字を新造したという意味ではなく、中国語圏で実在する都市名を、万国漢字志が日本語の索引へ新たに採るという区分です。


Ndakaaruと二つの語源説

セネガル国家統計・人口経済分析庁のダカール地域報告は、現地語ウォロフ語の名をNdakaaruと記します。同じ資料は、1750年のカーボベルデ半島の略図にDakarの名が見えると説明しています。

語源については一つに定まりません。タマリンドを表すウォロフ語dakharに結びつける説と、「避難の地」に相当するdëk rawに結びつける説が紹介されています。

どちらかを確定説として採る根拠は足りません。また、都市名を一人の人物が考案したとする資料も確認できませんでした。都市計画や植民地行政に関わった人物と、古くからある地名の命名者を同一視しないことが必要です。


先住集落から植民都市へ

ダカールの地には、フランス占領より前からレブ人の集落がありました。都市史研究は、海軍軍人レオポルド・プロテが1857年5月25日にフランス領有を宣言し、技師エミール・ピネ=ラプラドがその後の植民都市計画を進めた経過を整理しています。

市の紹介にはピネ=ラプラドを「建設者」とするものがあります。しかし、先住集落、1857年の領有、後の都市計画は別の段階です。ピネ=ラプラドを都市名の命名者、まして「達喀爾」という漢字形の考案者とは扱いません。

深水港の整備と1885年開通のダカール・サン=ルイ鉄道は、都市の成長を支えました。1902年、フランス領西アフリカの行政中心はサン=ルイからダカールへ移ります。前号のサン=ルイから、行政中心が南へ移った歴史を追う位置づけです。


現在の首都と人口範囲

外務省が現在のセネガル共和国の首都として掲げるのはダカールです。国連地名専門家グループの都市記録もダカールを首都とし、都市の代表座標を北緯14.696449度、西経17.453372度としています。

人口は範囲を明記しなければなりません。セネガル国家統計・人口経済分析庁の2023年国勢調査最終報告は、ダカール県の人口を127万8471人と記録しています。本稿と公式サイトでは、都市中心部を構成する行政範囲の公的な近似値として、この県人口を採ります。

これはダカール州全体の人口ではありません。ダカール州にはダカール県のほか、ピキン、ゲジャワイ、リュフィスク、クール・マサールの各県が含まれます。州人口や都市圏人口を「ダカール市人口」として混ぜないようにします。

同庁の地域社会経済報告には、同じ2023年のダカール県人口として127万8469人という、最終報告より二人少ない数値もあります。ここでは全国国勢調査の最終報告にある127万8471人を優先しました。


二字・三字案を比較する

三字の達喀爾には、台湾教育部辞典の都市名見出しと、中国大陸の公的資料にある対応形达喀尔があります。音の三つのまとまりを残し、対象がダカール市であることも直接確認できます。

二字へ縮めた達喀や喀爾は採りません。いずれも、ダカールを指す都市名として信頼できる資料に確認できず、三字形から都合よく一字を落とした案にすぎないためです。

都市篇の二字・三字優先は、根拠のある短い形を探す方針です。今回は、直接用例のある三字形が標準文字数に収まるため、新しい短縮形を作る必要がありません。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、三字の達喀爾を採ります。

根拠は、台湾教育部の辞典がこの繁体字形をセネガルの首都として採録し、中国大陸の外交・通商資料も対応する簡体字形达喀尔を都市名に用いていることです。

制定区分は創です。日本語の歴史表記として継承するのではなく、中国語圏の既存表記を現代日本語の都市索引へ新たに取り込みます。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名
ダカール

所属国
セネガル

中国語圏で確認した漢字形
達喀爾/达喀尔

暫定制定都市名
達喀爾――創

制定状態
暫定制定・日本語原典継続調査


採らなかった表記と未解決点

二字の達喀と喀爾は、ダカール市を直接指す資料を確認できないため採りません。達喀爾港や达喀尔港の「港」、达喀尔市の「市」は一般名詞なので、制定都市名には含めません。

未解決点は、日本語資料における歴史的漢字表記、DakarまたはNdakaaruという地名の最初の記録と命名者、達喀爾または达喀尔という漢字形を最初に選んだ人物です。

プロテは1857年の領有宣言、ピネ=ラプラドは植民都市計画に関わる人物として記録できますが、都市名や漢字形の命名者とは認定しません。語源も複数説を併記し、いずれかを確定説にはしません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第三十三号

次は、ティエスです。

ダカールとサン=ルイを結ぶ鉄道の要衝へ進み、二字・三字の漢字表記に直接の根拠があるかを調べます。