万国漢字志

都市篇 · セネガル

万国漢字志 都市篇 第五十五号|エルディア――Loudia Diolaとアタ・エスの伝承をたどり三字「埃瑠迪」へ

エルディア(公式名Loudia Diola)は、セネガル南部ムロンプ・コミューンの小集落。五つの慣習王国の一つで、伝承上の創建者アタ・エスと祭祀の森を伝える。

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エルディアとLoudia Diolaは同じ村

都市篇第五十五号は、セネガル南部の集落、エルディアです。

地域研究ではEloudia、現在のセネガル公的資料ではLoudia Diolaと書かれます。どちらも、ジガンショール州ウスイ県、ルディア・ウォロフ郡ムロンプ・コミューンに属する同じ村を指します。

近くにはLoudia OuolofまたはLoudia Wolofという別の村があります。こちらは郡庁所在地です。名前が似ていても、人口も行政上の役割も異なります。

エルディアは、ムロンプ地域に伝わる五つの慣習王国の一つでもあります。ただし、ここでいう王国は現在の独立国家や行政区分ではなく、地域の儀礼と社会組織を支える伝統的な枠組みです。

日本語や中国語でこの村を直接指す既成の漢字名は確認できませんでした。本稿では、綴り、人口、位置、伝承を分けて確かめたうえで、本誌独自の三字案を組みます。


1891年のEloudia、1896年のLoudia Diolla

フランス海外科学技術研究所が再録した植民地期の人口資料には、1891年の地名としてEloudiaが現れます。同じ行にはEssaneという名もありますが、これは人名・首長名を置く欄の記載です。地名の一部として「Eloudia Essane」という複合名があったとは扱いません。

1896年の一覧では、村名はLoudia Diollaと記録されました。そのすぐ近くにLoudia Ouoloffが別項目として並びます。十九世紀末の時点で、ジョラ側の村とウォロフ側の村が分けて記録されていたことが分かります。

Diollaは、現在一般にJolaまたはDiolaと書かれる民族名の歴史的綴りです。OuoloffもWolofの旧綴りです。したがってLoudia DiollaとLoudia Ouoloffは、同じ村の表記揺れではありません。

EloudiaからLoudiaへ綴りが変わった理由や時期は、今回の資料だけでは確定できません。先頭のEを単純な誤記と決めず、慣習上の地域名Eloudiaと行政上の村名Loudia Diolaが併存するものとして扱います。

これらはラテン文字による歴史記録です。日本語の漢字表記ではないため、歴史的漢字表記欄には入れません。


隣村Loudia Ouolofとは別

現在のセネガル国家統計・人口経済分析庁(ANSD)の国勢調査でも、LOUDIA DIOLAとLOUDIA OUOLOFは別々の集落です。

国土整備庁の地理データも、Loudia Diolaを「孤立集落」、Loudia Wolofを郡庁所在地として別の座標へ置いています。2024年の選挙地図でも両方の名称を確認できます。

本稿の人口265人と座標はLoudia Diolaのものです。Loudia Ouolofの人口や位置を混ぜていません。

日本語表記は慣習名Eloudiaに沿ってエルディアとします。公式行政名を示すときはLoudia Diolaを併記します。次号で扱う予定のLoudia Ouolofは、ルディア・ウォロフとして区別します。


公式地図と人口265人

セネガル国土整備庁の縮尺20万分の1の公式KMLは、Loudia Diolaを北緯12.533612度、西経16.605373度付近に置きます。地物の種類は「孤立集落」です。

都市一覧の座標には、この公式KMLの点を小数第六位へ丸めて採用します。村域の境界や中心を測量した値ではなく、地図上の集落代表点です。

ANSDの2023年国勢調査では、Loudia Diolaは265人です。内訳は男性135人、女性130人、57世帯、48コンセッションと記録されています。

この265人は国勢調査が一つの集落行として示す値です。大都市圏人口ではありません。都市一覧でも人口範囲を集落と表示します。

2013年の資料には周辺の小集落を分けた行があります。2023年表との境界が同じか確定できないため、二つの年を直結して人口増減を計算しません。

セネガルの首都はダカールです。エルディアは国の首都ではありません。ルディア・ウォロフ郡の郡庁所在地も、別村のLoudia Wolofです。


伝承上の創建者アタ・エス

歴史学者ロバート・M・バウムは、エスラル地域の口承として、アタ・エス(Atta-Essou)がエルディアを創建したと伝えられることを記しています。地域史研究者フィリップ・メゲルも、アタ・エスを「伝説上の創建者」とし、その村が現在のエルディアに当たると説明します。

これは、この地域で記憶されてきた重要な創建伝承です。一方で、年代を確定できる同時代文書に基づく人物伝ではありません。アタ・エスを近代的な意味で実在が立証された都市計画者や行政上の設置者とはしません。

また、村を創建したという伝承と、Eloudiaという地名を初めて作ったという証明は別です。アタ・エスを伝承上の創建者として記録しますが、地名の命名者や漢字表記の命名者としては登録しません。

1891年資料のEssaneも、アタ・エスと同一人物だと示す根拠はありません。似た綴りだけで結びつけないことが必要です。


五つの王国と祭祀の森

ムロンプ・コミューンの植物利用を調べた研究は、地域の五つの慣習王国として、カジノル、ムロンプ、エルディア、カニュト、サマティットを挙げています。王は社会の結束と平和を守る役割を持つと説明されます。

エルディアには、王権に関わる祭祀の森Kalème Bakineがあります。ジガンショール大学の研究は、村の南側に位置する約6.62ヘクタールの森として記録し、大木を含む密な植生を報告しています。

祭祀の森は、単なる未利用地ではありません。信仰、社会規範、生物多様性が重なる場所です。公開された研究から位置の概略と面積は分かりますが、儀礼上公開すべきでない知識まで推測しません。

周辺では稲作、漁、ヤシ酒の採取、森林資源の利用が生活を支えます。ただし、今回確認した資料からLoudia Diola一集落の就業人口や産業別生産額までは確定できません。地域全体の生業を村の統計へ置き換えないようにします。

現在のエルディアの伝統王の氏名も確定できませんでした。近隣王国の王や過去の聞き取り対象者を流用しません。


日本語と中国語の直接用例は未確認

国立国会図書館サーチと国立国会図書館の本文検索を、Eloudia、Loudia Diola、エルディアで確認しました。EloudiaとLoudia Diolaの該当資料は得られず、エルディアの検索結果も別の人名や作品名で、セネガルのこの村を指す用例ではありませんでした。

したがって、日本語の歴史的漢字表記は採録できません。これは表記が絶対に存在しなかったという断定ではなく、現在の調査で対象を直接指す原典を示せないという記録です。

台湾政府の外国地名訳名データでも、Eloudia、Loudia、Loudia Diolaに当たるセネガル地名を確認できませんでした。似た綴りの別地域は対象外です。

中国大陸の公的地名データベースは今回の調査環境から安定して確認できなかったため、中国語表記が存在しないとは断定しません。信頼できる直接用例は未確認とします。


三字案を比較する

埃瑠迪

三文字です。埃をエ、瑠をル、迪をディに対応させ、Eloudiaの冒頭三拍を写します。末尾のアは省きます。

埃には「ほこり」という字義がありますが、村の景観や歴史を表すために選んだ字ではありません。瑠の宝石の意味も、迪の導くという意味も地名の語源ではありません。三字とも音の手掛かりとして用いる当て字です。

迪は日本語の通常の音読みでディとは読みません。中国語音訳を既成例として移したものでもありません。本誌独自の読みだと明示する必要があります。

埃瑠迪亜

四文字ならエ・ル・ディ・アを最後まで保てます。しかし、本誌の都市篇では二字・三字を主流とし、短い制定形を優先しています。直接用例のない四字形を増やす利点が小さいため採りません。

瑠迪亜

三文字で、公式名Loudiaの中心音ル・ディ・アを写せます。しかし、慣習名Eloudiaの先頭音エを落とします。本稿の日本語名をエルディアとした以上、冒頭を欠く案は採りません。

恵瑠亜

三文字で読みやすい字面ですが、ディの音を失います。また、人名風の好字を並べることで、確認できない美称や語源を作るおそれがあります。

今回は、慣習名の先頭から三拍を保ち、四字化を避ける埃瑠迪を選びます。末尾音の省略と各字の弱点を隠さず、暫定案として扱います。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、三字の埃瑠迪を採ります。

制定区分は創です。日本語の歴史的漢字名を復元したものでも、中国語圏の既存表記を取り込んだものでもありません。エルディアという本稿の日本語名を、万国漢字志が三字へ写した暫定案です。

アタ・エスは伝承上の村の創建者として本文に記録します。しかし、Eloudiaという地名を作った人物、または埃瑠迪という漢字表記を作った人物ではありません。漢字表記の特定個人による命名記録は置きません。

今後、日本語・中国語の直接用例、現地語の発音、地名の語源が確認できた場合は、日本語名、制定形、区分を再検討します。


万国漢字志の暫定案

本稿で用いる都市名

エルディア

所属国

セネガル

公式・研究資料で確認した綴り

Eloudia/Loudia Diola/Loudia Diolla

歴史的な日本語漢字表記

未確認

信頼できる中国語表記

未確認

伝承上の創建者

アタ・エス(Atta-Essou)

地名・漢字表記の命名者

未確定

暫定制定都市名

埃瑠迪――創

制定状態

暫定制定・日本語原典、中国語直接用例、現地語発音、語源と命名史を継続調査


採らなかった表記と未解決点

埃瑠迪亜は全音を保ちますが四文字です。瑠迪亜は慣習名の先頭音を落とし、恵瑠亜はディの音を失います。採用した埃瑠迪も末尾のアを省き、埃の字義と迪の読みには注意が必要です。

未解決点は、EloudiaとLoudiaの関係を説明する現地語資料、地名の語源、地名の命名者、現在の伝統王、日本語と中国語の直接用例です。アタ・エスは伝承上の創建者ですが、地名の命名者とは確定できません。

人口265人は2023年国勢調査のLoudia Diola一行の値です。2013年資料との集計範囲の連続性は未確定です。座標は公式KMLの集落代表点で、村域の境界を示すものではありません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第五十六号

次は、ルディア・ウォロフです。

エルディアと隣り合いながら別の村として記録されてきた郡庁所在地を、十九世紀のLoudia Ouoloffから現在の公的資料までたどります。