調査対象に並ぶハム
ドイツの環境まちづくりを扱う日本都市計画学会の論文には、**ハム(Hamm)**が調査対象の都市として挙がっています。人名や研究の略号ではなく、ノルトライン=ヴェストファーレン州の市を指す用例です。
中国総領事館の市長訪問報告では哈姆市。三字に見えますが、都市名の二字と行政単位を示す「市」を分けられます。本誌では哈姆を二字のまま暫定案にします。短い都市名でも、どこまでが名前なのかを確かめる作業は残ります。
歴史表記
ハムを指す日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回確認した日本語の学会論文はハムと書き、Hammを併記しています。現代中国語の哈姆を、過去の日本語資料で見つけた形として紹介することはしません。
現地の市公式サイトにはStadt Hammの名があります。ただし、現在のサイトで綴りが確認できても、都市名の語源や成立時期まで確定することはできません。本誌は古い地名史料や創設文書を今回実見していません。
漢字の初出や命名者も継続調査です。ある報告が市の過去や長い交流を語っていても、その年代を漢字表記の成立年へ置き換えません。
日本語での用例
神吉紀世子・阿部成治・小浦久子の「ドイツのエコロジー都市施策における協働型プロジェクトに関する研究」は、『都市計画論文集』39-3、2004年10月、445〜450頁に掲載された論文です。
445頁の研究対象の説明では州名とともに**ハム(Hamm)**が現れ、447頁の表1でも都市名として対応しています。研究者による現地の聞き取りや視察を扱う論文であり、本誌がその調査を自分で行ったという意味ではありません。ここでは日本語の都市名とHammの対応を根拠にします。古い表の概数人口は、今回の人口値に流用しません。
東北大学大学院国際文化研究科の広報No.25、2012年9月、11頁の山下博司による研究紹介にも、ドイツのハム市があります。これは年度中に訪問したいという研究計画の記述です。用字は確認できますが、訪問が実施されたという記録へ読み替えません。州名とHammの対応は、前述の学会論文で別に確かめています。
中国語圏その他の表記との比較
中国駐デュッセルドルフ総領事館の「杜春国总领事拜会哈姆市长黑尔特」は、2023年4月18日掲載です。本文冒頭の訪問日は4月17日で、掲載日とは一日違います。
見出しだけでなく、本文にも哈姆市が現れます。北威州に言及する市長の発言もあり、本稿が扱うノルトライン=ヴェストファーレン州のHammと対応させられる文脈です。同じ短い名前を持つ別の自治体を、文字列の一致だけで混ぜません。
本誌は都市名部分の哈姆を無変更で採ります。「市」は自治体の種類を示す語として分けます。この報告から中国語圏全体の唯一の標準形や、日本語での歴史的定着まで認定することはしません。
二文字・三文字案の比較
波夢
日本語の音読みの例「波=ハ」「夢=ム」から、本誌が作った二字の比較案です。既存の都市表記として確認したものではありません。
ハ・ムという音の対応は説明しやすいものの、波や夢を都市の特徴と結び付ける根拠はありません。夢に好ましい意味を見ても、それは本誌の連想です。すでに資料で確認できる二字がある中で、新しい表記へ替えるだけの利点は足りず、採りません。
哈姆市
総領事館の本文に実際に見える三字の形です。ただし三字目は都市名本体の音写の続きではなく、行政単位を示す「市」と考えて分けられます。日本語資料の「ハム市」と比較しても、この区別を保てます。
三字を標準に含めているからといって、行政接尾辞まで制定名へ取り込む理由にはしません。哈姆市という原文の用例は残し、制定する名前は二字にします。
哈姆
現代中国語の用例から、名前の二字をそのまま採る案です。字の交換や独自の短縮を行わず、本誌の二字・三字という標準にも収まります。確認した文字列を保持できることが採用理由です。
ただし、哈姆にはハムの読みを添えます。 日本語の一般的な漢字の読みだけで、誰もが同じ都市名を復元できるわけではありません。波夢のように日本語の音を割り当てた創案と、中国語資料で用いられる二字の採用は、別の選択です。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ハム
所属国
ドイツ
確認した現代中国語表記
哈姆(原文の都市を示す形は哈姆市)
暫定制定都市名
哈姆――既
制定状態
暫定制定・原典継続調査
確認した都市名部分を無変更で採るため「既」です。行政接尾辞「市」を分けることを、名前の音写を本誌が短縮した操作として扱いません。波夢は採らなかった本誌の創案であり、史料の異表記ではありません。
人口はDestatis年次版の2025年12月31日現在179,108人。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計で、2026年8月版を用います。人口・境界の基準日はともに2025年12月31日。対象はHamm, Stadt(自治体コード05915000)全体で、ルール地方全域、周辺を含む都市圏、市内地区を別枠にした人口ではありません。
採らなかった表記と未解決点
波夢は日本語のハ・ムに字を対応させる本誌の案ですが、確認した既存二字を置き換えるだけの根拠に欠けます。哈姆市は実在する文字列でも、その三字すべてを都市名本体として採ることはしません。
二字の哈姆を採っても、漢字の選字者や初出は分かりません。日本語の歴史漢字、他地域での中国語表記、同名自治体の別表記は継続調査です。短い名前であることを同一性の保証にはせず、州名、現地名、自治体コードを合わせて対象を限定します。
2012年の研究紹介にある訪問計画と、2023年の総領事の訪問報告も区別します。どちらも文字の用例にはなりますが、計画と実施では資料が支えられる事実の範囲が違います。
参考資料
- 「ドイツのエコロジー都市施策における協働型プロジェクトに関する研究」、神吉紀世子・阿部成治・小浦久子、日本都市計画学会『都市計画論文集』39-3、2004年10月、445〜450頁。445頁の州名・ハム(Hamm)、447頁の表1を参照。
- 東北大学大学院国際文化研究科広報No.25、2012年9月、11頁、山下博司の研究紹介。ドイツのハム市という用字。訪問実施ではなく計画の記述。
- 「Startseite|Stadt Hamm」、ハム市公式サイト。現地の市名表記を確認。
- 「杜春国总领事拜会哈姆市长黑尔特」、中国駐デュッセルドルフ総領事館、2023年4月18日掲載、本文の訪問日は4月17日。
- 『Gemeindeverzeichnis』年次2025版、Destatis、2026年8月刊、人口・境界2025年12月31日。
- 「ドイツ基礎データ」、日本国外務省、2025年6月3日表示、一般事情3「首都」。第221号の出典記録にある2026年11月4日の編纂担当の観測を再利用。首都ベルリンの根拠であり、本稿著者の再取得成功ではありません。
- 「日本関係リンク集 ドイツ」、国立国会図書館。ルートヴィヒスハーフェン経済大学とLudwigshafen am Rheinを含む大学名の併記を、次回予告の日本語名の手掛かりにします。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第二百四十八号
次回はルートヴィヒスハーフェン(Ludwigshafen am Rhein)を予定しています。国立国会図書館の大学案内にも見える日本語名を手掛かりに、市名と漢字候補を調べます。
