万国漢字志

都市篇 · ドイツ

万国漢字志 都市篇 第二百三十四号|マクデブルク――四字の前に、カタカナの揺れを読む――

ジェトロのマクデブルク・マグデブルクと中国領事資料の马格德堡を比較。四字を保つ理由と、表記の年を取り違えない読み方を記す。


マクデブルクとマグデブルクのあいだ

同じ機関の日本語記事を並べても、地名の仮名は一つに決まっているとは限りません。ジェトロの記事では、2022年にマグデブルク、2025年にマクデブルクが使われています。いずれもザクセン・アンハルト州にある市を指す記述です。

一方、中国の領事資料には马格德堡。本誌はこれをもとに馬格徳堡を暫定案とします。四字へ移す前に、日本語の二つの形が資料のどこにあるかを確認します。


歴史表記

日本語の歴史的な漢字表記は、今回確認した原典では未確認です。 現代の中国語資料に马格德堡があることと、過去の日本語の刊本に同じ字があることは別の問題です。

仮名の違いにも注意が要ります。2022年の記事がマグデブルク、2025年の記事がマクデブルクであっても、この二例だけで日本語表記の改定や変遷を認定することはできません。機関として変更したのか、記事ごとの選択なのかは未確認です。

本稿では確認した二例を並べ、初出・選字者・歴史的な読みについては判断を留保します。


日本語での用例

ジェトロの「インテル、ドイツに170億ユーロを投じ最新の半導体工場を設立」は、2022年3月24日の記事です。本文はドイツ東部ザクセン・アンハルト州の市をマグデブルクと記しています。

対して「インテル、ドイツ工場計画を撤回、欧州の半導体供給網強化に逆風」は、2025年7月31日掲載で、本文の州名に続く市名がマクデブルクです。本誌の現代日本語都市名には、こちらの形を用います。

計画を報じた記事と、その後の撤回を報じた記事を読むときには、地名だけでなく記述の時点も残す必要があります。2022年の見出しを現在の工場の存在の証拠にしないのと同じく、古い用例を現在唯一の表記と決めつけない。今回の二つの記事が役に立つのは、都市名が実際の報道本文の中で使われる姿を比較できるからです。


中国語圏その他の表記との比較

中国領事サービス網に掲載された「驻德国使馆在德国东部地区举办巡回领保讲座和领事办证服务」は、2018年3月28日の資料で、出所は駐ドイツ大使館。本文には马格德堡市と莱比锡市で領事サービスを行ったことが書かれています。

大学名だけでなく、市そのものを指す箇所で四字を確認できます。掲載日は28日ですが、活動日として本文にあるのは3月24日と25日であり、二つの日付は分けて読みます。

本誌案では马を馬、德を徳に替え、格と堡は残します。馬格徳堡は本誌の字体調整案で、原文そのままの文字列ではありません。この一例で中国語圏全体の唯一の標準表記や、日本語での定着を確認したことにもしません。


二文字・三文字案の比較

馬堡

先頭と末尾を残した、本誌の二字比較案です。格・德の二字を取り除くので、原文との対応は粗くなります。略記として実際に使われた資料は未確認です。

日本語の音読みの例はバ・ホです。これを続けてもマクデブルクの音にはならず、二字化だけで読みやすさが得られるわけではありません。

馬徳堡

四字から格を省いた三字案です。原文の後半を多く残せますが、格だけを省く慣用上の根拠は確認していません。バ・トク・ホという音読みの例でも、都市名全体は復元できません。

馬格徳堡

原文の四字に順番どおり対応する案です。马→馬、德→徳の操作を明示でき、略記を新設する必要がありません。今回はこの対応を優先します。

本誌の二字・三字標準からは外れる四字です。ただしバ・カク・トク・ホといった日本語の音読みは、現地の発音を写したものではありません。マクデブルクと読みを添えることを採用と一組にします。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

マクデブルク

所属国

ドイツ

確認した現代中国語表記

马格德堡

暫定制定都市名

馬格徳堡――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

既存中国語形の二字を調整しているため「改」です。日本語の歴史原典を確認した「史」や、原文を変更しない「既」とは区別します。

人口はDestatis年次版の2025年12月31日現在244,494人。2022年国勢調査を基礎とする人口更新統計で、人口・自治体境界とも同日、2026年8月版です。対象はMagdeburg, Landeshauptstadtの自治体全体で、州全体や周辺市町を含む都市圏ではありません。


採らなかった表記と未解決点

馬堡・馬徳堡は本誌の比較案で、確認済みの略称ではありません。短縮を支える資料が見つからない現段階では、四字の対応を残します。

マグデブルクも、今回の2022年記事にある実例として残します。本誌がマクデブルクを採ることは、もう一方の用例が誤りだと認定することではありません。ドイツ語の音の厳密な転写や、仮名表記の全国的な優劣は、この二例だけでは決まりません。

漢字の初出・選字者・日本語での歴史用例は継続調査です。領事サービスの担当者を漢字の命名者とみなしたり、活動年を漢字表記の成立年にしたりしません。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百三十五号

次回はフライブルク(Freiburg im Breisgau)を予定しています。人口基準の掲載順に沿って、日本語の用例と漢字表記の根拠を確認します。