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都市篇 · セネガル

万国漢字志 都市篇 第四十号|ケドゥグ――三字「凱杜古」と二つの語源説

ケドゥグはセネガル南東部、ケドゥグ州の州都。丘陵とガンビア川に近い交通拠点で、2023年のコミューン人口は5万9231人。

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三字の既存形をどう受け取るか

都市篇第四十号は、セネガル南東部の州都、ケドゥグです。

前号のタンバクンダから国道7号を南東へ進むと、セネガルでも起伏の大きいケドゥグ地方に入ります。在セネガル日本国大使館は、2014年の移動閣議の開催地をケドゥグ州ケドゥグ県ケドゥグ市と記しました。州、県、市が同じ名を持つ都市です。

中国語圏では、Kédougouを、

凯杜古

と記す公的用例があります。日本で用いる字体へ直すと、

凱杜古

です。

三字で収まり、ケ・ドゥ・グという日本語名の音の区切りにも対応します。今回は、二字へ縮める必要があるのか、そして二つ伝わる語源説のどこまでを採れるのかを確かめます。


日本語では「ケドゥグ市」

在セネガル日本国大使館の月報は、2014年4月の移動閣議について「ケドゥグ州ケドゥグ県ケドゥグ市」と行政階層を分けています。2023年の月報にも「東部ケドゥグ市」が現れ、現代日本語の公的資料では都市名をケドゥグとしています。

JICAの保健施設整備報告書も、ケドゥグの市街地とケドゥグ市の廃棄物収集を記しています。州名だけでなく、市街地と市の行政サービスを扱った資料です。

国立国会図書館サーチでは、ケドゥグを含むJICA報告書や研究資料を確認できます。題名にはカタカナのケドゥグまたは原綴りのKedougouが使われています。一方、今回照合した公開検索では、都市を指す日本語の歴史的漢字表記を特定できませんでした。「凱杜古」と簡体字の「凯杜古」による題名検索も0件でした。

これは、過去の日本語資料に漢字表記が存在しないという証明ではありません。旧フランス領西アフリカの地理書、地図、鉱山関係資料には画像だけで残るものもあります。そのため歴史表記は未収録とし、日本語原典の調査を継続します。


中国語圏の「凯杜古」

世界気象機関の世界気象情報サービス中国語版は、セネガルの都市一覧に凯杜古を掲載しています。同じ一覧ではカフリン、カオラック、タンバクンダなどと並び、ケドゥグには都市IDが割り当てられています。中国語版は中国気象局中央気象台が制作・維持しています。

中国商務部が組織編纂した2021年版『対外投資合作国別(地区)指南 セネガル』は、マコ金鉱の位置を「凯杜古市(Kédougou)」から示しています。「市」と原綴りを伴うため、ここでの三字は州名だけでなく都市名を直接指します。

同資料は、中国駐セネガル大使館経済商務処が編纂し、商務部の担当部局と研究機関が調整したものです。ただし、掲載時点より前の初出や、三字を最初に選んだ人物は示していません。

繁体字側では、台湾の衛生福利部疾病管制署が「凱杜古(Kedougou)及薩拉亞(Saraya)地區」と記しています。これは都市ではなく地域を述べる文脈ですが、「凯杜古」に対応する繁体字形が凱杜古であることを公的用例から確認できます。

簡体字の「凯」を日本で用いる「凱」へ直した凱杜古は、既存の中国語形を日本語の漢字索引へ取り込む形です。日本語の歴史的表記を復元したものではありません。


州都であり、国の首都ではない

セネガル国土整備庁の公式地理データは、Kédougouの地点を州都に分類しています。州名だけのラベルではなく、学校、郵便、税関、憲兵隊、病院などを持つ集落点として記録されています。

一方、セネガル共和国の首都はダカールです。公式サイトの「首都」表示は国家首都かどうかを示すため、ケドゥグは首都ではないと登録します。紹介文では行政上の役割が消えないよう、ケドゥグ州の州都と明記します。

ケドゥグは2008年に新設された州と同じ名を持ちます。資料に「Kédougou」とだけある場合、州、県、コミューン、都市のいずれを指すかは文脈で判定しなければなりません。


コミューン人口は5万9231人

セネガル国家統計・人口経済分析庁の『人口推計 2023―2073』は、2023年国勢調査を基準に、州、都市部・農村部、県、郡、コミューンを分けて人口を掲げています。

ケドゥグのコミューン行は、男性3万1391人、女性2万7840人、合計、

5万9231人

です。

同じ表のケドゥグ県12万4266人、ケドゥグ州24万5147人とは別の値です。都市一覧では対象範囲を揃えるため、コミューン人口だけを採ります。

セネガル国土整備庁の公式KMLは、州都ケドゥグの集落点を北緯12.55762126065238度、西経12.18618859101596度に置いています。小数第六位へ丸めた北緯12.557621度、西経12.186189度を地図に使います。

これは都市を示す集落点であり、コミューン境界の重心ではありません。人口の範囲と地図上の一点は役割が異なります。


1825年から1830年ごろの創建者

セネガル国家統計・人口経済分析庁の地域社会経済報告は、ケドゥグの創建者としてMaciré Mbaを挙げています。

同報告によれば、Maciré Mbaはバケル圏ディアワラ出身のサラコレ人商人で、1825年から1830年ごろにケドゥグを築きました。都市の歴史に結びつく人物名を公的資料で確認できる例です。

ただし、創建者であることと、現在の都市名を考案したことは同じではありません。報告書はMaciré Mbaを創建者としますが、Kédougouという語を本人が作ったとは記していません。そのため、都市名の命名者は未確認とします。

ケドゥグのコミューンが設けられたのは1960年8月です。2008年には旧ケドゥグ県が州となり、ケドゥグ市は州都になりました。集落の創建、コミューンの設置、州都化は、それぞれ別の時点です。


二つの語源説

同じANSD報告は、Kédougouの意味について二つの説を並べています。

一つは、ベディク語のIdougouに結びつける説です。ベディクの戦士たちが託宣を行い、ガンビア川の向こうの山地にある村を敵から守るため、護符を埋めた場所だったという伝承です。

もう一つは、マリンケ語のKé-Dougouに分ける説です。報告書はkéを「人、男たち」、dougouを「場所」と説明しています。

ANSDは一方を正解として選んでいません。音の由来、言語、伝承のいずれにも検討余地があるため、本稿も二説を併記します。Maciré Mbaの創建記事と語源説を組み合わせて、本人が命名したと推論することもしません。


丘陵と二つの世界遺産

ケドゥグ地方は、平坦な土地が多いセネガルの中では地形の起伏が大きい地域です。ANSDは、南のサンバンガルーに標高581メートルの国内最高地点があり、フータ・ジャロン山地の前縁に当たると説明しています。

ユネスコ世界遺産の「バサリ地方――バサリ、フラ、ベディクの文化的景観」は、ケドゥグ州のサレマタ県とケドゥグ県にまたがります。北の沖積平野と南の山地という二つの環境の中で、それぞれの文化が形成されました。

ニオコロ・コバ国立公園もケドゥグ州に広がり、国道7号が公園を通ってタンバクンダとケドゥグを結びます。ケドゥグは、鉱山地域だけでなく、南東部の自然と文化景観へ向かう交通上の節点でもあります。


二字・三文字案を比べる

凱杜古

中国語圏の公的資料で都市への直接用例を確認できる三字形です。ケ・ドゥ・グの三つの音のまとまりを保ち、日本語名との照合もしやすい形です。

凱古

二字にはできますが、中央の「ドゥ」に対応する「杜」が消えます。ケドゥグを凱古とする直接用例も確認できません。

凱杜

これも二字ですが、末尾の「グ」に対応する「古」を落とします。地名の途中で終わったように見え、確認した公的資料の用字でもありません。

都市篇は二字・三字を主流とします。今回は既存形がすでに三字で、音の対応も保たれています。字数だけを減らすために一字を落とす理由はありません。


万国漢字志への取り込み

暫定制定都市名には、三字の凱杜古を採ります。

根拠は、世界気象情報サービス中国語版と中国商務部系資料が、都市名として凯杜古を用いていることです。「凯」を日本で用いる「凱」へ直し、残る二字は維持します。

制定区分は創とします。日本語の歴史的漢字表記を復元するのではなく、中国語圏の既存表記を日本語の都市索引へ新たに取り込むためです。「凯杜古」という三字を本稿が初めて作った、という意味ではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ケドゥグ

所属国

セネガル

中国語圏で確認した都市名

凯杜古

暫定制定都市名

凱杜古――創

制定状態

暫定制定・日本語原典継続調査


採らなかった表記と未解決点

凱古と凱杜は二字に収まりますが、都市名としての直接用例がなく、原音の一部も失うため採りません。既存の三字形を優先します。

未解決点は、日本語資料における歴史的漢字表記、Kédougouの二つの語源説の成立過程、Maciré Mbaと都市名との関係、現在の都市名を公的に定めた人物と時期、漢字形「凯杜古」の初出と考案者です。

人口は2023年国勢調査を基準とするコミューン行です。州・県人口とは区別します。座標は公式地理データの集落点であり、行政境界の中心点ではありません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第四十一号

次は、コルダです。

ケドゥグからセネガル南部を西へたどり、カザマンス北東部の州都に使われる漢字表記を調べます。