万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百四十六号|パルマ――Palma と帕尔玛、島を添えて読む――

マヨルカ島の Palma を、2016年の名称変更法と中国語観光案内からたどる。


同じパルマを、島の名前で見分ける

「パルマ」と聞いて、イタリアの町を思い浮かべる人もいるでしょう。今回扱うのはスペイン、マヨルカ島の Palma です。イタリアの Parma とは、カナが同じでも原綴りと所属国が異なります。

スペイン政府観光局の中国語案内は、島名 Mallorca と都市名 Palma を並べ、都市を「帕尔玛」と記しています。字だけを見る前に島を確かめると、短い地名の見分け方がはっきりします。


歴史表記

名称の変化を確認できる一次資料が、バレアレス諸島自治州の2016年法律第15号です。第1条は、対象の法律の題名と本文で「Palma de Mallorca」を「Palma」に置き換えると定めています。BOEの記録では2016年12月11日施行です。

この法律は、名称変更そのものを確認する一次資料です。前文には、それ以前の市名の変遷についての説明もあります。ただし、その歴史叙述を読んだことを、古代や中世の原文書を確認したこととは区別します。本稿では古代都市名の原典、日本語の歴史的漢字表記を確認済みとはしません。


日本語での用例

スペイン政府観光局の日本語都市案内は「パルマ・デ・マヨルカ」という見出しを使い、説明文でマヨルカ島の中心都市をパルマと呼んでいます。今回は検索サービスの収録文で確認し、本文の直接取得は未了です。

この日本語観光名と、法律に定められた Palma は役割が違います。島を添えた呼び方は旅行先の識別に役立ちますが、本稿では現地の正式名を勝手に Palma de Mallorca へ戻しません。「パルマ」をカナ名とし、必要に応じてマヨルカ島と添えます。


中国語圏その他の表記との比較

中国語の都市紹介の冒頭には「帕尔玛(Palma)」、写真の説明には「马略卡岛(巴利阿里群岛)帕尔玛鸟瞰图」とあります。都市と島が対応しているため、イタリアの Parma や、カナリア諸島の都市 Las Palmas de Gran Canaria を指す例ではないと確かめられます。

同じページの実用情報には「帕尔马海湾」という字形も見えます。玛と马の揺れを、引用の段階で一つに直してはいけません。本稿では都市紹介の冒頭にある「帕尔玛」を採用案の基礎とし、字形を変更した箇所を別に示します。台湾などでの独立した用例や、日本語の古い漢字表記の証明には使いません。


二文字・三文字案の比較

帕瑪

尔を省き、玛を瑪に改めた二字案です。短くはなりますが、Palma の中ほどに当たる部分まで落とすため、原文との対応が弱くなります。本誌の比較案であり、確認した既存用例ではありません。

帕爾瑪

「帕尔玛」の三字構成を保ち、尔を爾、玛を瑪へ改める案です。日本語向けの提案に簡体字をそのまま採らず、出典の三字との対応も保てるため、こちらを暫定採用します。この変更を加えた表記全体の日本語での使用実績まで確認したわけではありません。

帕爾馬

同じページの「帕尔马海湾」に見える马を馬に改める三字案です。こちらも資料と照合できますが、本稿は都市紹介の冒頭の形を基礎とするため瑪を選びます。馬と瑪の意味の違いから、市の性格や地名の由来を説明することはできません。

爾の通常の音読みは「ジ」で、「ル」とは一致しません。帕爾瑪を日本語の音読みだけでパルマと読むことは難しく、カナを添える必要があります。漢字にすると、Palma と Parma の原綴りの差も自動的には表せません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

パルマ(Palma、マヨルカ島)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

帕爾瑪――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

既存の「帕尔玛」に対して尔→爾、玛→瑪の字形調整を行ったため、区分は「改」です。原文のままの「既」や、日本語の伝統的表記としての「伝」ではありません。

INEの年次人口センサス表68065では、2025年1月1日の通常居住者は443,196人です。自治体コード07040の municipio 全域であり、マヨルカ島全体やバレアレス諸島全体の人口ではありません。イタリアの Parma、グラン・カナリア島の Las Palmas、別の島である La Palma とも区別します。


採らなかった表記と未解決点

帕瑪は短縮が大きく、帕爾馬は今回の基礎とした冒頭の字形と異なるため採りませんでした。採用した帕爾瑪でも、都市を見分けるには「スペイン・マヨルカ島」という情報が必要です。字形の違いだけでイタリアの同音都市と識別できる、と考えないようにします。

漢字表記の初出・命名者、日本語の歴史的用例は要継続調査です。法律による正式名の変更と、各言語の観光案内で使われる呼び方の違いも引き続き確認します。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百四十七号

次号は、グラン・カナリア島のラス・パルマス・デ・グラン・カナリアを扱う予定です。今回のパルマとは別の都市です。