万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第百十六号|クニョウ――県を置く法律と、町を数える人口表――

Kougnohouはトーゴのアケブ県の県庁所在地。2009年法の指定と2022年都市人口7,918人を照合する。クニョウは綴りに基づく本誌の暫定転写で、現地音源未確認。

以前のnote記事を読む

ジョンの隣から、県庁所在地へ

前号ジョンでは、図書館や学校の所在地として現れる地名を追いました。その所属県アケブの中心は、Kougnohouです。今回は、町を県の中心に位置づける法律と、町の住民を数える統計表を読み合わせます。

比較した未収録候補は、既刊クペテ・ベナと同じ観光省記事に載るGbalédjéです。こちらは滝の調査から自然地形と集落の関係を調べる価値があります。Kougnohouでは、県庁所在地を定める2009年法に加え、JICAの給水調査資料、司法省の記事を回収できました。前号のアケブ県という枠を、行政・給水・司法の別々の記録から確かめられることを優先しました。人口表の掲載順による選定ではありません。

日本語索引には、綴りからクニョウを暫定的に置きます。この読みを前提に比較する三字案が久如宇です。いずれも、本誌が今回置く案であることを先に断っておきます。


2009年の法律が定めること

2009年12月3日法律第2009-027号は、いくつかの行政区画を県へ昇格させ、新しい県などを設ける法律です。官報抜粋の印刷10頁、左欄を原頁画像で確認しました。

第一条にはアケブなどの副県を県へ昇格させ、従来の管轄区域を保持する旨があります。第二条は、そのアケブ県の県庁所在地をKougnohouと定めています。

県を設けた日と、町が生まれた日は別です。この法律から町の創建年や命名年を2009年とすることはできません。また、県庁所在地であることは国の首都であることを意味しません。外務省の基礎データが示すトーゴの首都はロメです。

同じ法律には、既刊のシンカセやアニエに関する条文もあります。別々の都市として読んできた名が、一枚の行政再編の記録に並んでいます。


給水資料の「小郡」と「村落」

JICA公開報告書の「6-1 要請村落リスト及び分布図」には、日本語とフランス語を併記した表があります。県、小郡、村落、地区を別の欄にしており、Kougnohouは複数の行で小郡欄に現れます。

PDF8頁のP-083・P-084は、Kougnohouの下にAtekpoとその地区名を載せています。PDF9頁の改修対象深井戸一覧では、45番の小郡欄と村落欄がともにKougnohouです。

このため、Kougnohouという文字列を見つけるたびに、すべて町の中心を指すと読むことはできません。行政単位の名なのか、村落の名なのか、欄の見出しまで確認する必要があります。給水対象の地区座標を、県庁所在地の代表点として転用することもしません。

日本の公的機関が公開する日本語の報告書ですが、この表の地名そのものは欧文です。日本語資料に載るKougnohouと、カタカナの直接用例は分けます。


現在の公的用例と、読みの限界

トーゴ司法省の2024年12月29日記事は、同月27日にKougnohouで地域の司法施設の開所に伴う行事があったことを記しています。一つの記事の中にKougnowouとKougnohouという綴りが現れます。

表記の揺れを見つけても、その違いだけで歴史的改称や発音の変化を認定することはできません。本稿では法律と統計表に共通するKougnohouを見出しの欧文形に保持します。

今回の検索では、この町を指す日本語の歴史的漢字表記、定着したカタカナ形、中国語圏の直接漢字用例は確認できませんでした。「存在しない」という結論ではなく、確認した範囲の報告です。

クニョウは、公的資料の綴りをフランス語式に読む際のou、gn、無音のhを手掛かりに本誌が置く暫定日本語転写です。公的機関がこのカタカナを採用しているわけではありません。現地語の音源は未聴取で、声調、母音の長短、hに対応する音の有無も確認できていません。クニョホウなど、hを表示する転写との比較も今後に残ります。


二字・三字の創案を比べる

久如

久のクと、如のニョを目印とする二字案です。しかし、暫定転写の末尾ウを文字の上に残せません。二字にするためだけの省略となるので採りません。

玖如宇

ク・ニョ・ウを三字で表す案です。玖に宝石や数字の連想があっても、それを地名の意味や由来に結びつける資料はありません。久と比較したうえで残案とします。

久如烏

末尾を烏のウで表す三字案です。音の目印にはなりますが、鳥に由来する地名だと受け取られかねない字義を説明に持ち込む理由はありません。こちらも残案です。

久如宇

久のク、如のニョ、宇のウを手掛かりとする三字案です。如にはジョの字音もあるため、字音を機械的に連結すれば必ずクニョウになるという表記ではありません。全体の指定読みをクニョウとします。

今回は、暫定転写の末尾を削らず表示できる久如宇を採ります。久・如・宇の意味を町の長寿、信仰、空間などへ読み込む選定ではありません。現地音の確認で日本語名を見直す場合は、漢字形も同時に再検討します。二字・三字の標準は、別の音を無理に削る規則ではありません。


町の7,918人、県の73,830人

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21は、2022年の都市別居住人口を男女別に示しています。印刷33頁から続く34頁(PDF52頁)のKougnohou行は、男性3,952人、女性3,966人、計7,918人です。原頁画像で行と見出しを確認し、合計も照合しました。

同じ年鑑のアケブ県全体の人口73,830人や、アケブ1自治体全体の44,196人とは異なります。本稿では都市別人口表の7,918人を採り、県や自治体の全域人口としては扱いません。統計上の都市範囲を、独自に引いた市境へ置き換えることもしません。

GeoNames 2365673の公式RDFは、主名称Kouniohou、別名Kougnohou、国コードTG、居住地分類P.PPL、北緯7.66667度・東経0.8度を示します。本稿の索引に置く代表点はこのレコードです。Kouniohouという別綴りも、現地の発音を聴取した証拠ではありません。

同じKougnohouという名で別の地点も検索されます。名称だけで同一視せず、アケブの地名を載せる給水資料の位置関係と、国・別名を併せて照合しました。この代表点は県・小郡・統計上の都市域の境界を示しません。RDFの人口値は基準年を示していないため、人口欄には転用しません。


万国漢字志の暫定案

暫定日本語都市名
クニョウ

原綴り・所属国
Kougnohou/トーゴ

暫定制定都市名


久如宇

指定読み
クニョウ

制定区分
久如宇――創

制定状態
暫定制定・原典継続調査

法律が定めるのは県庁所在地、日本語転写と漢字形を提案するのは本誌です。創建者や命名者は認定せず、一字略称も制定しません。


採らなかった表記と未解決点

久如は末尾の省略を伴うため不採用、玖如宇・久如烏は比較案として残します。日本語・中国語圏の直接漢字用例、現地音源、語源と命名者、町の形成史は継続調査です。法律の日付を地名の誕生年へ移さないこと、同名の行政区域と町を分けることを、今後の照合でも守ります。


参考資料

(2026年10月15日調査。現地音源の聴取は未実施。)


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第百十七号

同じ2009年法に現れるKpélé-Adétaと、観光省の調査に載るGbalédjéなどを比較します。既刊につながる一次資料を回収し、自然地形と町、行政単位の関係を確認して次の対象を選びます。