万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百十七号|ハノーファー――ハノーバーとも呼ばれる町に、漢諾威を置く――

総領事館のハノーファー、広島市広報のハノーバー、中国語の汉诺威を比較する。同一都市の日本語表記の揺れと、本誌が選ぶ漢諾威の読みの限界を記す。


同じ町を呼ぶ二つのカタカナ

広島市の広報紙を読むと、見出しにハノーバーの日、続いて**Hannover-Tag(ハノーファー ターク)**とあります。一つの案内の中に、ハノーバーとハノーファーの両方が顔を出します。

在ハンブルク日本国総領事館の友好関係一覧では、広島市の姉妹都市はハノーファー市です。文字の違いだけを見て別々の都市として数えることはできません。漢字を考える前に、同じ町を指す表記の幅を確認しておきます。


歴史表記

ハノーファーの日本語の歴史的な漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回の資料は、現代の日本語の公的案内と、中国語の活動報告です。古い日本語の地理書などで漢字と読みを照合できたという意味ではありません。

本誌案の漢諾威は、今回確認した中国語の汉诺威をもとに字体を調整したものです。日本語で過去に同じ文字列が用いられたかどうかは別途確認を要します。今回「改」とするのは、この作業で行う操作を示すためです。

古い刊本での漢字の初出や選字者は未確認のまま残します。現在のウェブ資料に漢字が載っていることから、その歴史を遡って補うことはしません。


日本語での用例

在ハンブルク日本国総領事館の「日本と北ドイツ友好関係」には、1983年6月27日、広島市とハノーファー市の組が載っています。この日付は友好関係の一覧に記されたもので、ハノーファーという日本語表記の初出ではありません。

一方、広島市の『市民と市政』2023年7月15日号は、姉妹都市提携40周年を紹介する記事でハノーバー市を用います。見出しではHannover-Tagにハノーファー タークの読みも付いています。

本誌の現代日本語都市名は、総領事館の用例に沿ってハノーファーとします。広島市のハノーバーを誤記とする判断ではありません。どちらを用いた資料かを示し、同一都市の異なる日本語表記として扱います。


中国語圏その他の表記との比較

中国外交部に掲載された「漢語橋」ドイツ地区決勝の報告は、開催地を汉诺威と記しています。表示日は2026年6月2日、本文の開催日は5月30日です。URLの6月3日とは区別します。

本誌案の漢諾威では、汉を漢、诺を諾へ調整し、威はそのまま用います。三字の順序を保った字体の調整です。この字形の組を日本語の歴史表記として確認したわけではありません。

今回確認した一つの公的報告から、中国語圏全域の用字を代表させることもしません。漢・諾・威の字義を組み合わせて都市名の由来を説明するのではなく、同じ町を指す既存の文字列として参照します。


二文字・三文字案の比較

漢威

汉诺威から中央の字を省く、本誌の二字比較案です。短くなりますが、原文との対応を一字失います。漢を「カン」、威を「イ」と読んでも、ハノーファーの音にはなりません。

この二字を既存の都市略称として確認したわけではありません。

波乃和

日本語で波の「ハ」、乃の「ノ」、和の「ワ」を手がかりにする、本誌の三字比較案です。しかし長音と「ファー」を表せず、ハノーファーには届きません。三字の枠だけでは解決しない問題が残ります。

確認した中国語表記とのつながりもなく、今回この字を優先する用例上の根拠はありません。

漢諾威

原文の汉诺威と三字で対応させ、二字を字体調整する案です。省略を加えず、どの用例から来た案かを説明できます。

ただし、日本語で漢を「カン」、諾を「ダク」、威を「イ」と読んでも、ハノーファーやハノーバーという読みにはなりません。漢諾威にはハノーファーの読みを添えます。 三字の漢字案を置いても、日本語表記の揺れまで消えるわけではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ハノーファー

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

汉诺威

暫定制定都市名

漢諾威――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

原文の汉を漢、诺を諾へ本誌が調整するため「改」とします。日本語の歴史表記を確認したという認定ではありません。

人口はドイツ連邦統計局(Destatis)の自治体一覧年次版による、2025年12月31日現在522,803人です。人口・自治体境界の基準日はともに同日で、2026年8月版を用います。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計の総人口です。対象はHannover, Landeshauptstadtの自治体全体であり、都市圏や周辺自治体を合算した人口ではありません。住民登録簿の別集計も代用しません。

ここでの対象はハノーファー市そのものです。より広い行政区域であるRegion Hannoverや、ニーダーザクセン州全体の人口としては扱いません。


採らなかった表記と未解決点

漢威と波乃和は本誌の比較案で、歴史的な漢字表記や慣用略称として確認した形ではありません。原文の汉诺威をそのまま採る案もありますが、今回は対応を示しながら漢・諾へ調整します。

ハノーバーという日本語用例も併記して残します。異なるカタカナを一つへ揃えたからといって、元の資料の表記まで書き換えることはしません。

今後の課題は、日本語の古い原典で漢字と読みを対にして確認すること、漢字の初出と選字者を調べることです。今回確かめられた現代の用例の範囲を越えずに、暫定案を置きます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百十八号

次回はデュースブルクを予定しています。人口基準の掲載順に沿って、日本語の用例と漢字表記の根拠を確認します。