万国漢字志

都市篇 · ポルトガル

万国漢字志 都市篇 第四百二十一号|ギマラインス――原字で確かめる「吉馬良斯」――

UNESCOの簡体字名と台湾の同一字形実例を区別し、歴史地区・クーロス地区と自治体全域を分けて四字案を考える。


一字を替える前に、実例を探す

UNESCOの登録ページには、Guimarãesを指す中国語として「吉马良斯」が見えます。「马」を日本語の「馬」に替えれば「吉馬良斯」になりますが、変換できることと、同じ字形が実際に使われていることは別です。UNESCO登録ページ

今回は台湾環境部の2026年8月14日付本文にも「葡萄牙吉馬良斯」とあり、四字の同一字形を直接確認できました。この違いを記した上で、「吉馬良斯」を暫定案として考えます。台湾環境部の本文

対象は自治体コード0308の Guimarães 全域です。世界遺産の歴史地区、クーロス地区、中世の町や領地を、そのまま現在の自治体と同じ範囲にはしません。


歴史表記

ギマラインス市「Dados Históricos」は、古い名を Vimaranes とし、VimaraまたはGuimaraという人名との関係が考えられると説明します。原文は「se julga」という留保を付けており、特定の人物を確定した命名者とするものではありません。

同じ解説は10世紀の修道院と城を町の発展の二つの核として述べます。今回確認したのは現代の自治体解説で、中世の証書・写本・碑文や語源を立証する原典の全文ではありません。Vimaranesという綴りの説明を読めたことと、日本語の歴史的漢字表記が見つかったことを区別します。

「国の揺籃」という呼び方も現在の市が用いる歴史紹介の枠組みです。これを漢字名の語源や、現在の国家首都の認定へ結び付けることはしません。


日本語での用例

ポルトガル観光局の日本語版は「ギマラインス(Guimarães)」と記しています。本稿の現代日本語都市名はこの直接用例を用います。これは漢字の読みを実証したものではなく、現代のカナ名と原綴りの対応を確認する資料です。観光局日本語版

同ページは2001年の世界遺産登録を説明しています。ただし、現在の登録範囲を確かめるときには、2023年の拡張とクーロス地区を明記するUNESCOの現行記録も参照する必要があります。古い紹介の範囲を更新なしで引き継がないようにします。


中国語圏その他の表記との比較

UNESCOの中国語見出しには「吉马良斯历史中心与库鲁斯区」という地名部分があります。現行英語名も Historic Centre of Guimarães and Couros Zone で、歴史地区だけでなくクーロス地区を含みます。簡体字の引用では「马」をそのまま残します。UNESCOの多言語記録

一方、台湾環境部の本文は、葡萄牙の都市の環境施策を例として「吉馬良斯」と記しています。ここではすでに「馬」の字形が使われています。日本語でも用いる四字が同じ形で実際に現れるため、本誌案の区分を「既」とします。台湾環境部、2026年8月14日

「既」は現代中国語での同一字形の実例を根拠とする区分です。日本語の伝統名、歴史的漢字名、また日本語で広く定着した表記と認定するものではありません。台湾の現代公的資料を中世の史料にも数えません。


二文字・三文字案の比較

吉馬良

確認形の末字を省く三字案です。標準の字数には収まりますが、四字の音写が担っていた末尾の情報を減らします。この三字で都市を呼ぶ直接用例は未確認なので、既存の短称とはしません。

吉馬

さらに短い二字案です。読みや識別の手がかりが一段少なくなります。二字を通常の日本語で読んでもギマラインス全体にはならず、短さ以外の利点を示しにくいため採りません。

吉良斯

中の「馬」を省いて三字にする案です。末尾を残す代わりに中間を切る操作が加わります。直接用例は未確認で、音写のつながりを本誌が組み替える根拠も乏しいため、採りません。

吉馬良斯

同一字形の直接用例を保つ四字案です。二字・三字という本誌の標準から外れますが、今回は省略より、確認できた既存形へのたどりやすさを優先します。例外の理由を明示した暫定案です。

四字を残しても、通常の日本語の読みだけからギマラインスという音は得られません。Guimarãesの鼻母音や語末などを、この四字が精密に表すとも主張しません。カナ名と原綴りを添えて使います。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ギマラインス(Guimarães)

所属国

ポルトガル

暫定制定都市名

吉馬良斯――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

ポルトガルINE指標0012918の2026年6月22日更新版による2025年12月31日の住民人口推計は、165,554人です。自治体コード0308、地理コード1190308、男女計・全年齢の値で、スペインINEの統計ではありません。ポルトガルINE原表

対象はCAOP2020の自治体全域です。UNESCOの登録記録は2001年登録、2023年の重要な境界変更、資産38.2ヘクタール、緩衝地帯129.4ヘクタールと記します。これらを自治体人口の範囲へ置き換えません。現行の遺産範囲

現在の国家首都はリスボンです。都市の建国史上の位置付けや歴史的な首都という説明と、現在の首都属性を分けます。AML「Lisboa」


採らなかった表記と未解決点

「吉馬良斯」の同一字形の現代実例は確認できましたが、日本語での歴史的漢字名、定着、初出、命名者は未確認です。四字を標準外の例外として残す判断も、継続して検討する余地があります。

Vimaranesと人名の関係を立証する原典、歴史的領域の境界、中世から現在までの市域の連続性は未確認です。現地の発音辞典・音声との直接照合も未実施です。代表点は保存済み選定資料を継承し、遺産範囲や自治体境界の代わりにはしません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第四百二十二号

第四百二十二号はコインブラ(Coimbra)を取り上げます。