Neussと書く町
ノイス市公式の歴史紹介には、市名を二つのsでNeussと書くことについて、1968年の市議会決定を引く箇所があります。アルファベットの綴りにも、揃えるための判断があったと分かります。
日本語の論文題名にはノイス市、中国総領事館の文化交流記事には诺伊斯市。本稿では、この二つを市公式の綴りと結び付け、諾伊斯という三字を暫定案とします。綴りの統一を語る資料があっても、漢字の読みまで決まるわけではありません。
歴史表記
ノイスの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回の資料から、諾伊斯が日本の古い刊本に載ると述べることはできません。
ノイス市の「Stadthistorie」は、過去の名としてNOVAESIUMやNUSSIAなどを挙げ、1968年11月21日の市議会がNeussと二つのsで書くよう決めたと紹介しています。本稿で直接読んだのは、この現行解説の本文です。
ローマ時代の記録、中世の文書、1968年の議事録原本を実見したわけではありません。市が引用する決定の紹介と、原典調査を区別します。古い綴りの年代を漢字の使用年代に移すこともせず、当時の都市範囲が現在の自治体境界と同じだとも仮定しません。
日本語での用例
北海道大学が公開する「賛否二分法を越えた折衷案の受容とその規定因としての手続き的公正:ノイス市におけるトラムの事例調査」の書誌・抄録では、日本語題名にノイス市、英語題名にNeussが現れます。
著者は大沼進・広瀬幸雄・杉浦淳吉。『社会安全学研究』9巻、89–101頁、2019年3月と記されています。今回参照したのは大学公開の書誌・抄録ページで、論文PDFの全文を読んだという意味ではありません。2019年3月は書誌に示された発行月として扱い、このページの公開月や調査の実施月と混同しません。
日本語名はこの題名に基づいてノイスとします。市公式の綴りと英語題名が一致し、日本語名との対応を確かめられます。近隣のデュッセルドルフや、ノイスを含む郡全体の名へ読み替えません。
中国語圏その他の表記との比較
中国駐デュッセルドルフ総領事館の「杜春国总领事出席中欧艺术对话·中国艺术特展开幕式」は、2024年9月19日掲載です。本文も9月19日の開幕を報告し、会場の所在地を德国诺伊斯市と記しています。
会場の学校名だけで都市を推定したのではなく、所在地として書かれた三字を確認しています。本誌は诺を諾へ調整し、伊と斯を残して諾伊斯とします。字体調整後の形を、総領事館の原文と同じ用字だとは書きません。
この用例は現代中国語の一例です。他の中国語圏での形や、漢字の初出・選字者は今回未確認であり、日本語の歴史表記の証明にも用いません。
二文字・三文字案の比較
諾斯
中間の伊を落とす、本誌の二字比較案です。短くなりますが、この都市の略記としての既存用例は未確認です。ノイスという日本語名にイの音があることを考えても、伊を省く方を優先する根拠は乏しいと判断します。
ただし、伊を残せばそのまま発音できるという意味でもありません。ダク・シという通常の音読みからノイスを導くことはできず、二字にして読みやすくなるとはいえません。
野伊斯
先頭を日本語で「の」と読める野へ置き換える、本誌の三字創案です。伊のイ、斯のシと連ねてもノイスにはならず、末尾のスを当然の読みとすることはできません。先頭だけを日本語へ寄せて、確認した诺との対応を失うため採りません。
諾伊斯
诺伊斯の三字を保ち、诺を諾へ調整する案です。各字と順番の対応が明らかで、二字・三字という本誌の標準内です。省略や別字への置換を増やさないことを採用理由にします。
一般的な音読みのダク・イ・シではノイスになりません。添えるノイスという読みは、日本語論文の題名で確認した都市名です。漢字の読みの合成や、今回検証したドイツ語の音声に基づく転写としては示しません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ノイス
所属国
ドイツ
確認した現代中国語表記
诺伊斯
暫定制定都市名
諾伊斯――改
制定状態
暫定制定・原典継続調査
確認した現代中国語の一字を字体調整するため「改」です。日本語の伝統用字としての「伝」や、歴史原典を確認した「史」とはしません。
人口はDestatis年次版の2025年12月31日現在153,767人。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計で、人口・自治体境界はともに同日、2026年8月刊の版です。範囲はNeuss, Stadt、自治体コード05162024の市域全体。上位のライン=ノイス郡や、デュッセルドルフと連なる都市圏を加えた人口ではありません。
採らなかった表記と未解決点
諾斯は一字を省く案、野伊斯は日本語の読みに寄せて先頭を変える案です。いずれも本誌の比較案であり、確認済みの異表記や略称ではありません。諾伊斯も通常の漢字の読みからノイスへ戻れるわけではないため、読みを添えます。
日本語の歴史的漢字表記、初出と選字者、他の中国語圏の用例は継続調査です。市の現行解説にあるNOVAESIUMなどの綴りと、漢字の諾伊斯を、年代を越えて一つの系譜にする根拠は得ていません。
また、市公式が紹介する綴りの決定は、漢字についての命名決定ではありません。市議会や、今回の記事に登場する総領事・副市長を、漢字表記の命名者とすることはできません。
参考資料
- 「Stadthistorie」、ノイス市公式。過去の綴りと1968年11月21日の市議会決定を紹介する現行解説。ページの明示的な更新日は今回未確認、原議事録は未実見。
- 「賛否二分法を越えた折衷案の受容とその規定因としての手続き的公正:ノイス市におけるトラムの事例調査」書誌・抄録ページ、大沼進・広瀬幸雄・杉浦淳吉、『社会安全学研究』9、2019年3月、89–101頁。北海道大学公開。日本語と英語の題名を確認し、PDF全文の読了とはしない。
- 「杜春国总领事出席中欧艺术对话·中国艺术特展开幕式」、中国駐デュッセルドルフ総領事館、2024年9月19日掲載、本文の開幕日も同日。
- 『Gemeindeverzeichnis』年次2025版、Destatis、2026年8月刊。2022年国勢調査基準、人口・境界2025年12月31日の自治体表。
- 「ドイツ基礎データ」、日本国外務省、2025年6月3日表示、一般事情「3 首都」。221号の調査記録にある2026年11月4日の親担当による本文確認を出典再利用し、首都ベルリンの根拠とする。今回の原本再取得を意味しない。
- 「大学間交流協定」、金沢大学。ドイツ欄の協定機関名と都市名にレーゲンスブルク/Regensburgを併記。次号予告の日本語都市名のみを参照。明示的な更新日は今回未確認。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第二百五十九号
次回はレーゲンスブルクを予定しています。金沢大学の協定校一覧にある日本語の都市名を手掛かりに、漢字表記の用例と候補を調べます。
