二つの文字を、欧文へ戻して読む
フランスの留学案内に、大学の欧文名と中国語名が並んでいます。ブルゴーニュの大学を紹介する箇所では、所在地のDijonに対応するのが第戎。漢字二字だけを先に眺めると読みに迷っても、欧文と並べると町の名前として結びつきます。
日本語の公式観光記事ではディジョンです。本稿では二つの資料を照合し、第戎を現代中国語の既存表記として暫定採用します。字の意味から町の歴史を読み解くのではなく、用例の中で何を指しているかを確かめます。
歴史表記
日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 日本語の古い地理書・旅行記・地図について、漢字形と読みとDijonの対応を揃えて実証したとは言えません。第戎の初出や選字者も未確定です。
今回の中国語資料が比較的以前の留学案内であることも、日本語の歴史表記を確認したという意味にはなりません。使用された言語と、その資料が示す年代の範囲を保ったまま扱います。
日本語での用例
フランス観光開発機構のFrance.frに「ディジョン」という記事があり、見出しと本文でこのカタカナ名を使っています。頁の表示は2013年11月20日公開、2024年1月29日更新です。欧文Dijonは、同頁の観光案内やリンクにも現れます。
記事はブルゴーニュの文化遺産や食を紹介しています。本稿がそこから借りるのは、まず町の日本語名です。観光紹介で扱う周辺のぶどう畑まで、自治体人口の範囲に含めるわけではありません。
本稿も読みはディジョンとします。第と戎の日本語での通常の音訓を順に並べて導いた読みではなく、都市名全体への対応です。現地話者の音声は今回確認していません。
中国語圏その他の表記との比較
中国の在リヨン総領事館が掲載する「法国留学注意事项」には、公立大学の一覧の19番として欧文の大学名とDijon、その直後に中国語の大学名と括弧内の第戎が記載されています。
大学名の一部だけを切り取って地名を推定するのではなく、欧文側の所在地と中国語側の括弧内を比べられる箇所です。同じ頁の別の学校紹介にもDijonと第戎が対応して現れます。
頁の本文上部は2006年10月11日と表示され、URLの階層には2009年の年月が含まれます。本稿は本文表示の日付と掲載場所を区別し、当時の大学一覧を現在の大学制度や留学手続の案内として引用しません。中国語での地名使用例としてのみ参照します。台湾など他地域の字形を今回網羅したとはしません。
二文字・三文字案の比較
第戎
確認した領事館掲載文にある二字形です。欧文と漢字の対応をたどれ、本誌の標準文字数にも収まります。第を別字に改めたり、町の特色を表す字を足したりする根拠は、今回の資料からは得られません。そのまま採ります。
第戎市
三字にして市であることを示す比較形です。末尾の市は、Dijonの発音を補う字ではありません。本誌の制定都市名は第戎とし、自治体であることは本文で説明します。この三字形を日本語の歴史資料で確認したとはしません。
ディジョン
日本語での読みを伝えるときは、確認できたカタカナ名が役に立ちます。漢字二字がすべての音を表す必要はありません。読者が町を調べ直せるよう、ディジョンとDijonを併記します。
161,830人は、どの範囲の人口か
INSEEのDijon、自治体コード21231の人口表で、population municipaleは161,830人です。別計上人口3,133人を加えたpopulation totaleの164,963人とは区別し、本稿は自治体人口である前者を使います。全国の自治体一覧と、この自治体の人口表で値が一致することを確認しています。
この統計版の説明では、人口基準日は2023年1月1日、自治体境界は2025年1月1日、発効日は2026年1月1日です。2026年時点の推計人口という意味ではありません。
対象はDijonというcommune全体です。施設や観光区域だけでも、周辺の自治体を合わせた都市圏でもありません。周辺市や内包地区を同じ都市の別枠として重ねて数えません。地名を確認した資料の対象範囲と、人口統計の境界は区別します。
現在のフランスの国家首都は外務省の基礎データでパリと確認でき、この町を現在の国家首都としては扱いません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ディジョン
所属国
フランス
欧文名
Dijon
暫定制定都市名
第戎
制定区分
第戎――既
制定状態
暫定制定・原典継続調査
現代の使用例を根拠にした本誌の暫定採用です。日本語の歴史表記として確定したものではありません。
採らなかった表記と未解決点
三字の第戎市は、自治体の種類を添えた説明形としては理解できますが、制定都市名そのものには採りません。また、第戎の二字の意味を結んで、この町の来歴や性格を説明することもしません。字義を読むことと、地名の選字理由を実証することは別の作業です。
残る課題は、日本語の歴史的漢字表記、初出・選字者、他地域での対応形、現地音声です。今回は公的な掲載文で確認できる既存形として、第戎を暫定採用します。古い大学名を現在の制度名に読み替えないことも、この用例を再利用するときの注意点です。
参考資料
- France.fr「ディジョン」。2013年11月20日公開、2024年1月29日更新。
- 中国在リヨン総領事館「法国留学注意事项」。本文表示2006年10月11日、公立大学一覧19番、別の学校一覧23番。
- INSEE「Populations de référence 2023」Dijon自治体人口表。POPREF T1、自治体人口・別計上人口・総人口。
- INSEE「Populations de référence 2023」版の説明。2025年12月版、2025年12月29日公開。
- 外務省「フランス基礎データ」。2026年7月31日、一般事情「首都」。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第百七十九号
次は、確認済みの人口基準の掲載順に従い、**アンジェ(Angers)**を取り上げる予定です。日本語名と、資料で確認できる漢字表記を比べます。
