万国漢字志

都市篇 · セネガル

万国漢字志 都市篇 第五十七号|エフィサオ――畑の近くへ移った小村を三字「埃菲薩」へ

エフィサオはセネガル南部ムロンプ・コミューンの小集落。ルディア・ウォロフから移ったイスラーム教徒が畑の近くの土地を求めて築いたと記録され、2023年国勢調査では71人が暮らす。

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畑の近くへ移った人びと

都市篇第五十七号は、セネガル南部の小集落、エフィサオです。

セネガル国家統計・人口経済分析庁(ANSD)の2023年国勢調査は、集落名をEFFISSAOと記します。歴史研究ではEfissao、国土整備庁(ANAT)の地図ではFissawという綴りが現れます。

前号のルディア・ウォロフとは、近さだけでなく創設の歴史でも結ばれています。歴史学者ロバート・M・バウムは、ルディア・ウォロフから移ったイスラーム教徒の集団が、トウジンビエとラッカセイの畑に近い場所で暮らすために築いた村と記しています。

日本語や中国語でこの村を直接指す既成の漢字名は確認できませんでした。本稿では、集落の歴史、現代の人口と位置、表記調査を分けて示したうえで、本誌独自の三字案を比較します。


Efissao、EFFISSAO、Fissaw

資料ごとに綴りは一致していません。

バウムの著書はEfissao、ANSDの国勢調査はEFFISSAO、ANATの縮尺20万分の1地図はFissawを用います。

ANATのFissawは、ムロンプ・コミューン内でルディア・ウォロフとカニョットに近い村として置かれています。本稿では行政区分、位置、音の対応を照合して、ANSDのEFFISSAOと同じ集落を指す表記差として扱います。ただし、二つの綴りを一対一で結ぶ行政機関の対照表は確認できていません。

日本語見出しには、既刊の次回予告で用いたエフィサオを採ります。これは現代日本語で広く定着した標準名だと主張するものではなく、Efissaoの音を示すための本誌のカタカナ表記です。


1868年までに土地を求める

バウムは、エフィサオをルディア・ウォロフから移ったイスラーム教徒の集団が築いたと記します。移住の理由は、トウジンビエとラッカセイの畑に近い場所で暮らすことでした。

彼らは1868年までに、カニョットのEyehow地区の長老たちを訪ね、土地を求めたとされます。この記述から確定できるのは、その時点までに土地を求める動きがあったことです。1868年を村の創設年と断定したり、一日の出来事のように扱ったりはできません。

資料は創設者を個人名ではなく集団として記します。したがって、都市一覧に特定の創設者名や命名者名は置きません。土地を求めた集団、土地を認めた長老たち、Efissaoという地名を最初に定めた人物は、同じものではありません。


ルディア・ウォロフとの共通点と違い

エフィサオの住民は、ルディア・ウォロフのイスラーム教徒と同じく、ジョラ女性との婚姻を重ねたと記録されています。一方で、ジョラの祭祀施設を村の宗教生活へ取り込まなかったともされます。

男性の割礼儀礼にも違いがありました。バウムによれば、エフィサオでは近隣村に見られる長期の隔離を行わず、参加者は自宅で眠りました。

さらにバウムは、ルディア・ウォロフ、エフィサオ、サム・サムをティジャーニーヤ教団の影響が強い村としてまとめています。ただし、十九世紀の宗教実践を記した研究から、現在の全住民の信仰や民族構成を推定することはできません。

この村の重要さは規模の大きさではなく、移住、農耕、婚姻、宗教実践が近隣社会との関係をどう形作ったかを具体的に示す点にあります。


公式統計の人口71人

ANSDの2023年国勢調査では、EFFISSAOは71人です。内訳は男性29人、女性42人、15世帯、15コンセッションと記録されています。

これはジガンショール州ウスイ県、ルディア・ウォロフ郡、ムロンプ・コミューン内の一集落行に示された値です。郡やコミューン全体の人口ではありません。

過去の一般資料には2002年の32人という数字も見られますが、本稿の一覧値には、出所と集計年を直接確認できるANSDの2023年値を採ります。異なる年の二つの数字から単純な人口増加率は計算しません。


Fissawの座標を採る

ANATの公式KMLは、Fissawを村に分類し、北緯12.519438513度、西経16.621865361度付近に置きます。

都市一覧には小数第六位へ丸めた北緯12.519439度、西経16.621865度を採用します。これは地図上の集落代表点であり、村域の境界や特定の建物を測量した座標ではありません。

エフィサオは国の首都ではありません。セネガルの首都はダカールです。公式サイトの「首都」欄は「いいえ」とし、集落であることを要約と人口範囲に明記します。


日本語と中国語の直接用例は未確認

国立国会図書館サーチを、Efissao、Effissao、Fissaw、エフィサオで確認しましたが、このセネガルの村を指す書誌用例は採録できませんでした。

検索結果が0件であることは、過去に漢字表記が一度も使われなかった証明ではありません。現時点で対象を直接指す日本語原典を示せないため、歴史的な日本語漢字表記は未確認として記録します。

台湾政府の外国地名訳名データと、中国語圏の公的資料も照合しましたが、EfissaoまたはFissawに対応する都市名表記は確認できませんでした。検索語から機械的に作れる中国語風の文字列を、既成表記として扱うことはしません。

このため、以下の候補はすべて万国漢字志が比較のために組んだ案です。日本語史料、中国語の標準地名、現地で使われる文字表記のいずれでもありません。


二字・三字案を比較する

埃菲薩

三文字です。埃をエ、菲をフィ、薩をサに対応させます。エフィサオの最初の三つの音のまとまりを残し、末尾のオを省きます。

埃、菲、薩の字義は、村の語源や歴史を表しません。前号までと同じく、意味を作るためではなく音の手掛かりとして置く字です。三字の索引名として短く、カタカナ名との対応を最も説明しやすい点を評価します。

埃菲薩澳

四文字です。末尾に澳を置けば、エ・フィ・サ・オの四つを残せます。しかし、澳は通常オウと読み、海辺や入り江を連想させる字でもあります。集落の語源を示す根拠はなく、二字・三字を主流とする索引にも合わないため採りません。

艾菲紹

三文字で、艾・菲・紹を中国語式の音写に近い候補として並べた形です。ただし、この三字がエフィサオを指す中国語の直接用例は確認できません。日本語ではエフィサオと自然に読めず、中国語の既成名に見える危険があるため採りません。

恵菲佐

三文字で日本語の音に寄せる案です。しかし、恵と佐が持つ好意的な字義から、村の由来にない物語を読み込ませやすくなります。史料根拠のない美称を避けるため採りません。

今回は、三字で原名の冒頭を順に残す埃菲薩を選びます。末尾のオを省く短縮形であり、完全音写でも既成表記でもないことを明記します。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、三字の埃菲薩を採ります。

制定区分は創です。日本語の歴史的漢字名を復元したものでも、中国語圏の既成都市名を日本字体へ直したものでもありません。エフィサオという本稿のカタカナ名から、万国漢字志が三字へ縮約した音写案です。

歴史研究が示すのは、ルディア・ウォロフから移ったイスラーム教徒の集団と、土地を求めた経緯です。集団の個人名、Efissaoという地名の語源と命名者、埃菲薩という漢字表記の特定個人による命名記録はありません。

今後、日本語・中国語の直接用例、現地語での発音と語源、Efissao・EFFISSAO・Fissawの表記関係を示す公的な対照資料が確認できた場合は、見出し名、制定形、区分を再検討します。


万国漢字志の暫定案

本稿で用いる都市名

エフィサオ

所属国

セネガル

公式・研究資料で確認した綴り

Efissao/EFFISSAO/Fissaw

歴史的な日本語漢字表記

未確認

信頼できる中国語の都市名表記

未確認

創設者

ルディア・ウォロフから移ったイスラーム教徒の集団・個人名は未確認

地名・漢字表記の命名者

未確定

暫定制定都市名

埃菲薩――創

制定状態

暫定制定・日本語原典、中国語の都市名直接用例、現地語発音、語源と表記関係を継続調査


採らなかった表記と未解決点

埃菲薩澳は音を多く残しますが四文字で、澳の読みと字義にも余分な連想があります。艾菲紹は中国語式に見えますが直接用例がなく、恵菲佐は字義が前面に出ます。

採用した埃菲薩も末尾のオを省き、各字を通常の日本語音読みだけでエフィサと読めるわけではありません。短い索引形としての利点と、音の省略という弱点を併記します。

未解決点は、村の正確な創設時期、創設者集団の個人名、Efissaoという地名の語源と命名者、現在の民族・宗教構成、日本語と中国語の都市名直接用例です。

また、ANSDのEFFISSAOとANATのFissawを直接結ぶ行政機関の対照表は未確認です。人口71人はANSDの一集落行、座標はANATのFissaw代表点に基づくため、異なる資料の綴りを混同しないよう記録を残します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第五十八号

次は、サム・サムです。

ポルトガル領ギニアでの戦いに参加したトゥクロール人イスラーム教徒が築いたと記録される村をたどります。