漁港の名前を三字にするとき
ポルトガル観光局の中国語案内では、Matosinhosは「马托西纽什」と書かれます。五字を順に追えば音写の長さが分かりますが、本誌の標準である二字・三字に収めようとすると、どこかを省く必要があります。観光局中国語版
短くした名を、元の発音がそのまま残る表記とは呼べません。本稿では五字形との対応を示しながら、「馬托西」という三字の識別用の名を検討します。対象はポルトガルの自治体コード1308、Matosinhosの municipio/concelho 全域です。漁港、市街地、同名のfreguesia、ポルト都市圏とは区別します。
歴史表記
観光局ポルトガル語版は、11世紀の参照名を Matesinus とし、1514年のforal、1853年のvilaという地位、1909年の自治体の中心地化、1984年のcidadeへの昇格を説明しています。集落名と行政上の地位を、別の出来事として読む必要があります。
今回読んだのは、現代の公的観光解説です。11世紀の文書や1514年のforal原本、その全文翻刻は未見です。Matesinusという名の記載を確認したことは、日本語の歴史的漢字地名を確認したことではありません。初出の年代や、当時の領域と現在の市域の連続性は原史料による継続調査に残します。
市公文書館の目録本文も確認を試みましたが、今回の取得では時間切れになりました。検索結果の要約だけを原本の読解に数えず、Bouçasからの名称変更の細部を本稿で確定しません。
日本語での用例
観光局の日本語版は「マトジーニョス(Matosinhos)」と記します。日本サッカー協会の2024年国際親善試合記録にも「マトジーニョス(ポルトガル)/Estádio de Praia de Matosinhos」とあり、本誌のカナ名はこの二つの直接用例に合わせます。観光局日本語版、JFA試合記録
観光局日本語版には、冒頭を「太平洋岸」とする箇所がありますが、ポルトガル語版は Atlântico と記します。また、日本語版ではMatesinusを人々の呼称のように訳した箇所があります。日本語名の実例として参照する一方、地理や古い地名の説明まで日本語訳に一括して従うことはしません。
中国語圏その他の表記との比較
中国語版本文の原字は「马托西纽什(Matosinhos)」です。原綴りとの対応を直接確認できる、現代公式観光案内の用例です。引用の「马」「纽」は簡体字のまま保持します。ポルトガル語版に対応する古い名も中国語版では別に記されており、現代都市名の五字を中世の漢字名とは扱いません。原字を確認した本文
五字を日本語用字へ移す比較形は「馬托西紐什」です。本誌の三字案では、さらに末尾の「纽什」に対応する二字を省きます。字形変更と省略は本誌が行うため、「馬托西」の区分は「改」です。同じ三字の直接使用例は今回確認していません。
二文字・三文字案の比較
馬托西
確認形の前半三字を残し、「马」を「馬」へ改める案です。根拠のどこを借り、どこを省いたかが明確になります。ただし後半の音写を失うため、マトジーニョス全体を写した漢字名ではありません。三字から通常の日本語の読みを組み立てても、カナ名全体にはならず、Matosinhosと併記する識別用の短縮案です。
馬托
さらに短い二字案です。省略する範囲が広がり、原字の「西」まで失います。短さは得られても地名との対応が弱くなるため、今回は三字案を優先します。この二字の実例も未確認です。
馬托紐
前半と後半から字を選ぶ三字案です。「西」と「什」を途中から抜くことになり、連続する三字を残す案より編集上の組み替えが大きくなります。後半を一字残しても、鼻音や語末を精密に再現できるわけではありません。直接用例は未確認で、採りません。
馬托西紐什
五字すべての対応を残す比較案です。元の音写にたどりやすい反面、本誌の標準より長くなります。この五字そのものの直接実例は未確認で、変換形を「既」とはしません。音写の全体を知る必要がある箇所には、原文とカナ名を添えます。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
マトジーニョス(Matosinhos)
所属国
ポルトガル
暫定制定都市名
馬托西――改
制定状態
暫定制定・原典継続調査
ポルトガルINE指標0012918の2026年6月22日更新版による2025年12月31日の住民人口推計は、181,930人です。自治体コード1308、地理コード11A1308、男女計・全年齢の値を用います。スペインINEの人口統計ではありません。ポルトガルINE原表
対象はCAOP2020に基づく自治体全域です。NUTS2024の地理区分が添えられても、都市圏の合計という意味にはなりません。港やスポーツ会場、中心集落の人口とも別です。INEメタデータ
現在の国家首都はリスボンです。マトジーニョスを首都としては扱いません。AML「Lisboa」
採らなかった表記と未解決点
三字の「馬托西」は、元の音写の後半を省く案です。読みや識別の損失を明記した上での暫定案であり、日本語で定着していた表記の復活ではありません。歴史的漢字名、同一字形の実例、初出、命名者は未確認です。
現地発音の音声や発音辞典との直接照合も未実施です。日本語版とポルトガル語版の説明のずれ、中世文書の年代・綴り、市域の変遷は継続調査に残します。地図用の代表点は選定資料から継承し、境界ポリゴンや人口の証拠にはしません。
参考資料
- ポルトガル観光局ポルトガル語版。現代公式解説。Matesinus、foral、vila、cidadeの記述を確認。歴史原本ではありません。成立・更新年月は未確認。
- 同日本語版。カナ名と原綴りを確認。地理・歴史の翻訳上のずれを原語版と区別。
- 同中国語版。原字「马托西纽什」と原綴りの直接対応。変換・短縮後の本誌案の実例ではありません。
- 日本サッカー協会、2024年7月23日の国際親善試合記録。競技当事者による現代日本語都市名と会場原綴りの記録。
- ポルトガルINE指標0012918とメタデータ。2026年11月8日保存の当該原行・更新版・地理階層を直接照合。INE公式説明の保存本文で年末基準日も確認。
- AML「Lisboa」。現在の首都確認に使用。掲載される別年の人口は不使用。
- GeoNames:Matosinhos。代表点41.18207, -8.68908を保存済み選定資料から継承。今回Web本文は再取得していません。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第四百二十号
第四百二十号はゴンドマル(Gondomar)を取り上げます。
