万国漢字志

都市篇 · トーゴ

万国漢字志 都市篇 第九十五号|ニャムトゥグ――調査報告に残る町の名

トーゴ北部のニャムトゥグ。森淳の現地調査報告にある日本語名とINSEEDの2022年都市人口を確認し、GeoNamesの漢字別名を字体調整した五字の「尼亜姆図古」を暫定選定する。

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人口表から調査報告へ

前号のソトウボアを確認したINSEEDの都市人口表を、もう少し下へ読み進めます。次の行のAnéhoは都市篇で取り上げたアネホ。その下に、未収録のNiamtougouがあります。

この町の日本語名は、道路計画の資料ではなく、土器と酒造りの調査報告に見つかりました。ニャムトゥグ。研究者が現地で観察した事例を振り返る段落に、その名が残っています。

都市の表には人口が一つ記されますが、調査報告には、そこで暮らす人々の道具が登場します。同じ町へ入る入口が、資料によって変わります。今回は、その日本語名と、地名データベースの五字の漢字別名を照合します。


日本語名は「ニャムトゥグ」

森淳「モバ族の酒造りと甕について」は、『国立民族学博物館研究報告別冊』12号に収められた、1990年3月30日発行の論文です。印刷699頁(PDF22頁)の「9. 考察」に、ニャムトゥグの名があります。抽出テキストだけでなく、原頁画像でも確認しました。

著者は、1980年11月から翌年3月までと、1982年12月から翌年3月までの二度、トーゴ北部を中心に生活用具などを調査したと記しています。この段落では、ダパオンの記述に加え、1980年次のニャムトゥグでの観察も交えて考察すると説明しています。日本語名の根拠は、現地調査を行った著者自身の報告です。

同じ頁には、ニャムトゥグ周辺で、ダパオンの例より小型の壺を三、四個組み合わせて雑穀酒を造る記述もあります。人口表だけを読んでいるときには見えなかった生活の道具が、ここでは地名のそばに置かれています。ただし、これは当時の観察です。現在の町全体の産業や暮らしを、そのまま説明する資料にはしません。

GeoNamesには、日本語の別名としてニャムトゥーグーも登録されています。本稿では一次報告の用例に沿ってニャムトゥグを用い、Niamtougouを併記して都市を識別します。長音の違いだけから、現地の発音や日本語表記の唯一の正解を決めることはしません。


歴史的な漢字表記は未確認

今回の論文で確認できたのは、カタカナの日本語名です。ニャムトゥグを漢字で記した日本語の歴史資料・地図や、尼亜姆図古の日本語使用・提案例は、今回の調査では原典未確認です。

1990年の用例があることと、日本語の歴史的漢字表記があることは別です。後述するGeoNamesの漢字別名を、この論文に載っていた表記として扱うこともできません。


集落の別名「尼亞姆圖古」

GeoNamesの集落項目Niamtougou(2364812)で、尼亞姆圖古と尼亚姆图古を確認しました。前者はChinese、後者はzh-hansの別名として登録されています。日本語のニャムトゥーグーも、この集落項目の別名です。

トーゴの地名一覧では、この項目はpopulated placeとして載っています。同じ一覧のNiamtougouという空港項目や、行政区域Doufelgouとは区別して読みます。漢字別名は、一覧の省略表示から補ったのではなく、集落の個別ページで確認したものです。

確認できたのは、データベースにこれらの形が実際に登録されていることです。漢字別名の初出、登録元、選字者は未確認であり、中国大陸や台湾の公的機関が標準地名として採用したことまでは確認していません。繁体字・簡体字の違いを、そのまま公的な地域別標準の証拠にはしません。

本誌では尼亞姆圖古をもとに、亞を亜、圖を図へ直した尼亜姆図古を候補とします。GeoNamesにこの調整後の形が掲載されているという意味ではありません。


二文字・三文字に収めるか

二字への短縮

確認した漢字別名は五字です。二字にするには三字を省くか、別の字で組み直す必要があります。今回の資料には、その短縮を支える二字形は見つかっていません。どの音を残すかを確かめないまま、見た目の短さだけで決めることは見送ります。

三字への短縮

三字に収める場合も、二字を省く理由が必要です。地名の語源や構造を確認できていないため、音のまとまりを推測して新しい略形を作る根拠はありません。

尼亜姆図古

五字の対応を保ち、字体だけを調整する案です。二文字・三文字を標準とする都市篇では例外ですが、既存の別名と本誌の選定との関係を追いやすくなります。読みは本稿の日本語名、ニャムトゥグとします。

「姆」を含む各字の意味を、町の生活や調査報告の酒造りへ結びつける資料は確認していません。字義から地名の由来を作ることはしません。


2022年の都市人口

INSEED『ANNUAIRE STATISTIQUE NATIONAL 2022』の表3.21は、トーゴの都市別居住人口を男女別に示しています。印刷33頁(PDF51頁)のNiamtougou行は、男性1万3,160人、女性1万3,972人、合計2万7,132人です。男女の和も合計欄と一致します。

表題、Niamtougou行、各列の見出しを原頁画像で確認しました。続く印刷34頁(PDF52頁)には、表末尾の出典としてINSEED、第5回人口・住宅国勢調査(RGPH 5)、人口の空間分布、2022年が記されています。同じ頁に始まる次の表と混同しないよう、表の続きと出典まで読みます。

この数字は都市の人口です。Doufelgou県全域や自治体全域の人口へ読み替えません。都市の集計境界と行政境界との詳しい対応は、今回の資料だけでは未確定です。

位置はGeoNamesの集落欄の北緯9.7680556度、東経1.1052778度を採ります。同名の空港の座標を町の座標として使うことはしません。GeoNamesの人口表示は基準年と範囲を確定できないため、本稿の人口はINSEEDの都市表に統一します。外務省の基礎データが示すトーゴの首都はロメであり、ニャムトゥグは国の首都ではありません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

ニャムトゥグ

所属国

トーゴ

暫定制定都市名

尼亜姆図古――改

制定状態

暫定制定・漢字別名の登録元と日本語漢字用例は継続調査

既存の尼亞姆圖古をもとに、亞と圖を亜と図へ調整するため、制定区分は「改」とします。既存形をそのまま採る「既」でも、適当な既存形がなく新しく選定する「創」でもありません。日本語の歴史的漢字表記を認定するものでもありません。

五字を採るのは、文字数を標準へ合わせるためだけの短縮を加えず、確認した別名の構成を保存するためです。短い日本語の既存漢字用例などが見つかれば、この判断も見直します。


採らなかった表記と未解決点

尼亞姆圖古と尼亚姆图古は、資料で確認した掲載形として残します。尼亜姆図古は本誌による字体調整案であり、この三つを同じ掲載形として扱いません。裏づけのない二字・三字への短縮と、一字略称は採りません。

日本語の歴史的漢字表記、調整案の日本語使用・提案例、漢字別名の登録元・初出・選字者、中国語圏の公的な都市直接用例は継続調査です。現地名の語源と都市の命名者も未確認です。

日本語名については一次報告に残るニャムトゥグを採りましたが、ニャムトゥーグーとの用例の広がりや表記史は、今回だけで確定しません。調査者の記した名前、データベースの別名、本誌の提案を、それぞれ出典とともに残します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。

都市一覧は万国漢字志 公式サイトで公開します。


次回予告|都市篇 第九十六号

次回の都市は調整中です。同じ人口表の未収録都市を中心に、日本語名と漢字形の根拠を確認してから選びます。