公館の名前を二つの言語で見る
日本の総領事館はミラノ、台湾の弁事処は米蘭を機関名に使っています。別々の機関ですが、どちらも北イタリアのMilanoを指します。本誌では台湾の公文にある二字を残し、|米蘭《ミラノ》と読みを添えます。
歴史表記
ミラノを指す日本語の歴史的漢字表記は、今回、原典で確認できていません。大阪市とミラノ市が1981年に姉妹都市となったことは大阪市の案内で確認できますが、その案内は現在の用例です。提携当時の文書に米蘭があったと判断する材料にはなりません。
日本語での用例
在ミラノ日本国総領事館は、館名にミラノを用いています。大阪市の姉妹都市紹介も「ミラノ」を見出しに立てています。公館の管轄は市域より広いため、自治体を指す用例としては大阪市の交流相手の表記も参照しました。
中国語圏その他の表記との比較
中国外交部の領事案内に見える米兰に対し、台湾行政院の弁事処開設記事では米蘭。同記事の所在地欄にはMilano, Italiaとあり、二字が指す場所を確かめられます。
日本語の「米」「蘭」には国名の略字としての用法もあります。ここで二字を採る根拠は、それぞれの字の意味ではなく、まとまった地名としての実使用です。
二文字・三文字案の比較
米蘭
台湾の公文で確認できる二字をそのまま掲げます。米の字音はベイ・マイ、蘭はランで、ミラノの三拍を順に示す形ではありません。用例と照合しやすい点を採り、読みは地名全体に添えます。
美良乃
ミ・ラ・ノに一字ずつ当てる本誌の創案です。美のミ、良をラに当てようとする案ですが、良は一般にはリョウや「よい」と読まれ、ラを自明とできません。三字にすることで拍は分けられても、資料にある二字とのつながりは薄れます。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ミラノ(Milano)
所属国
イタリア
暫定制定都市名
米蘭――既
制定状態
暫定制定・原典継続調査
確認した現代中国語の既存形をそのまま掲げるため「既」とします。 本誌では|米蘭《ミラノ》と読みを添えます。
人口はイタリア国家統計局(ISTAT)の確定版で1,365,698人。自治体コード015146のMilanoについて、国勢調査の結果を反映した2024年12月31日の年末人口です。翌2025年1月1日年初と同じ時点の人口として扱います。集計範囲はコムーネ(基礎自治体)で、広域自治体や都市圏の集計とは区別します。
採らなかった表記と未解決点
米兰は中国大陸の用例として残し、美良乃は本誌の比較案にとどめます。米蘭の初出、日本語の地理書や地図で同じ二字が使われたか、過去の読まれ方は未確認です。
参考資料
- 在ミラノ日本国総領事館「総領事館案内」。館名のミラノ。
- 大阪市「ミラノ」。姉妹都市としての用例。
- 台湾行政院中部聯合服務中心、駐米蘭台北辦事處の開設記事。館名と住所欄のMilano。
- 中国外交部・中国領事服務網「交通出行」。簡体字の現代用例。
- イタリア共和国上院「憲法第114条」。共和国首都をRomaとする条文。
- ISTAT「Bilancio demografico della popolazione residente」、2024年確定版。P2_2024_it_Comuni.csv 3982行、自治体コード015146、年末センサス人口総数。
- GeoNames、Milanoの代表点(CC BY 4.0)。座標のみ参照。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第二百九十七号
次はナポリ。現代の表記「拿坡里」と、明治の旅行記の文字情報に見える表記候補を比べます。
