読む場所の名を、古い村一覧で探す
前号デファレから追っている読書・文化活動センターの網には、まだ取り上げていないKpété-Bénaがありました。今回は、この名を現在の施設一覧だけでなく、古い行政文書にも探します。
比較した候補は、同じ2024年の記事に関連図書館として載るDjonと、2021年の滝の調査記事で並ぶGbalédjéです。Djonは図書館網、Gbalédjéは観光調査につながります。Kpété-Bénaではその両方の資料を得られ、さらに1945年官報の村一覧から既刊バドゥとの関係を確かめられました。資料の年代と用途を横断できることを優先した選択です。人口の大きさや表の順番による選定ではありません。
本誌で置く日本語名はクペテ・ベナ。ただし、前号のデファレと違い、日本語資料の直接用例を継承した名前ではありません。今回は綴りから置く暫定転写であることから始めます。
1945年官報の「Kpété-Béna」
『JOURNAL OFFICIEL DU TERRITOIRE DU TOGO』1945年6月16日号の印刷319頁(PDF23頁)左上に、Canton du Litiméの村一覧があります。Badou、Tomégbéなどに続き、Kpété-Maflo I、Kpété-Maflo II、Kpété-Bénaが載ります。文字抽出ではハイフンなどが乱れたため、原頁画像で綴りと並びを照合しました。
既刊バドゥと同じ一覧に載ることは、ここで確認できる具体的なつながりです。一方、同じKpétéを含むMafloとBénaは別項目です。名前の前半だけを取り出せば、一覧が区別している対象を曖昧にしてしまいます。
この官報は当時の行政区分を記す史料です。1945年のLitiméを現在の自治体境界と同一視することや、掲載年を町の創建年・命名年にすることはできません。欧文地名の古い用例が得られたのであって、日本語の歴史的漢字名が得られたわけでもありません。
同頁の次の一覧にはBlittaに属するDéfaléもありますが、綴りだけで前号のDoufelgou県デファレと同一の町に結びつけません。所在地を併せて読む必要があります。
読書センターと、滝の調査
トーゴ文化省の2024年2月27日記事は、新しい八拠点の一つをKpété-Bénaと記します。Amou-Oblo、Danyi-Apéyémé、Défaléなど、既刊の町と同じネットワークです。Djonは八拠点とは分けて関連図書館として記されています。
別の同省の2021年12月30日記事には、Wawa県のKpètè BènaとKpélé県のGbalédjéの滝を対象とする実現可能性調査の検討会があります。
ここでの綴りには、アクセント記号とハイフンの違いがあります。本文が示す県名も照合し、読書の拠点名と滝の名称を関係する用例として残します。ただし滝の地点と集落の代表点は別です。この発表は調査段階の報告であり、その後の整備完了や現在の営業状況を示す根拠にはしません。
日本語の読みと、現地音を分ける
今回の日本語資料検索では、町全体に対応するカタカナの直接用例を確認できませんでした。そこでKpété-Bénaを保持し、索引用の暫定日本語名をクペテ・ベナと置きます。Kpétéの部分をク・ペ・テ、Bénaの部分をベ・ナという目印に分けた、制作上の転写です。
冒頭のkpをクペと記すことで日本語側には母音が加わります。これを現地の二音節と断定しません。また、éやèから日本語の長音・声調を作ることもしません。綴りの照合と、発音の聴取は別の確認です。
現地話者による町名全体の音源は未聴取です。現地語、子音の実現、母音の開閉・長短、声調、語源、命名者は継続調査です。クペテ・ベナを日本語で定着した唯一の読みと主張せず、音源や日本語の直接用例が得られれば読みと漢字案を一緒に見直します。
歴史的漢字表記と中国語圏の用例
日本語の年代の確かな漢字地名用例は現時点では原典未確認です。1945年の欧文地名があることを、日本語漢字形の成立根拠へ読み替えません。
中国大陸・台湾の公的資料で、町全体へ直接使われる漢字形も今回確認できませんでした。取得したGeoNamesのRDFにも漢字別名はありません。これは世界の全資料に先例がないという証明ではありません。
以下の漢字は、確認した欧文名と暫定日本語転写を対応させる本誌の創案です。中国語圏の実使用としては扱いません。
二字・三字案と、全名を残す五字案
佩奈
ペとナを目印にする二字案です。しかしクペテのテもベナのベも見えず、前半と後半の違いを残せません。短いことだけを理由に採ることはしません。
久手奈
ク・テ・ナの三字案です。日本語の読みの骨格を減らせますが、ペとベを省くため全名への案として不採用です。Kpété-MafloとKpété-Bénaを区別するうえでも、後半を落とす短縮には慎重でありたいところです。
久佩手部奈
五字にク・ペ・テ・ベ・ナの目印を置く案です。ただし佩をペ、部をベと通常字音の連結から読むことはできません。五字全体への指定読みを要する案として残します。
久佩手辺奈
同じ五つの目印を保ち、後半を辺奈とする案です。久のク、手のテ、奈のナには日本語の読みの手掛かりがありますが、佩のペ、辺のベは本誌が対応を指定する部分です。辺のヘンをそのまま読ませる案ではありません。
今回は、部奈よりも前半の佩手との字面の区別をつけやすい久佩手辺奈を暫定選定します。五字全体にクペテ・ベナという指定読みを添えることを条件とします。字数が多いから現地音に忠実になるわけではなく、日本語側の暫定転写を省かず表示するための選択です。
佩の装身具や辺の境界という字義を、土地の文化や地名の由来に結びつける根拠はありません。選字の理由と語源を混ぜず、二字・三字の標準から外れる理由も明示します。
位置と人口の範囲
GeoNamesの公式RDF、2365501は、Kpété Bénaを国コードTG、居住地分類P.PPLとし、北緯7.43333度、東経0.6度を示します。直接取得したこの記録を代表点に使います。集落や滝の境界ではなく、人口値も掲載されていません。
INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.15、印刷22頁(PDF40頁)は、Wawa県全体の2022年人口を101,300人と記します。男性51,383人、女性49,917人で合計と一致し、原頁画像でも県行と自治体行の区別を確認しました。
この値は町人口ではありません。同じ頁のWawa 1、2、3の数字とも分け、所属県という行政地域の人口としてのみ保持します。クペテ・ベナ単独の人口を県全体の数字で埋めません。外務省の基礎データが示す国の首都はロメです。
万国漢字志の暫定案
暫定日本語都市名
クペテ・ベナ
原綴り・所属国
Kpété-Béna/トーゴ
暫定制定都市名
久佩手辺奈
指定読み
クペテ・ベナ
制定区分
久佩手辺奈――創
制定状態
暫定制定・原典継続調査
日本語名は綴りによる暫定転写、漢字形は本誌の新案です。一字略称は制定しません。
採らなかった表記と未解決点
佩奈、久手奈は全名の案として不採用、久佩手部奈は残案です。五字案にも指定読みが必要という限界があり、日本語直接用例、漢字先例、現地音源を得た際は文字数から再検討します。
町単独の人口と境界、滝の現在の整備状況、語源、命名者は未確認です。古い村一覧、現代の施設名、集落の代表点、県人口は、それぞれ違う対象・目的を持つ記録として扱います。
参考資料
- トーゴ官報、1945年6月16日、第525号。印刷319頁(PDF23頁)左上、Litiméの村一覧。原頁画像確認。
- トーゴ観光・文化・芸術省、読書センター第二ネットワーク、2024年2月27日。Kpété-Bénaと関連図書館Djon。
- 同省、Kpètè BènaとGbalédjéの滝の実現可能性調査、2021年12月30日。Wawa県という所在地を照合。
- GeoNames 2365501公式RDF。名称、国コード、分類、代表点を直接取得。
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』。表3.15、印刷22頁(PDF40頁)、Wawa県全体の人口。回収済みPDFの原頁画像確認。
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」。首都ロメ。
(2026年10月14日閲覧。現地音源の聴取は未実施。)
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第百十五号
Djonの関連図書館とGbalédjéの滝の調査記録など、未収録候補を引き続き比較します。既刊とつながる地名の一次用例を回収し、施設や自然地形の名と集落名の関係、地名全体の読みを確認して選びます。
