万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百八十一号|ログローニョ――授与の年と写本の年――

1095年のフエロと12世紀写本を区別し、現代中国語の音写から三字案を考える。


一つの文書に二つの年代

ログローニョのフエロは1095年のもの、と市の街路史は説明します。ところが、続けて読んでいくと、市庁舎にある羊皮紙の文書は12世紀の字体で書かれた写本だとあります。権利が与えられた年と、いま伝わる文書が書かれた時代は同じとは限りません。市刊『Las calles de Logroño y su historia』

漢字名を考えるときにも、この区別は必要です。古い地名が現代の解説に載ることと、古い漢字表記の原典が見つかることを、分けて読んでみます。


歴史表記

市刊の街路史は、1095年にアルフォンソ6世が当時の町「Lucronio」へフエロを与えたと説明します。1931年に見いだされた羊皮紙については、12世紀の書体と、その時代の写しである特徴を指摘しています。今回読んだのは2011年刊の第二版の解説、印刷298頁です。1095年当時の原本を直接読めたのでも、12世紀写本の画像を判読したのでもありません。街路史「FUERO DE LOGROÑO」

市の城壁都市解説は、フエロ授与後の拡張によって、東西方向の街路を伴いながら南へ都市が広がったとします。ここでいう中世の町の輪郭を、現在の自治体全域と同じものとは扱いません。市「La ciudad amurallada」

「Lucronio」はこの現代解説が掲げるラテン文字の形です。日本語の歴史的漢字形を確認したものではなく、その原典は今回未確認です。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトは見出しに「ログローニョ」を用い、ラ・リオハ州の州都と説明します。本稿もこの日本語名を採ります。州都としての地位と、スペインの国家の首都とは別です。公式日本語案内

同案内が紹介する中世の写本や巡礼の来歴について、本稿では原物確認を済ませたとはしません。日本語名の用例として読める範囲と、歴史原典の調査範囲を分けます。


中国語圏その他の表記との比較

NH Logroño Herencia Riojaを運営するMinor Hotelsの公式中国語ページには「洛格罗尼奥市中心酒店」という見出しがあります。ホテルの所在地を紹介する、運営者自身の現代用例です。公式ホテル案内

ここで確認した都市名は五字の「洛格罗尼奥」。本誌の案「洛格羅」は、前半三字を残して「罗」を日本語で用いる「羅」に替え、末尾の「尼奥」を省いたものです。字形変更も短縮も本誌が行うため、「既」ではなく「改」です。ホテルの表記を都市の公認漢字名や、日本語の伝統表記とするものではありません。


二文字・三文字案の比較

洛格羅

既存音写の前半を残す三字案です。ロ・グ・ロに近い輪郭は残せても、日本語の通常の音読みはログローニョとは一致せず、語末のニョを表せません。カナと原綴りを添え、都市名として読むことを指定します。

洛羅

原文の「格」「尼奥」を省き、「罗」を「羅」に替えた二字案です。短くできる一方で子音の手がかりまで減り、漢字だけから原名を探し当てるのが難しくなります。この二字を実際の都市略称として確認したわけではありません。

洛羅尼

「格」と「奥」を省き、後半の「尼」を残す三字の調整案です。語末への手がかりは増えますが、今度はグに対応する部分を失います。通常の音読みでラクラニなどと読めても、ログローニョの発音を再現できません。これも本誌の比較案です。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ログローニョ(Logroño)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

洛格羅――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

INE年次人口センサス表68065の2025年1月1日の通常居住者人口は151,681人。自治体コード26089の municipio 全域の値です。城壁内の町だけでも、ラ・リオハ州全域でも、周辺自治体を合算した都市圏でもありません。INE表68065

使用したのは2026年11月7日保存の2025年版です。公表日は2025年12月2日、対応PXの作成日表示は2026年4月30日。保存CSVのSHA256は 9e37188faa63aa86e7a8648469834beaa2e728e5338e3364ef1ce4685178d419、該当行は物理62057行です。

本稿はスペインの同自治体を対象とし、現代名、選定資料の別名、国、自治体コードを対応させます。古い Lucronio という形だけを根拠に、歴史都市の範囲まで確定しません。代表点は選定資料に保存されたGeoNamesの位置を継承し、境界ポリゴンの版は独立には確認していません。


採らなかった表記と未解決点

五字の「洛格罗尼奥」は、直接確認できた用例としてそのまま残します。三字案は短く書くための提案で、音の情報をすべて保つものではありません。「洛格羅」と同一形でこの都市を呼ぶ直接用例、日本語の伝統的漢字形、漢字表記の初出・命名者は要継続調査です。

フエロについて残るのは、現存写本と校訂全文の照合です。近代の本に引用された地名を、中世の原筆から直接拾ったようには記しません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百八十二号

第三百八十二号はバダホスを取り上げます。