万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百十八号|デュースブルク――会議録のカタカナと、四字を残す理由――

1998年の国会会議録にあるデュースブルクと、港務集団視察報告の杜伊斯堡を比較する。日本語歴史漢字は未確認とし、原文四字を保つ例外理由と読みの限界を示す。


サッカーの思い出に現れる都市名

1998年5月6日の衆議院文教委員会会議録には、長沼健参考人が西ドイツでの経験を語る発言があります。その中で繰り返される町の名がデュースブルクです。宿泊しながら学んだスポーツ施設の話に、カタカナの都市名が現れます。

中国語の公的報告で港務集団への訪問を読むと、この町は杜伊斯堡。漢字は四字です。二字・三字を標準とする本誌でも、短くする理由が確かめられないなら、四字を残す選択を考えます。


歴史表記

デュースブルクの日本語の歴史的な漢字表記は、現時点では原典未確認です。 国会会議録の電子テキストで確認したのは、1998年のカタカナの用例です。これを明治期の地理書の漢字表記や、漢字の初出を確認した資料とすることはできません。

発言の中には1960年代から1970年代にかけての経験が出てきます。しかし、それは参考人が回想している時期です。用例を確認した会議録の日付と、回想の対象時期を分け、1960年代の紙面にこのカタカナを見つけたとは書きません。

杜伊斯堡の漢字を誰がいつ選んだのか、日本語の刊本にどう載ったのかは未確認です。発言者を漢字の命名者とする根拠もありません。


日本語での用例

国立国会図書館の国会会議録検索システムで、第142回国会・衆議院文教委員会第8号、1998年5月6日、発言160・長沼健を確認しました。デュースブルクにあるスポルツシューレを利用した経験を語る箇所で、町の名がカタカナで記録されています。

ここで確かめたのは会議録の電子テキスト本文です。発言の録音や印刷原本の紙面と照合したものではありません。また、そこで述べられた施設の設備や評価を、現在の都市紹介へそのまま移しません。

本誌の現代日本語都市名はデュースブルクとします。カタカナの確認には具体的な発言箇所を挙げられますが、漢字の歴史表記については別の資料を要します。


中国語圏その他の表記との比較

中国外交部の「驻杜塞尔多夫总领事余勇考察杜伊斯堡港务集团」は、本文で港務集団への視察を報告し、都市を杜伊斯堡市と記しています。

表示日は2025年9月6日、本文の視察日は9月5日。URLに含まれる9月8日と取り違えません。見出しにある組織名だけでなく、本文で都市名として用いられている点も確認できます。

今回の本誌案は、その杜伊斯堡を字形も順序も変えずに用います。日本語の歴史的な漢字用例を発見したためではなく、現代中国語の使用例を確認できたためです。台湾を含めた全地域での用字や、漢字の命名者まではこの報告から分かりません。


二文字・三文字案の比較

杜堡

二字へ縮める本誌の比較案です。杜と堡を残すと、原文の伊・斯を落とすことになります。「ト」「ホウ」と読んでも、デュースブルクの途中の音を十分に示せません。

この二字を既存の略記として確認したわけではありません。短いという理由だけでは、元の四字から二字を取り除く判断を支えられません。

杜伊堡

三字に収めるため、斯を落とす本誌の比較案です。二字案より原文の形は残りますが、用例で確かめていない省略である点は変わりません。「ト・イ・ホウ」という通常の読みも、デュースブルクの音にはなりません。

杜伊斯堡

確認した現代中国語の四字を保つ案です。出典の文字列と一対一で対応でき、短縮という新たな操作を加えずに済みます。

本誌の標準である二字・三字から外れますが、今回は四字を保つ例外とします。ただし杜・伊・斯・堡を普通の日本語の音読みで並べても、デュースブルクとは読めません。四字を残すことを音の問題の解決とはせず、デュースブルクの読みを添えます。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

デュースブルク

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

杜伊斯堡

暫定制定都市名

杜伊斯堡――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

確認した現代中国語の杜伊斯堡を字形も順序も変えずに用いるため「既」とします。日本語での伝統的な漢字表記と認定したものではありません。

人口はドイツ連邦統計局(Destatis)の自治体一覧年次版による、2025年12月31日現在500,810人です。人口・自治体境界の基準日はともに同日で、2026年8月版を用います。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計の総人口です。対象はDuisburg, Stadtの自治体全体であり、都市圏や周辺自治体を合算した人口ではありません。住民登録簿の別集計も代用しません。


採らなかった表記と未解決点

杜堡と杜伊堡は、本誌の比較用の案として残します。既存の略称として確認しておらず、文字数に収めるためだけに採用することは見送りました。採用する杜伊斯堡も、日本語で広く使われる伝統表記と認定したものではありません。

国会会議録の印刷原本との照合、日本語の古い漢字用例、漢字の初出と選字者の調査は残っています。回想の内容と、文字が確認できる資料の日付を分けることも必要です。

四字を残すのは、いま説明できる出典との対応を優先した暫定判断です。根拠のある短縮形や日本語の歴史用例が見つかれば、その資料と読みを確かめて再検討します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百十九号

次回はボーフムを予定しています。人口基準の掲載順に沿って、日本語の用例と漢字表記の根拠を確認します。