大阪市の交流記録にある都市名
大阪市の海外ネットワークのページに、**グラーツ市(オーストリア)**という行があります。提携時期は2009年10月、交流内容は友好城郭提携。遠い都市の名が、日本の自治体の交流記録に載っています。
中国語の資料では、この街は格拉茲、あるいは格拉茨と書かれます。本稿では、それらを日本語の歴史漢字と混同せずに比較し、日本語の音を手掛かりにした三字の新案、具羅津を考えます。
歴史表記
グラーツの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回確認したのは、自治体の現行ページ、公式観光案内、現代中国語の公的機関のページです。古い地理書や地図の紙面を読んだことにはしません。
大阪市のページに2009年の提携が載っていても、その年の協定書を閲覧したわけではありません。また、現在の中国語形から、日本で過去に同じ字が使われたと推定することもしません。具羅津は本誌の提案であり、古い漢字名を発見したという意味ではありません。
日本語での用例
大阪市の「協定書・覚書(MOU)等締結都市・機関」は、提携都市の欄で**グラーツ市(オーストリア)**と記しています。大学名や企業名から都市名を切り出した推定ではなく、市そのものを指す日本語の使用例です。
オーストリア政府観光局のグラーツ紹介も、見出しにグラーツを用い、シュタイヤマルク州の州都と紹介しています。シュロスベルクの時計塔や旧市街を取り上げる観光案内です。本稿のカタカナと読みは、これらの現代日本語用例に従います。
同観光ページの人口概数は、本稿の2026年の市域人口に代用しません。都市名を確認する資料と、人口の範囲や基準日を確認する資料を分けます。
中国語圏その他の表記との比較
オーストリア連邦経済会議所の海外貿易部門ADVANTAGE AUSTRIAが台湾向けに掲載する「地理」には、州都の一覧に格拉茲とあります。グラーツを指す三字の使用例です。
中国外交部の「双边关系」では、教育・科学技術交流の記述に格拉茨の字が使われています。こちらは研究センターや大学の名称を含む文脈です。格拉茨大学の文字列があることを、独立した都市紹介の段落を読んだことと取り違えません。
確認した中国語形の末尾は、台湾向けページでは茲、外交部では茨です。これを単なる日本語の新旧字体の違いとは扱いません。茨を茲へ交換すれば、ほかの条件を考えず日本語で使えるというわけでもありません。
本稿の具羅津は、格拉茲の字体調整ではありません。三字を日本語の音から別に選ぶため、「改」ではなく「創」とします。
二文字・三文字案の比較
格拉茲
台湾向け中国語ページで確認できる三字です。出典に戻れる既存形を保つ利点があります。ただし日本語の通常の読みからグラーツは導けません。本稿では、日本語での漢字用例を確認した形としては扱いません。
中国語として使われる形をそのまま参照する選択肢は残しますが、今回は日本語の音を手掛かりに別案を作ります。
具羅
具をグ、羅をラに対応させる二字の本誌比較案です。グラまでの対応は説明できますが、末尾のツを示す字がなくなります。さらにラの長音も書き分けられません。短さを優先して音の一部を落とすため採りません。
具羅津
具のグ、羅のラ、津のツを組み合わせる三字案です。三つの音のまとまりを対応させられ、二字案で落ちた末尾を残せます。この都市に具羅津を当てる判断は、本誌の創案です。
それでも、漢字の読みを続けるだけではグラツとなり、グラーツの長音を明示できません。グラーツという読みを添える必要があります。 現地ドイツ語の発音を完全に写す案でも、地名の語源を訳した案でもありません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
グラーツ
所属国
オーストリア
暫定制定都市名
具羅津――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
具・羅・津を日本語の音の対応から選び、三字の暫定案とします。日本語の古い使用例を復元したものでも、中国語名の一部だけ字体を替えたものでもありません。
人口はSTATISTIK AUSTRIAの年次自治体表による2026年1月1日現在306,971人。対象はグラーツの市域全体です。シュタイヤマルク州全体や周辺の都市圏、周囲の郡を含めた値にはしません。
主たる住所の住民登録に基づき、基準日前後で90日を超えて継続登録された人を対象とする人口です。人口・自治体範囲の基準日はともに2026年1月1日、表の作成表示は2026年6月29日です。市を示す自治体コードは60101(Graz)。
採らなかった表記と未解決点
格拉茲は現代中国語の実在形として残します。具羅津のほうが歴史的に正しい、あるいは既存形より広く通用するという主張はしません。具羅は末尾の音が落ちるため採りません。
羅をラに当てても長音は残らず、津を使っても港に由来する名だという根拠にはなりません。今回は字義による地名由来を付け加えず、音の対応だけを採字理由とします。漢字形の初出・命名者、日本語の歴史漢字、過去の市域との関係は継続調査です。
参考資料
-
「協定書・覚書(MOU)等締結都市・機関」、大阪市、2026年5月12日表示。グラーツ市の行を参照。2009年の協定書原本の閲覧ではない。
-
「グラーツ」、オーストリア政府観光局。日本語市名と州都の紹介を参照。掲載人口概数は採用しない。
-
「地理」、ADVANTAGE AUSTRIA、台湾向け中国語。格拉茲の字形を参照。
-
「双边关系」、中国外交部。教育・科学技術交流の箇所にある格拉茨の字形を参照。
-
「オーストリア基礎データ」、日本国外務省、2026年4月1日表示。一般事情「3 首都」はウィーン。本稿の対象は国の首都ではなくグラーツ市。
-
「Bevölkerung zu Jahresbeginn seit 01.01.2002 nach administrativen Gebietseinheiten」、STATISTIK AUSTRIA、2026年6月29日作成表示。2026年1月1日の自治体人口から対象市の値を抜粋。Insgesamtシート、AA1605、自治体コード60101。
-
「Bevölkerung zu Jahres-/Quartalsanfang」、STATISTIK AUSTRIA。人口定義を参照。
-
GeoNamesのGraz項目、GeoNames。保存地名索引に基づく市の位置を示す点を参照。人口や自治体境界の出典には用いない。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第二百八十五号
次はリンツ。自治体の交流資料にある日本語名から、林茲と二字の創案を比べます。
