万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百八十九号|パルラ――文書案内と読書感想文に残る町の名――

市文書館の現代解説と台湾の読書感想文を読み分け、直接用例のある帕爾拉を暫定採用する。


同じ町を、違う種類の紙面で読む

パルラの名は、市文書館の案内にも、台湾の読書感想文にも現れます。一方は古い特権状の記述を伝え、もう一方は都市への移住を扱う本の目次を紹介しています。地名を拾うとき、書かれている名前と、その紙面が何を証言する資料なのかを、いっしょに確かめたいと思います。

今回の対象はスペイン、マドリード自治州の Parla、INE自治体コード28106です。州政府の自治体案内は、市庁舎の住所とともにマドリード南部の municipio と紹介しています。マドリード市の一つの区として扱うことはしません。マドリード州政府「Parla」


歴史表記

2004年の『XV Jornadas de Archivos Municipales』に、パルラ市文書館の所蔵資料案内があります。「Archivo Municipal de Parla」の「2.2. Historia institucional」に、1338年にアルフォンソ11世が与えた特権状の説明があり、「la aldea que dicen parlas en el término de Madrid」という文言を引用しています。モストレス市公開の会議録、PDF99ページ目

引用の小文字・末尾の s を含む parlas は、この現代の文書館案内で読めた形です。1338年の特権状原本、写しの伝来、全文の校訂は未確認です。案内自身は最初の現存文書と位置づけていますが、本稿が中世の記録を網羅して地名の初出を確定したわけではありません。村が生まれた年や、名前を付けた人物も、ここからは決めません。

同じ項目は、当時の現市域を Parla と廃村 Humanejos によって説明しています。昔の集落名と、現在の自治体全域を指す Parla の統計値には、範囲の違いがあります。日本語の歴史的漢字表記をこの文書館案内で確認できた、ということでもありません。


日本語での用例

伊藤雅・塚本直幸ほか「LRTプロジェクトの成立要件に関する事例考察――スペインにおける事例調査に基づいて」は、『都市計画論文集』48巻3号、2013年、189〜194頁に掲載された論文です。191頁の小見出しに「(7) パルラ(Parla)」とあり、マドリッドの近郊都市の事例として、鉄道の拠点駅と市内の主要施設を結ぶ路面電車を紹介しています。学会公開PDF、191頁

本稿はこのカナ名と原綴りの対応を採ります。調査論文の本文を直接読んだもので、2026年現在の運行時刻や路線の営業状態を確認したものではありません。論文の過去年次の人口概数も、今回の人口には使いません。


中国語圏その他の表記との比較

台南市政府のサイトが公開する『開啟的未知旅程--落腳城市讀後感』は、都市への移住を論じる本の読書感想文です。4頁に「帕爾拉(Parla),西班牙」とあり、同じ行で空間と市民としての身分をめぐる問題を掲げます。PDF本文の文字とページ画像の両方で、都市名の三字を確認しました。公開PDF、4頁

これは、その感想文自身が使った現代の漢字表記の直接用例です。行政サイトに置かれた文章であっても、公定訳を定める告示ではありません。著者名と本文の執筆年月は今回特定できず、PDFの作成日時に2014年8月29日とあることも、刊行日とは区別します。

同文は脚注で『落腳城市』の304頁を参照しますが、その本の当該頁は未見です。本の原著者や翻訳者がこの漢字名を初めて作った、とさかのぼって主張することはしません。直接確認できた感想文の三字を、そのまま「帕爾拉」として採ります。日本語で用いられる字形にそろえるための変更も、省略もないので区分は「既」です。


二文字・三文字案の比較

帕爾拉

直接確認した現代用例と同じ三字です。Parla と国名が併記されている点も識別の助けになります。ただし、日本語の通常の音読みではハ・ジ・ラなどとなり、パルラという読みは自然には出ません。日本語名と原綴りを添えて使う案です。「既」は日本語の伝統名としての定着を認める「伝」ではありません。

帕拉

「爾」を省いた二字の調整案で、区分は「改」です。短くはなりますが、中間の音を示そうとした部分がなくなり、他の地名の音写にも重なりやすくなります。日本語の読みからパルラを復元しにくい点は残ります。この二字を当該都市の既存略称として確認したわけではありません。

波留羅

日本語で読むときの音を手がかりに、本誌が比較のために作る三字案で「創」です。「波」は通常ハ、「留」はル、「羅」はラと読めますが、最初の字をパとするには特別な指定が要ります。「波留」という人名風の読みを都市の歴史的な呼び名と結びつける根拠もありません。読みやすさを期待して字を選んでも、カナを不要にはできません。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

パルラ(Parla)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

帕爾拉――既

制定状態

暫定制定・原典継続調査

INE年次人口センサス表68065による2025年1月1日の通常居住者人口は138,012人。自治体コード28106の municipio 全域で、中心市街地だけでも、マドリード市の人口でも、周辺自治体を合算した都市圏人口でもありません。INE表68065

用いたのは2026年11月7日保存の2025年版です。公表日は2025年12月2日、対応PXの作成日表示は2026年4月30日。保存CSVのSHA256は 9e37188faa63aa86e7a8648469834beaa2e728e5338e3364ef1ce4685178d419、該当する原行は物理65867行の Total Nacional;28106 Parla;Total;2025;138.012 です。

国・自治体コード・現代名をそろえて対象を識別します。Parla という人名や施設名、似た綴りの別自治体を同じ都市としては数えません。代表点は保存済み選定資料のGeoNamesを継承しました。独立した自治体境界ポリゴンの版、中世の集落と現市域の境界の一致は未確認です。


採らなかった表記と未解決点

短縮案「帕拉」や創案「波留羅」より、原綴りとの対応を直接確かめられる「帕爾拉」を残します。今回の用例が最初の漢字名であるとはせず、命名者や日本語での歴史的漢字用例も未確認とします。

中世について残るのは、現代の文書館案内が引用する特権状と原本との照合です。読書感想文については、参照された書籍そのもの、著者名、執筆・公表の年月が継続調査に残ります。読めた紙面の性質を限定しておけば、これらを確認しきれなくても、現代用例に基づく暫定案は示せます。


参考資料

  • 『XV Jornadas de Archivos Municipales』、2004年。モストレス市公開。PDF99ページ目「Archivo Municipal de Parla」、2.2節。文書館案内そのものを直接閲覧。1338年の文書原本・全文校訂は未見。
  • マドリード州政府「Parla」。現代の自治体案内。成立・更新年月不記載。現市と州・市庁舎の対応に使用。
  • 伊藤雅・塚本直幸ほか、2013年論文。日本都市計画学会『都市計画論文集』48巻3号、189〜194頁、191頁(7)。公開PDFを直接取得し本文を確認。現在の運行状況の根拠にはしません。
  • 『開啟的未知旅程--落腳城市讀後感』。台南市政府公開、4頁。文字抽出とページ画像で三字と原綴りを照合。著者・刊行年月未確定、参照書籍304頁は未見。
  • INE表68065。上記保存版、28106、2025年・男女計。原行とSHA256を再計算・照合。
  • スペイン憲法。第5条、国家の首都はマドリード。1978年公布、参照した統合本文は2026年5月20日更新表示。
  • GeoNames:Parla。保存済み選定資料から継承する代表点。今回ライブ取得は行わず、人口・境界の根拠にはしません。

編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百九十号

第三百九十号はマタロー(Mataró)を取り上げます。