万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第百九号|ダニ・アペイェメ――人口表から読書センターへ

トーゴのDanyi-Apéyéméを2022年都市人口6,671人と政府の読書センター資料から紹介。綴りに基づく暫定転写を示し、現地発音未確認のまま六字の創案・陀尼阿佩耶梅を暫定選定する。

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人口表の町に、読書の場所がある

前号のパグダに続き、トーゴのDanyi-Apéyéméを取り上げます。本誌ではダニ・アペイェメと暫定的に転写します。日本語の定着形や現地発音を確定した名前ではありません。

都市人口表の合計は6,671人。別の政府資料では、同じ地名が読書・文化活動センターの新しい設置先にあります。人口表の一行に、今度は本を読む場所の記録が重なります。

対象を選んだ理由は、統計表でパグダの次に載ることだけではありません。トーゴ文化行政の2021年記事はパグダを既存の読書センター網に、Danyi-Apéyéméを拡張予定地に挙げます。前号の町と文化施設網でつながり、さらに2024年の資料で新拠点への資料配送まで追える。統計と文化行政がそれぞれ同じ町をどう記すかを読める点に、今回の資料価値があります。


2022年の都市人口と、地名の位置

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21は都市別居住人口を男女別に掲載しています。表題は印刷33頁、Danyi Apéyéméの行と表末尾の出典は印刷34頁(PDF52頁)です。

既存調査で原頁を確認した内訳は男性3,409人、女性3,262人、合計6,671人。内訳の和は合計に一致します。出典はINSEED、RGPH 5、2022年人口空間分布資料です。

これは表が都市として集計した居住人口です。Danyi県やコミューン全域の人口とは区別します。都市の集計区域と行政境界の対応は、この表だけでは未確定であり、2022年の値を現在人口としても扱いません。

GeoNames公式RDF、識別番号13132463には、Danyi-Apéyéméが国コードTG、居住地分類P.PPLとして登録されています。代表点は北緯7.20365度・東経0.69563度。町の境界を示す座標ではありません。

同記録の人口5,850人には対象年が付いていません。文書の作成・更新日を人口調査年に読み替えず、統計表との差を人口減少とは説明しません。外務省の基礎データが挙げる国の首都はロメで、今回の町は国の首都ではありません。

統計表は空白で、地名記録と文化省資料はハイフンで二つの部分をつなぎます。完全な地名DanyiとApéyéméの組合せが一致することから、本稿は同じ町の記録として扱います。Danyiだけを指す県名や、別のDanyiを冠した集落をこの町に置き換えることはしません。ハイフンの有無も改称の証拠にはしません。


政府資料に載る読書センター

トーゴ観光・文化・芸術省の2024年2月27日記事は、読書・文化活動センターCLACの新たな8拠点の一つにDanyi-Apéyéméを挙げます。

記事によれば、文化資料は2024年1月19日に受領され、20日と21日に8拠点へ送られました。担当者の初期研修は2月5日から10日までAtakpaméで行われています。いずれもネットワーク全体の説明であり、この町だけの開館日や蔵書数を示すものではありません。

人口表は居住者を数え、文化行政の記録は施設の所在地を示します。二つを合わせると町を紹介する手掛かりが増えますが、町全体の識字率や教育水準までは分かりません。読書の場所があるという記録を、そのまま町の性格の断定へ広げないようにします。


日本語での用例と、読みの根拠

日本語の公的地図・辞書による定着形は、現時点では原典未確認です。そこで今回の読みは、政府のフランス語資料に載るDanyi-Apéyéméの綴りを起点とした、本誌の暫定的な日本語転写として示します。

アカデミー・フランセーズ辞典のYの項は、語末のyが母音iを表す場合と、母音間のyが半子音を表す場合を説明します。ケベック州フランス語局の母音資料ではéを含むétéの母音が[e]として示されています。この一般的な対応を当該綴りに適用し、Danyiをダニ、Apéyéméをア・ペ・イェ・メと写す方針を採ります。éはアクセント記号があるから長音になるわけではなく、今回は長音符を補いません。

ただし、Danyiのnyを単純にnとyへ切り離せるとも限りません。UCLA音声学研究室のエウェ語語彙資料は、nyeのnyを[ɲ]、yaのyを[j]として示します。nyを一つの鼻音として読む可能性も考慮し、日本語ではニを近似の目印にします。この語彙資料は町名自体の発音資料ではなく、エウェ語一般の対応を町名の音価・声調の証明には使いません。

ダニ・アペイェメは綴りと言語資料に基づく編集上の転写であり、町名全体を聞いて採録した発音ではありません。 現地話者による町名全体の音源、声調、母音の細部は今回確認できていません。日本語のニは[ɲ]を厳密に再現せず、イェも近似です。フランス語で紹介される綴りからの転写と、現地語の発音の確定は区別して残します。


歴史表記と中国語圏の表記

日本語の歴史的漢字表記、漢字の直接先例、中国大陸・台湾の公的地名資料による採用形は、現時点では原典未確認です。語源、命名者、命名年も未確定です。

既存調査で取得したGeoNamesのRDFには漢字別名はありませんでした。ただし、一つの地名記録にないことは、漢字表記がどこにも存在しないという証明にはなりません。Danyi県だけの漢字形が今後見つかっても、都市名全体の先例として自動的には使えません。

一方、先例が未確認でも、本誌が提案を創と明示して選定することはできます。以下の候補は伝統表記の復元でも中国語表記の紹介でもなく、今回の暫定転写に添える新しい当て字です。


読み全体を残す創案の比較

都市篇の標準は二字・三字ですが、ダニとアペイェメを二つの部分ごとに残すと、それ以上の文字数が必要です。二字の陀梅、三字の陀阿梅という縮約も考えられますが、どちらもニ・ペ・イェなどの目印を失います。略称を作ることが今回の目的ではないので、六字案を比較します。

各案の読みはすべてダニ・アペイェメです。ダ/ニ/ア/ペ/イェ/メに一字ずつ目印を置きますが、六字全体に指定する当て字読みであり、各字の通常の音読みだけで自動的に読めるとはしません。

陀尼阿佩耶梅

第一案です。陀・尼でDanyi、阿・佩・耶・梅でApéyéméを追えるようにします。とくにイェの部分を耶として独立させ、アペメへ縮めません。ペとメは通常の字音そのままではなく、本誌の読みの指定を必要とします。

字義で町の風景を描く案ではありません。梅の産地だという根拠や、佩から装飾文化を導く根拠はなく、いずれも音を追うための文字として使います。

達尼阿佩耶梅

陀を達に替えた第二案です。読みの全体は同じように残せます。ただし達は日本語でタツと読まれやすく、冒頭のダに不要な末尾の音を連想させます。第一案にも読みの指定は必要ですが、ここでは陀を採ります。

陀尼亜平耶芽

第三案は、後半を亜・平・耶・芽に替えます。同じ六つの目印を持つ一方、平はヘイ、芽はガという読みを誘いやすく、平原や植物についての意味も連想されます。これらの字義を当地の特徴と結び付ける資料はありません。第一案より音の対応を説明しやすくなるとは判断せず、今回は残案とします。

三案とも史料上の根拠を競う候補ではありません。読みを省かず、二つの部分を文字列で追え、字義を地理の説明に使わないという条件から、陀尼阿佩耶梅を選びます。漢字を添えたから読みの不確実性が解消するわけではないので、読みと表記はともに暫定です。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名(本誌の暫定転写)

ダニ・アペイェメ

原綴り・所属国

Danyi-Apéyémé/トーゴ

暫定制定都市名


陀尼阿佩耶梅

読み

ダニ・アペイェメ(六字全体に指定する本誌の当て字読み)

制定区分

陀尼阿佩耶梅――創

制定状態

暫定制定・原典継続調査

地名全体を残すため、標準の二字・三字ではなく六字を採ります。一字略称は制定しません。現地発音や日本語の定着形、漢字先例を確認できた場合には、読み・文字・制定区分を再検討します。


採らなかった表記と未解決点

陀梅と陀阿梅は音の目印を省くため採りません。達尼阿佩耶梅と陀尼亜平耶芽は全体を残す候補ですが、今回は陀尼阿佩耶梅を選びました。いずれも既存用例があると認定したものではありません。

現地話者による町名全体の発音、声調、語源、日本語の定着形と歴史的漢字表記、中国語圏の公的掲載形は継続調査です。都市人口の集計境界、GeoNames人口の年次、読書センターの個別開館日と蔵書数も未確定です。

町の名前は人口表にも読書センターの資料にもあります。漢字案は、その確認できた名前に本誌が添えるものです。新しく文字を選ぶことと、昔からその文字で呼ばれていたと書くことを分けたまま、今回の案を置きます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百十号

次回もトーゴの未収録都市を候補とし、地名全体の同一性と読みの根拠、既刊とのつながりを確認してから選びます。