万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百三十九号|マドリード――憲法の Madrid と「马德里」の字形――

現代の機関用例「马德里」を検討し、日本語用の「馬徳里」を暫定提案する。


憲法に書かれた都市名

スペイン憲法の第五条は、首都を定める短い一文です。そこに書かれている地名は Madrid。中国の在スペイン大使館経済商務処の案内では、同じ首都が「马德里」と記されています。三文字の骨格を借りながら、日本語で用いる字形に整えると、何が変わるでしょうか。


歴史表記

BOEが掲載するスペイン憲法の統合本文で、第五条の「La capital del Estado es la villa de Madrid.」を確認できます。1978年の憲法に置かれた地名ですが、今回読んだのは現行の統合本文であり、制定当時の官報紙面画像ではありません。

日本語の古い地図や地理書における漢字表記は、現時点では原典画像で確認できていません。ここで検討する三字を、近世や明治期から受け継がれた当て字とは認定しません。地名の語源と中世の綴りの変遷も要継続調査です。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトの日本語都市案内は「マドリード」を用いています。本誌の現代日本語名もこのカナ表記とします。カナの使用例が確認できることと、漢字の伝統が確認できることは別です。


中国語圏その他の表記との比較

在スペイン中国大使館経済商務処の「主要城市」(2021年6月30日)は、冒頭に「除首都马德里外」と記します。「马德里」はこの機関による現代中国語の使用例です。記事中の古い人口値は、本稿の人口に転用しません。

原文の「马」を日本語の「馬」へ、「德」を日本語で一般的な新字体の「徳」へ調整し、里は残します。「馬徳里」はこの調整による本誌の案です。原文引用の「马德里」を書き換えたり、調整後の形を当該ページに印刷されていた形として示したりはしません。台湾等での用字や初出までは今回確認できていません。


二文字・三文字案の比較

馬里

中央の字を省く二字案です。短くはなりますが、原文の三字との対応が薄れ、地名中ほどの音を受け持つ要素も失われます。以下の省略案は本誌の比較用で、確認済みの歴史表記ではありません。

馬徳里

原文の三字構成を保ち、日本語用の字形へ調整する案です。本稿はこちらを採ります。ただし、通常の音読みをつないでも「マドリード」の音や長母音は再現できません。徳の「トク」と「ドリー」の距離は、字体を整えても残ります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

マドリード(Madrid)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

馬徳里――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

現代中国語の既存例をもとに、马→馬、德→徳の調整を加えたため「改」とします。日本語の伝統的表記を認定するものではなく、「マドリード」のカナを添えて使う案です。

INE年次センサスの2025年1月1日値では、人口は3,477,497人。自治体コード28079の municipio 全域の通常居住者が対象で、マドリード自治州や都市圏全体ではありません。


採らなかった表記と未解決点

馬里は省略による欠落が大きいため採りません。原資料の「马德里」は引用として保存しますが、日本語用の採用名にはしません。「馬德里」と德を残す形も考えられますが、今回は徳へ統一する編集判断を行いました。

漢字表記の最初の使用者、日本語古資料での実例、原音と日本語の読みの隔たりは未解決です。現在の憲法上の首都であることを、古い各時代にも同じ地位だった証拠には用いません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百四十号

次号の題材は、人口と都市の同一性の確認を経て案内します。