ソコデの北にある町
前号のアタクパメから、今回は同じトーゴのカラ(Kara)へ進みます。前号では次回の都市を調整中としていました。日本語で都市を指す本文と、中国語で開催地を指す本文が確認できたことから、カラを選びました。
JICAの道路事業の資料では、カラはソコデの北にある都市として現れます。一方、中国外交部の会談記事では、会場の町を示す卡拉の二字が見つかります。事業や施設の名前から地名を取り出す前に、本文が何を指しているのかを読んでみます。
日本語本文の「カラ市」
JICAアフリカ部アフリカ第四課の「ソコデ市バイパス道路建設計画」事業事前評価表、PDF第1頁の「事業の背景と必要性」には、「ソコデ市の北部に位置するカラ市北部から」とあります。原頁画像でも、都市を表す「市」と、その北部から続く道路の説明を確認しました。
同じ頁の末尾には「カラ橋及びクモング橋建設計画」という事業名もあります。しかし、橋の名前だけでは、同名の都市を指すと判断できません。今回の日本語名の根拠は、あくまで本文のカラ市です。
資料は国道1号線と国道17号線の関係を説明しています。そこにある道路の損傷や整備予定は、事前評価時の記述です。本稿では現在の道路状況を示す資料へ読み替えず、都市名と位置関係を確かめるために使います。
日本語の歴史的漢字表記
今回、日本語の地理書や地図でこの都市を記した歴史的な漢字表記は、原典で確認できていません。カタカナの「カラ」と中国語の「卡拉」は確認の対象を分けます。
検索で見つからなかったことは、過去に漢字表記が存在しなかったという証明にはなりません。日本語史料の用例は継続調査とし、未確認の漢字形を歴史表記として掲げることは控えます。
会談の開催地を指す「卡拉」
中国外交部の「曾庆红与多哥总统埃亚德马会谈」は、2004年6月25日付の掲載記事です。本文第1段落は、前日の会談について「在多哥共和国卡拉市」と記しています。国名と「市」を伴い、卡拉が会談の開催都市を指すことを確かめられます。
別の駐トーゴ大使館記事にも、同じ形があります。2020年1月8日付の青年センター体育場の記事は、本文第1段落で1月6日の竣工式を「在卡拉市隆重举行」と記します。題名にある施設名に加え、本文にも都市が開催地として現れます。
二つの記事は、中国語の公的な報道本文でこの二字形が使われた根拠です。2004年を表記の初出年とするものではなく、中国語圏全体の唯一の標準形が確認できたという意味でもありません。台湾など他の地域の表記と選字の経緯は、今回の資料からは確定していません。
二字を保つか、三字にするか
本誌は二字・三字の都市名を標準としています。今回の卡拉は、その範囲に収まる二字形です。長い表記を省略した案ではなく、都市の直接用例にある形をそのまま採ります。
三字に増やすことを裏付ける信頼できる都市直接用例は、今回確認できませんでした。音を細かく分けて字を補えば、本誌による新作になります。比較のためだけに根拠のない三字案を作ることはせず、確認した二字を暫定案とします。
また、「卡」「拉」の字義を組み合わせて町の特色や地名の由来を説明する根拠もありません。本稿で添える「カラ」は現代日本語資料の都市名です。漢字二字の日本語での慣用読みまで実証されたとするものではありません。
人口表の都市と、同名の地域
トーゴの統計当局INSEEDの『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』、表3.21の印刷33頁(PDF51頁)には、Karaの男性7万9,613人、女性7万8,477人、合計15万8,090人が載ります。人口の年は表題の2022年で、表紙の刊行表示「2023年12月」とは分けます。
表題は「Effectif de la population résidente des villes du Togo par sexe en 2022」、トーゴの都市居住人口を男女別に示す表です。本稿では都市別集計のカラの値として採用します。同名のカラ地域全域や、コザ県全域の人口ではありません。集計対象となった都市の詳細な境界と、自治体の境界との対応は未確認です。
表は印刷34頁(PDF52頁)へ続き、末尾には「Source : INSEED, RGPH 5, Distribution spatiale de la population, 2022」とあります。該当行だけでなく、表題と続頁の出典もテキスト・原頁画像で照合しました。ここでの確認は年鑑の表に対するもので、別冊の人口分布報告書や境界図まで確認したという意味ではありません。
位置の目安は、GeoNamesのトーゴ検索結果にあるKara、識別番号2366152の北緯9.5511111度・東経1.1861111度です。項目の種類は第一級行政区域の庁所在地です。同名の地域そのものを示す識別番号2597439とは区別して選びました。この都市点は人口集計区域の境界を示しません。外務省の基礎データが記すトーゴの首都はロメであり、カラは国の首都として扱いません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
カラ
所属国
トーゴ
暫定制定都市名
卡拉――既
制定状態
暫定制定・日本語の歴史的漢字用例と選字の経緯は継続調査
「既」は、中国語資料に既存の都市直接用例があることを示します。その二字を本誌の日本語の都市索引に採る判断は、万国漢字志の暫定的な提案です。日本語で定着した漢字都市名を発見したという主張とは区別します。
残る確認事項
日本語の歴史的漢字表記、漢字形の初出と選字者、現地名の語源と命名者は未確認です。人口を集計した都市の境界も、引き続き確かめる必要があります。
今回採らなかったのは、出典を示せない三字への増補案や、字義から作る地名の説明です。確認できた二字形を保ち、後から新しい史料が見つかったときに、どの根拠に基づく判断だったのかを辿れる形にしておきます。
参考資料
- JICAアフリカ部アフリカ第四課「ソコデ市バイパス道路建設計画」事業事前評価表、PDF第1頁「事業の背景と必要性」。日本語のカラ市用例をテキスト・原頁画像で照合
- 中国外交部「曾庆红与多哥总统埃亚德马会谈」、2004年6月25日、本文第1段落の会談開催地。掲載本文のテキスト確認
- 中国外交部掲載・駐トーゴ大使館「驻多哥大使巢卫东出席卡拉青年中心体育场项目竣工典礼和农业技术设备移交仪式」、2020年1月8日、本文第1段落の開催都市。掲載本文のテキスト確認
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』、2023年12月、表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)。原典配布PDFの都市人口・年・表題・出典をテキストと原頁画像で照合
- GeoNames・トーゴのKara検索結果、都市項目2366152と地域項目2597439。取得した掲載HTMLで種類と座標を確認
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」、一般事情・首都ロメ
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第八十八号
次回の都市は調整中です。日本語名と漢字の都市直接用例を確認してから、調査対象を選びます。
