万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第百一号|カンデ――道路の表と法廷の注に見える町

トーゴの都市Kantè/Kandéを、JICAのカンデと国連中国語版の康代から調べる。2022年都市人口15,313人を県・自治体人口と区別し、寛の音と手の訓の濁音形を組み合わせた寛手を創案として暫定選定する。

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道路の区間名から町を探す

前号のタブリゴに続き、トーゴの都市人口表から未収録の町を選びます。今回はKantè。2022年の居住人口は15,313人です。

日本語の名前は、また橋梁建設の報告書にありました。ただし今回はセメントの調達先ではなく、国道の工事区間の端点です。表の一行に、カンデからタンジョアレまで、とあります。

第百一号はカンデを取り上げます。人口表、道路の表、法廷を列挙した脚注。それぞれ別の用事で書かれた地名を照合し、日本語の音に対応する二字案を考えます。


日本語のカンデと、別用例のカンテ

JICA『トーゴ国 カラ・クモング2橋梁建設計画 準備調査報告書(簡易製本版)』は、2014年12月の報告書です。印刷7頁(PDF28頁)の表5、第7行に、カンデ~タンジョアレという区間名があります。保存済みPDFを原頁画像にして、文字を確認しました。

表は国道RN1とRN17の工事中・計画中の区間を示しています。この行はRN1、延長130キロメートル、資金源をBOADとトーゴ政府、備考を工事中としています。これは報告書作成時の記録で、現在も同じ工事が続いているという意味ではありません。また、130キロメートルは道路区間の長さであり、市域の広さではありません。

綴りにも違いがあります。GeoNamesの公開地名検索は、トーゴのKaraにある居住地**Kandé(2366168)**に、Kande、Kante、Kantéなどの別名をまとめています。検索結果に別途現れる行政区Keranとは記録番号も分類も異なります。本稿ではこの居住地記録を、JICAのカンデと人口表のKantèを対応させる地名典拠として使います。アクセント記号の違いから、別都市を立てることはしません。

日本語の別用例もあります。KITAGAWA WonderStruckのトーゴ旅行記には、カンテ Kandéという見出しと、町の手前から進路を変えたという訪問者自身の記述があります。これは本人の旅行記における日本語用例で、公的な日本語名称の指定ではありません。

本稿では公的調査報告書にあるカンデを見出しと提案の読みとして採ります。カンテを誤記と断定せず、別用例として残します。日本語名の公的な統一形、原語の発音と二つの日本語形との厳密な関係は未確定です。


日本語の歴史的漢字表記は未確認

今回確認した日本語資料の都市名はカタカナです。制定に採れる日本語の歴史的漢字表記、または漢字の先行使用・提案は、現時点では原典未確認です。

検索で確認できなかったことを、過去に用例が存在しなかった証明にはしません。古い地図や地理書の画像本文を含め、要継続調査とします。

後に示す寛手は、史料から取り出した名前ではなく、本誌の新案です。


国連中国語版では康代

トーゴ政府報告書**CEDAW/C/TGO/1-5(2004年)**の中国語版には、康代という地名形があります。OHCHRの公式配布一覧で各言語版を確認できます。

保存済みの中国語版34頁、脚注39は、2001年の司法省資料を出典に法廷の所在地を列挙しています。第三級法廷の一覧で、巴萨尔の次、芒戈の前に康代があります。対応する英語版30頁、脚注39では、Bassarの次、Mangoの前がKantéです。両頁の画像で一覧の順序と字形を照合しました。

この対応から、康代をKantéの中国語用例として記録します。法廷所在地の用例であり、2022年の都市人口の集計範囲を説明する資料ではありません。当時の法廷区分や配置を、そのまま現在の司法制度として紹介することもしません。

中国語で漢字形が確認できても、日本語で既に使われた漢字名とは別です。康代の確認だけを根拠に、制定区分を「既」とすることはできません。中国語形の初出・選字者や、台湾等での公的標準は未確認です。


15,313人と、二つの行政人口

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21、印刷33頁(PDF51頁)には、Kantèの男性7,600人、女性7,713人、合計15,313人が載っています。表題は、トーゴの各都市の2022年居住人口を男女別に示すものです。

続きの印刷34頁(PDF52頁)には、出典としてINSEEDの第5回国勢調査、2022年の人口空間分布資料が示されています。表題、Kantèの行、表末尾の出典を原頁画像で確認しました。ここで採るのは都市として集計された居住人口です。

一方、同年鑑の表3.17、印刷23~24頁(PDF41~42頁)は、Kara地域の県・自治体別人口です。続きの印刷24頁には、県KERANが128,687人、自治体KERAN 1が44,399人とあります。この頁の数値と出典も画像で確認しました。これらをカンデの都市人口として転記しません。

GeoNamesの居住地記録の代表座標は北緯9.957778度、東経1.044722度です。町の位置を示す点として採り、行政区Keranの代表点や市域境界とは区別します。同記録に付属する人口値は、本稿の2022年人口には使いません。

所属国はトーゴです。外務省の基礎データは国の首都をロメとしています。カンデは国の首都ではありません。

都市の細かな統計境界、自治体内の都市部分との対応、法廷所在地としての町と国勢調査の都市集計との境界の一致は、この資料だけでは確定できません。


二文字・三文字案の比較

康代をそのまま採るか

康代は、中国語での使用を原資料で確認した二字形です。その資料上の価値は保存します。しかし、本稿で採る日本語のカンデという読みまで、その用例によって保証されたわけではありません。今回は中国語形をそのまま日本語の制定名に移すことを見送ります。

官手

二字の比較案として官手を置きます。漢字ペディア「官」の音読みはカンです。後述する手の濁音形と組み合わせれば、カンデへの対応を説明できます。

ただし、官は役人や公的機関を表す字です。法廷の資料で町を見つけたからといって、その町の性格を官の字で表す根拠が得られたわけではありません。今回は官を避けます。官手という都市名の先行使用を確認したのではなく、本誌の比較案です。

寛手

採る案は寛手です。漢字ペディア「寛」には音読みカンがあります。同「手」の検索項目では、訓読みてを確認できます。また、同辞書の「熊手」はくまでと読み、複合語の中で手がデになる実例です。

本誌はこの読みの材料を使い、寛=カン、手=デとしてカンデに当てます。音読みと訓の濁音形を組み合わせる当て字です。手の単独の辞書読みがデだと言うのではありません。また、熊手の読みがあるから寛手でも必ず連濁する、という規則を立てるのでもありません。寛手をカンデと読む組み合わせそのものは、本誌による指定です。

寛には心が広い、ゆるやか、くつろぐなどの字義があります。本稿では、町や住民の気質を寛容だと評価するためには使いません。手についても、この町に特定の手工業があると推測して選んだ字ではありません。音への対応を説明でき、字義に強い否定的な含みがない二字として選びます。

三字に分ける必要はあるか

日本語のカンデは三拍ですが、三拍を必ず三字に配る必要はありません。寛のカンで二拍を受け、残るデを手に配れば二字になります。

三字にするためにカ・ン・デを一拍ずつ分けようとすると、ンだけを担う字の特殊な読みを別に説明する必要があります。逆に、カン・デにもう一字を加えれば、余分な音を読ませるか、その字を読まない指定が必要になります。今回確認した日本語形には、その追加を求める長音も別の音節もありません。

三字案が一般に不適切なのではなく、この日本語形では、二字の方が少ない読みの指定で音を保てます。寛手も自然に一義的に読める熟語ではないため、読みを必ず添えます。本稿の二字案は本誌の文字数標準の範囲内です。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

カンデ(別用例:カンテ)

原綴り

Kantè(INSEEDの都市表)、Kanté(国連英語版)、Kandé(GeoNamesの居住地名)

所属国・対象

トーゴの都市。人口はINSEEDの都市集計に対応させ、県・自治体全域の人口とは分ける。

中国語の確認形

康代――国連文書にある法廷所在地の地名用例。

暫定制定都市名


寛手

読み

カンデ

制定区分

寛手――創

制定状態

暫定制定・原典継続調査

編纂綱領第三条・第四条・第五条・第八条・第九条に従い、日本語の使用例、中国語の漢字形、本誌による選定を分けます。

今回の「創」は、日本語の漢字用例が未確認だから自動的に付ける区分ではありません。JICAのカンデに対応させ、寛の音読みと手の訓の濁音形を使う二字名を新たに選定したという判断に対して付けます。康代の字体調整でも、過去の漢字名の復元でもありません。


採らなかった表記と未解決点

康代は中国語の確認形として保存し、官手は本誌の比較案として残します。カンテは日本語の別用例であって、漢字名の制定案ではありません。

日本語の歴史的漢字表記と漢字の先行使用・提案、中国語形の初出と選字者、都市名の語源と命名者は未確認です。日本語二形と現地発音との関係、都市の統計境界も要継続調査とします。一字略称は制定しません。

道路の表で区間の端点だった町は、国連文書では法廷の所在地になっています。どちらも町全体を描くための資料ではありません。その用途を保ったまま地名を照合し、本誌ではカンデに対応する寛手を二字の暫定案として置きます。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百二号

次回もトーゴの都市人口表に載る未収録都市を候補に、日本語名と漢字形の資料を確認してから選びます。