八拠点の後ろに、一つの図書館
前号クペテ・ベナで読んだトーゴ文化省の記事には、八つの新しい読書・文化活動センターに続き、Djonの関連図書館が記されていました。八拠点の九番目として数えるのではなく、別の施設区分で添えられた地名です。
今回は、このDjonを取り上げます。日本語の索引用には、綴りからジョンと暫定転写します。短い名ですが、漢字を二字にすれば読みがそのまま整うわけではありません。
候補には、前号と同じ滝の調査に登場するGbalédjéも残しました。こちらには観光省の調査発表があり、自然地形の名と集落名の照合に調べる価値があります。Djonでは、現在の図書館名に加え、1963年官報の学校投票所、2015年官報の所属県を回収できました。異なる用途の公的記録で同じ地名を追えることを優先しました。人口表の順位で選んだものではありません。
1963年官報の学校投票所
『JOURNAL OFFICIEL DE LA REPUBLIQUE TOGOLAISE』1963年4月30日号の印刷265頁(PDF15頁)左欄に、Bureau no 34 DJONがあります。設置場所の欄はEcole、対象地域の欄にはDjon, Kotora, Djitriamé, Tchakpaliが並びます。文字抽出では読めなかったため、原頁画像で三つの欄を確認しました。
この記録から分かるのは、当時Djonという名の投票所があり、学校を設置場所とし、周辺の地名とともに対象地域を列挙していたことです。学校の創立年、村の創建年、地名の初出年までは分かりません。
同じ頁の右欄には、既刊バドゥの投票所群、前号のKPETE-BENA I・IIも載っています。前号から引き継いだ地名を、今度は同じ投票所一覧の中で見つけられました。読書施設だけでなく、行政の記録にもつながりがあります。
ただし、投票所の対象地域は集落の境界と同じとは限りません。Djonの行にある四地名を、一つの町の別名としてまとめることもしません。
県名を添えて読む
2015年6月28日のトーゴ官報の印刷16頁(PDF16頁)は、カントンの長への手当を掲載する一覧です。**PREFECTURE D'AKEBOU (KOUGNOHOU)**という見出しの下に、Djonがあります。原頁画像で見出しと行の所属を確認しました。
ここでDjonはアケブ県の一覧にある地名として読めます。カントンという行政単位の名と、集落の名を区別しておく必要があります。同じ見開きの近くにあるWawa県の一覧にはKpété-Bènaもあり、二つの地名が同じ県に属するわけではないことも確認できます。
官報の人名を地名の命名者とする根拠はありません。また、2015年の役職や行政区分を、そのまま現在の人物・境界の説明へ移すこともしません。
関連図書館は、八つのCLACとは分ける
文化省の2024年2月27日記事は、Amou-Oblo、Danyi-Apéyémé、Kpalimé、Kpété-Béna、Anié、Tohoun、Défalé、Mangoという八拠点を挙げ、その後にDjonの関連図書館を記しています。
本誌で取り上げた町が並ぶネットワークですが、記事はDjonを八つのCLACと同列に数えていません。「Djonにも読書施設への言及がある」と「Djonが八つの新設センターの一つである」は別の説明です。今回は前者だけを採ります。
1963年には学校を投票所の場所として、2024年には関連図書館の所在地として、この名が現れます。ただし両施設が同じ建物であることや、学校が図書館に転用されたことを示す資料は得られていません。地名の継続と、施設の継続を分けて読みます。
ジョンという転写の範囲
今回の検索では、トーゴのこの地名へ直接使われる日本語のカタカナ用例を確認できませんでした。人名などのDjonに付された日本語表記は、この集落の読みの証拠として採りません。
本誌ではDjonのdjをジョに対応させ、末尾のnをンで示す、索引用の暫定転写ジョンを置きます。これは綴りを日本語側で整理する判断であり、公的資料が日本語の読みを指定しているわけではありません。
現地話者による地名全体の音源は未聴取です。現地語、母音の鼻音化、末尾子音の実現、声調、母音の長短は未確認です。フランス語の一般的な綴りの読み方だけで、この土地の発音を確定しません。語源と命名者も継続調査です。
日本語の直接用例や現地音源を得た際には、カタカナと漢字案を一緒に見直します。
欧文の古い用例と、漢字先例
1963年のDjonは年代の確かな欧文地名用例です。しかし日本語の歴史的漢字表記ではありません。日本語の漢字名は現時点では原典未確認として残します。
中国大陸・台湾の公的資料で、この地名に直接対応する漢字形も今回確認できませんでした。取得したGeoNamesのRDFにも漢字別名はありません。調べた範囲で未確認ということであり、世界の全資料に先例が存在しないと証明したわけではありません。
以下は日本語の索引に使うために本誌が比較する創案です。中国語圏の実用形や歴史的な名称として扱いません。
二字・三字の創案を比べる
助恩
助のジョと、恩のオンを手掛かりにする二字案です。ただし普通に字音を連結すればジョオンであって、ジョンを自動的に再現しません。全体への指定読みが必要です。助の字義を図書館支援や地名の由来へ結びつける根拠もありません。
序音
序のジョ、音のオンを手掛かりにする二字案です。こちらも通常字音はジョオンです。音という字から、現地の音声を確認済みであるかのような説明は付けられません。
序於恩
ジョ・オ・オンという手掛かりを三字へ分ける案です。しかし、確認できていない母音を増やすことになり、三字という形式のために採る理由がありません。暫定日本語名ジョンの表示には不採用とします。
序恩
序のジョと、恩のオンを目印にして、二字全体の指定読みをジョンとする案です。助恩と同じく通常字音だけでは読めません。今回は、支援という連想を誘いやすい助や、音の確認を連想しやすい音を避け、序恩を暫定選定します。
この選字は本誌の表示上の判断であり、序や恩の字義が土地を説明するものではありません。短い地名だから一字へ削ることも、二字・三字を満たすためだけに音を付け足すこともしません。二字案にも指定読みが必要という限界を残します。
代表点と、県全体の人口
GeoNames 2367047の公式RDFは、主名称をDijon、別名の一つをDjonとし、国コードTG、居住地分類P.PPL、北緯7.73333度・東経0.78333度を示します。このレコードを索引用の代表点として使います。
主名称がDijonであることを、フランスのディジョンと同じ対象であるという説明へ移しません。国コードと別名を併せて確認し、本稿の見出しにはトーゴ官報と文化省が使うDjonを保持します。代表点は集落・カントンの境界や図書館の住所を示すものではありません。
INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.15、印刷22頁(PDF40頁)では、アケブ県全体の2022年人口は73,830人です。男性37,236人、女性36,594人の合計も一致します。原頁画像で県行とAkébou 1・2の自治体行を区別しました。
これはDjonの集落人口ではありません。 所属県という行政地域の人口として保持し、カントン人口や町人口へ読み替えません。集落単独の人口は未確認です。外務省の基礎データが示す国の首都はロメです。
万国漢字志の暫定案
暫定日本語都市名
ジョン
原綴り・所属国
Djon/トーゴ
暫定制定都市名
序恩
指定読み
ジョン
制定区分
序恩――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
日本語名は綴りによる暫定転写、二字の漢字形は本誌の新案です。現地音の精密転写ではなく、一字略称も制定しません。
採らなかった表記と未解決点
助恩・序音は残案、序於恩は暫定日本語名に対する案として不採用です。日本語直接用例、漢字先例、現地音源が得られれば、序恩の指定読みも再検討します。
学校と図書館の正確な所在地・沿革、集落とカントンの境界、集落人口、語源、命名者は未確認です。1963年の学校投票所、2015年のカントン一覧、2024年の関連図書館を、一つの施設の歴史へまとめないことが今回の照合の条件です。
参考資料
- トーゴ官報、1963年4月30日、第218号。印刷265頁(PDF15頁)、Bureau no 34 DJON。原頁画像確認。
- トーゴ官報、2015年6月28日、第17号。印刷16頁(PDF16頁)、アケブ県のカントン一覧。原頁画像確認。
- トーゴ観光・文化・芸術省、読書センター第二ネットワーク、2024年2月27日。八拠点とは分けて記されたDjonの関連図書館。
- 同省、Kpètè BènaとGbalédjéの滝の実現可能性調査、2021年12月30日。未収録候補Gbalédjéの比較資料。
- GeoNames 2367047公式RDF。Dijonと別名Djon、TG、P.PPL、代表点を直接取得。
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』。表3.15、印刷22頁(PDF40頁)、アケブ県全体の人口。回収済みPDFの原頁画像確認。
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」。首都ロメ。
(2026年10月14日閲覧。現地音源の聴取は未実施。)
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百十六号
Gbalédjéの滝の調査と、今回の官報に現れるKougnohouなどの地名を比較します。自然地形・行政単位・集落の違いを確かめ、既刊につながる一次資料を回収して次の対象を選びます。
