病院へ向かう町の名
前号のバフィロに続き、トーゴの都市人口表から未収録の町を取り上げます。今回は**マンゴー(Mango)**です。INSEEDの都市表では、TchambaとBassarの間にこの名があります。
日本語の資料を開くと、マンゴーは橋梁建設の調査報告書に登場します。周辺の住民が行政手続きや高度医療のために向かう町として記されていました。人口表の一行とは違うところから、町の位置づけが見えてきます。
漢字形は、国連に提出されたトーゴ政府報告書の中国語版で芒戈を確認しました。地名データベースには曼戈という別形もあります。今回は二つの資料の文脈を確かめ、日本語の制定都市名として二字を選びます。
日本語での用例
JICA『トーゴ国 カラ・クモング2橋梁建設計画 準備調査報告書(簡易製本版)』は、2014年12月の報告書です。
印刷44頁(PDF66頁)の「2-4 社会状況調査」には、調査対象地域がサバネス州オチ県に属することに続き、行政や高度医療施設の利用には、県庁所在地であるマンゴーまで出向く必要があると記されています。本文の地名を原頁画像で確認しました。
報告書にはサンサネ・マンゴー市という形もあります。GeoNamesのMangoの集落項目にもSansanné-Mangoが別名として登録されており、短いMangoと長い形が同じ集落に対応することを確認できます。本稿の現代日本語名は、JICA本文で使われる短い形のマンゴーとします。
報告書が述べる医療や行政への移動は、調査当時の周辺地域についての記述です。現在の病院の規模や交通事情、行政区分を、そのまま説明する資料には読み替えません。
歴史的な日本語漢字表記は未確認
今回確認した日本語用例は、カタカナのマンゴーとサンサネ・マンゴーです。日本語の歴史資料・古地図で使われた漢字形、芒戈や曼戈の日本語での先行使用・提案例は、今回の調査では原典未確認です。
国連文書で漢字形を確認できたことと、日本語でその形が使われていたことは別です。中国語版の掲載形を、日本語の歴史的漢字表記として扱うことはできません。
国連報告書の「芒戈」
資料は、トーゴ政府の第一回から第五回までの定期報告をまとめたCEDAW/C/TGO/1-5です。国連文書の表紙には、配布日2004年3月18日、中国語版、原語フランス語と記されています。
中国語版34頁(PDF34頁)の脚注39は、司法制度を説明する本文に付いた注です。2001年の司法省資料に基づく法廷の所在地が列挙され、第三級の法廷の一覧に、バサール、カンデなどと並んで芒戈があります。
英語版30頁の対応する一覧にもMangoが載っています。両版の同じ法廷所在地の列挙を照合することで、中国語の二字と欧文の地名が対応していることを確認できます。これは人名や一般名詞ではなく、法廷の所在地を示す地名としての用例です。中国語版34頁の脚注は原頁画像で確認しました。
ただし、これは国連文書の中国語版における使用例です。中国大陸や台湾の地名標準としての採用、漢字形の初出、翻訳者や選字者までは確認していません。報告書の掲載年を、この漢字形の命名年とすることもできません。
別の中国語形「曼戈」
GeoNamesの集落Mango(2365190)の公式RDFには、言語コードzhの別名として曼戈が登録されています。同じ項目にはMango、Sansanné-Mangoなどの形があり、国コードはTG、分類は**P.PPL(集落)**です。
したがって、曼戈も、この町を指す漢字別名として比較に残します。ただし、登録元・初出・選字者は未確認です。zhの登録があることだけで、中国語圏の公的な標準地名と断定することはできません。
芒戈と曼戈は、第一字が異なります。どちらかを誤記と判断できる資料はありません。本稿では、報告書の具体的な地名使用の文脈と英語版との対応を確かめられた芒戈を、選定の参考形とします。曼戈は削除せず、別資料の掲載形として残します。
二文字・三文字案の比較
芒戈
国連報告書の中国語版で、地名としての使用を確認した二字形です。都市篇の二文字・三文字という標準にも収まります。本稿では、この二字を日本語名マンゴーに対応させる暫定案として選びます。
芒・戈の字義から、町の産業、言語、歴史を説明する根拠は確認していません。この形が現地名の意味を翻訳したものだとも断定しません。
曼戈
GeoNamesに登録された二字形です。文字数の条件は芒戈と同じであり、代替形として残す理由があります。今回は、国連報告書で確認した直接用例を選定の根拠とするため、暫定制定名には芒戈を採ります。
三字への拡張
今回の確認資料には、Mangoの短い形に対応する三字の漢字案はありません。字を追加する根拠がないため、三字形は作りません。Sansanné-Mangoという長い別名から、語源を推測して字を補うことも見送ります。
2022年の都市人口と座標
INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21は、2022年のトーゴ都市別居住人口を男女別に示しています。印刷33頁(PDF51頁)のMango行は、男性1万7,092人、女性1万7,699人、合計3万4,791人です。男女の和は合計欄と一致します。
続く印刷**34頁(PDF52頁)**には、表の出典としてINSEED、第5回人口・住宅国勢調査(RGPH 5)、人口の空間分布、2022年が記されています。表題、列見出し、Mango行と続頁の出典を原頁画像で照合しました。
ここで採るのは都市の人口です。オチ県全域や自治体全域の人口には拡張しません。都市の集計境界と行政境界の詳細な対応は未確定です。
座標はGeoNamesの集落項目の公式RDFにある、北緯10.35917度、東経0.47083度を採ります。人口は基準年と都市別集計を確認できたINSEEDの値とし、座標とは出典を分けます。外務省の基礎データが示すトーゴの首都はロメであり、マンゴーは国の首都ではありません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
マンゴー
所属国
トーゴ
暫定制定都市名
芒戈――創
制定状態
暫定制定・日本語漢字用例と漢字形の初出は継続調査
編纂綱領第九条の「既」は、既に日本語で使用または提案された例が確認できる表記です。今回、芒戈の日本語での先行使用・提案例は原典未確認であり、国連文書の中国語用例を日本語用例として数えることはできません。
同条の「創」は、既存の適当な表記がなく、本誌が新たに選定した表記です。第096号と同様、本稿では、日本語の制定名として採れる既存用例を確認できない状況で、中国語の既存形を参考に、本誌が日本語の制定名として新たに選定するという意味で「創」を暫定的に用います。
これは、芒戈という文字列を本誌が初めて造ったという主張ではありません。単なる日本語用例の未確認から自動的に区分を付けるのではなく、国連報告書の地名使用の文脈と英語版との対応を根拠に、この二字を日本語名マンゴーに対応させる選定です。
字体の置換、字の追加・省略は行っていません。区分を得るためだけの変更を加えて「改」とすることもありません。日本語の先行使用・提案例が確認できれば、区分を再検討します。
採らなかった表記と未解決点
曼戈はGeoNamesの中国語別名として残します。今回は、国連報告書で直接用例を確認できた芒戈を参考形に選びました。両者の普及度や公的標準としての優劣は未確定です。
日本語の歴史的漢字表記、芒戈・曼戈の日本語での先行使用・提案、漢字形の初出・選字者、地名の語源・命名者は未確認です。一字略称も制定しません。
橋梁調査報告書の日本語名、国連報告書の中国語地名、国勢調査の都市人口は、それぞれ別の問いに答える資料です。医療施設への移動や法廷所在地の記述は町を知る手がかりになりますが、漢字の選字理由や地名の由来をそこから補うことはしません。
参考資料
- JICA『トーゴ国 カラ・クモング2橋梁建設計画 準備調査報告書(簡易製本版)』、2014年12月。印刷44頁(PDF66頁)の地名「マンゴー」と行政・高度医療施設への移動の記述を原頁画像で照合
- 国連・OHCHR、トーゴ政府報告書CEDAW/C/TGO/1-5の公式資料一覧。2004年3月18日配布の中国語版34頁脚注39(法廷所在地)で「芒戈」を原頁画像で確認し、英語版30頁の対応する一覧のMangoと照合
- GeoNames、Mango(2365190)の公式RDF。集落分類P.PPL、国コードTG、座標、Sansanné-Mango等の別名、zhの「曼戈」を確認。漢字別名の登録元・初出は未確認
- INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』、表3.21、印刷33~34頁(PDF51~52頁)。Mangoの2022年都市人口と表末尾の出典を原頁画像で照合
- 外務省「トーゴ共和国基礎データ」、一般事情・首都ロメ
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。
都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。
次回予告|都市篇 第九十八号
次回の都市は調整中です。同じ人口表の未収録都市を中心に、日本語名と漢字形の根拠を確認してから選びます。
