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都市篇 · セネガル

万国漢字志 都市篇 第四十九号|エリンキン――自動翻訳の「意林肯」をどこまで採れるか

エリンキンはセネガル南部、カザマンス川河口域にある漁業の村。カラバネ島への渡航拠点であり、十九世紀の交易記録にも名を残す。

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カラバネ島への対岸の村

都市篇第四十九号は、セネガル南部の村、エリンキンです。

前号で扱ったカラバネ島へは、対岸のエリンキンからピローグと呼ばれる舟で渡れます。カザマンスの観光事業者団体による案内は、エリンキンからカラバネまで約三十分としています。ただし、固定された公的時刻表は確認できないため、本稿では便数や発着時刻を案内しません。

台湾の旅行予約ページには、所在地を、

意林肯

とする表示があります。ところが、そのページ自身が、掲載情報は自動翻訳されている可能性があると注意書きを出しています。

機械翻訳を含み得る直接用例を、都市の漢字名に採ってよいのか。今回は、文字列が存在することと、表記が定着していることを分けて考えます。


日本語の公的資料は「エリンキン」

国際協力機構(JICA)の2003年報告書は、ジガンショール州で計画対象となった五か所の一つにエリンキンを挙げています。行政区分の表にも、ジガンショール州、ウスイ県のElinkineとして収録されています。

同じ漁業資源調査の2006年最終報告書にも、漁村調査の対象としてエリンキンが現れます。日本の公的機関が同じ対象を複数年にわたってこの形で記しているため、本稿と都市一覧ではエリンキンを用います。

一方、国立国会図書館サーチでは、エリンキンまたはElinkineを収録した日本語書誌を確認できませんでした。今回調べた政府・研究機関の公開資料にも、日本語による歴史的な漢字表記は見つかっていません。未確認は不存在の証明ではないため、歴史表記は未収録とします。

在セネガル日本大使館の別資料には、コルダ州の地名として「エリンキン」が現れます。しかし、これはギニア国境付近の会合場所であり、ジガンショール州ウスイ県の本稿の村とは一致しません。同じカタカナだけを理由に、別の場所の記録を根拠へ混ぜません。


ElinkineとElinkin、そしてÉlenkine

セネガルの2023年国勢調査と2024年選挙資料は、現在の村名を大文字のELINKINEと記します。公式地理データでもElinkineです。

歴史資料では綴りが揺れます。フランス海外公文書館の目録には、1851年3月25日にエリンキンで結ばれた二つの条約が登録され、一方はÉlenkine、もう一方はÉlinkineと索引されています。十九世紀の交易を扱う研究には、末尾のeを省いたElinkinも現れます。

GeoNamesはElinkindeを主見出しにしていますが、セネガルの現行公的資料がElinkineを用いるため、本稿ではElinkineを基準にします。近くにあるÉfrane Elinkineという別集落とも区別します。

これらは欧字綴りの変異であり、日本語の漢字表記ではありません。日本語の歴史的漢字形としては登録しません。


2023年国勢調査で3,036人

セネガル国家統計・人口経済分析庁(ANSD)の2023年国勢調査は、ELINKINEを村・地区・小集落の単位で収録し、人口3,036人を掲げています。

内訳は男性1,806人、女性1,230人、794世帯、371コンセッションです。行政階層は、ジガンショール州、ウスイ県、ルディア・ウォロフ郡、ムロンプ・コミューン、エリンキン集落となっています。

同じANSDの検索結果には1988年616人、2013年2,870人もあります。ただし、各国勢調査で集計境界が同じだったかは確認できません。数字の増減だけから、人口移動や漁業者の定住を説明することは避けます。

一部の報道には、村のガーナ系住民だけで約4,000人という非公式推計もあります。2023年国勢調査の集落総人口を上回り、範囲を比較できないため、都市一覧の人口には使いません。


公式地図では「重要な村」

セネガル国土整備庁の公式KMLは、ElinkineをVillage important、重要な村に分類しています。登録点は北緯12.50599147425975度、西経16.66268576431876度です。

本稿では小数第六位へ丸めた北緯12.505991度、西経16.662686度を使います。縮尺20万分の1の地理データであり、多数の小数桁が測量上のセンチメートル精度を意味するものではありません。

エリンキンは現在の州都、県都、郡庁所在地ではありません。州都はジガンショール、県都はウスイ、郡庁所在地はルディア・ウォロフです。ムロンプ・コミューンの庁所在地を明示する一次資料は今回確認できなかったため、エリンキンをコミューンの首府とも書きません。

村からカラバネ島へ舟が出ることと、両者が同じ行政区画に属することも別です。エリンキンはムロンプ・コミューン、カラバネはディエンベリング・コミューンに属します。


漁業移住と十九世紀の交易

カザマンスの水域利用を研究したマリー=クリスティーヌ・コルミエ=サレムは、十九世紀前半、サマティットの土地にイトゥ出身のディオラ・カロンが定住し、漁業移住と交易を通じてエリンキンが発展したと説明しています。これは後世の学術的再構成であり、同時代の創建文書そのものではありません。

フランス海外公文書館の目録は、1851年3月25日、エリンキンで二つの条約が結ばれたことを記録しています。目録から条約の存在と索引名は確認できますが、本稿では未閲覧の手稿本文の内容まで推測しません。

別の研究は、十九世紀前半のElinkinにイギリス商館があったと述べ、1850年のベルトラン・ボカンデ報告を参照しています。現在の舟着き場だけでなく、漁業と交易が重なった歴史を持つ村として読むことができます。

1922年には、カッサ地方の行政区画にエリンキンの名を持つカントンが置かれたとの研究もあります。ただし、同名カントンの存在は、現在の村が首都や郡庁所在地であることを意味しません。


Lincolnか、Elen Kingか、地域語か

地名の由来には複数の説明があります。

十九世紀の交易史を扱う研究は、Elinkinの語源をLincolnに結びつけています。1850年の報告を参照する説明であり、文献上たどれる有力説の一つです。

一方、村長への取材を載せた記事は、シエラレオネ人商店主Elen Kingの名に由来する説と、ディオラ語のhulinkineに由来する説を併記しています。大学の地域研究にも、Elaine Kine、Houlinkine、石や祭祀に関わる説明など、さらに異なる語りが記録されています。

人名の綴り、出身地、地域語説が一致しないため、一つを確定語源とはしません。創建者や初代村長として伝わる人物も、現在名を実際に定めた命名者とは確認できません。都市名の命名者は未登録とします。


中国語表示が一つに定まらない

台湾の旅行予約ページは、Elinkine村落営地という宿の所在地を、

塞內加爾, 意林肯

と表示しています。ページ内には住所としてElinkine、Elinkin、Casamanceも併記され、対象の村であることは確認できます。

しかし、同じページは、宿泊情報が自動翻訳ツールで翻訳されている可能性を明記しています。中国、台湾、香港の政府機関、通信社、大学、図書館・用語機関では、対象村の公的または学術的な中国語名を確認できませんでした。

別の中国語化された旅行記事は、同じページの中だけでも埃林金、易林金、易尔金を使い分けています。台湾向けAirbnbの検索収録文には埃林基內も見えますが、本文を再取得できず、独立した根拠として採用できません。

この揺れは、中国語表記が定着していないことを示します。検索結果に漢字が出たというだけで、政府標準や慣用名とは扱えません。


三字「意林肯」を暫定案にする理由

意林肯

三文字です。対象村の宿泊施設ページで所在地として直接使われ、Elinkine/Elinkinの原綴りとも対応します。ただし、自動翻訳を含み得る商用表示です。

埃林金

三文字です。対象村からカラバネへ渡る旅行記事の表題に現れます。しかし、同じ記事内で易林金、易尔金へ揺れ、安定した表記とは言えません。

埃林基內

四文字です。検索収録文に一例がありますが、出典本文を確認できません。都市索引の根拠には採りません。

二字形

エリンキンを直接指す二字形は確認できませんでした。三字・四字の末尾を機械的に落として、資料にない略称を作ることはしません。

今回は、対象を直接指す三字形のうち、原綴りと所在地を同じページで照合できる意林肯を暫定案とします。ただし、意林肯を公的中国語名や既に定着した慣用名として採録するものではありません。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、三字の意林肯を採ります。

制定区分は創とします。日本語の歴史的漢字名を復元するのではなく、自動翻訳を含み得る商用ページの直接用例を、出典の限界を明示したうえで万国漢字志の日本語都市索引へ取り込むためです。意林肯という文字列自体を本稿が初めて作った、という意味ではありません。

この採用は、信頼できる中国語標準名が見つかるまでの暫定措置です。公的または学術的な表記が確認できた場合は、制定形と区分を再検討します。

漢字形を最初に選んだ人物や翻訳システム、時期は確認できません。旅行会社や宿泊情報の配信元を命名者とみなすこともできないため、漢字表記の命名者は未確認とします。


万国漢字志の暫定案

本稿で用いる都市名
エリンキン

所属国
セネガル

商用ページで確認した表示
意林肯

暫定制定都市名
意林肯――創

制定状態
暫定制定・自動翻訳由来の可能性を含み、公的中国語名と日本語原典を継続調査


採らなかった表記と未解決点

埃林金、易林金、易尔金は同じ中国語化旅行ページ内で揺れており、安定した直接用例ではありません。埃林基內は検索収録文しか確認できないため採りません。二字形は直接用例がなく、作りません。

未解決点は、日本語の歴史的漢字表記、信頼できる中国語公称、意林肯を生成した翻訳主体と初出、地名の語源、都市名と漢字形の命名者です。

人口3,036人は2023年国勢調査の集落行です。漁業者、季節滞在者、近隣集落まで含む非公式推計とは混ぜません。座標は公式KMLの集落点であり、舟着き場の桟橋やムロンプ・コミューンの境界中心を示すものではありません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第五十号

次は、ムロンプです。

エリンキンが属するコミューンの名をたどり、高床式・二階建て住居で知られる村の記録と漢字表記を調べます。