万国漢字志

都市篇 · スペイン

万国漢字志 都市篇 第三百九十六号|レウス――二つの特許状と、一字の字形変更――

市文書館の特許状解説と州の多言語資料を読み、雷乌斯から雷烏斯への調整を考える。


一つの町に、二つの特許状

レウス市文書館の案内には、1183年と1186年という二つの年が並んでいます。町への権利を記す特許状が二通あるのは、同じ町の領主権が分かれていたためだと、市の解説冊子は説明します。数字が二つあるからといって、二つの町を指すわけではありません。市文書館の解説冊子

現在の対象は、スペインの Reus、INE自治体コード43123です。中世の町の記録と、現在の自治体全域の人口を分けて読み、現代の多言語資料に見える漢字名を考えます。


歴史表記

市文書館が2017年11月24日に公表した案内は、1183年8月5日と1186年6月2日の Cartas de población y franquezas を挙げます。前者を Bernat de Bell-lloc と Agnès、後者を Joan de Sant Boi によるものとして紹介しています。市文書館の案内

同じ市の解説冊子は、12世紀の町の成立を述べる一方、創設された時点は分からないと留保しています。また、1154年を町が文書に現れる年として紹介します。これを本稿が独自に証明した「地名の初出」とはせず、市文書館の現在の説明として読みます。解説冊子、PDF3ページ目

今回取得できたのは案内本文と解説冊子の抽出テキストです。案内がリンクする二通の翻刻・翻訳PDFは取得を試みましたが403で読めず、羊皮紙の原本画像や翻刻全文との照合は未実施です。冊子中の短いラテン語引用を読むことと、中世文書全体を実見することは区別します。領主や特許状の授与者を、都市名の命名者とも扱いません。

日本語の歴史的漢字表記は原典未確認です。中世の権利の及ぶ範囲を、2025年の municipio 全域と同一とも認定しません。


日本語での用例

スペイン観光公式サイトは日本語見出しを「レウス」としています。本稿はこのカナを採ります。公式日本語観光案内

同ページはタラゴナ県・カタルーニャ州の中の目的地として紹介します。レウスとタラゴナを一つの都市として合算したり、周辺の観光地域全体をレウス市域と読み替えたりはしません。人名や施設名に Reus の綴りがあっても、この自治体コードとの対応を確かめる必要があります。


中国語圏その他の表記との比較

カタルーニャ州文化部の多言語リーフレット『A Reus, el català al comerç!』には、地域の言語標準化センターの名称が各言語で並びます。中国語欄の「雷乌斯地区米克尔-德文图拉语言标准化中心」が、カタルーニャ語の Àrea de Reus を含む名称と対応します。州公開のリーフレット、PDF1ページ目

同じ面には Reus の住所があり、2020年を含む法定納本番号も載っています。これは地域の商業と言語の案内で使われた現代中国語用例で、漢字地名を制定する告示ではありません。センターの活動地域を自治体の境界ともみなしません。

引用するときは原文どおり「雷乌斯」と記します。本誌の制定案は、日本語で用いる「烏」に替えた「雷烏斯」です。一字の字形変更であっても同一形の実例とはいえないため、区分は「改」。今回読めたリーフレットを「雷烏斯」の直接用例として示すことはしません。ページ画像の取得には失敗しており、字形の確認はPDFの抽出テキストによります。


二文字・三文字案の比較

雷烏斯

確認した「雷乌斯」の三字構成を保ち、「乌」を「烏」に替える案です。「雷・烏・斯」の通常の日本語音読みをつなげても、レウスの音そのものにはなりません。「雷」のライとレの違いなどが残るため、カナと原綴りを添えます。既存の日本語漢字地名として採るものではありません。

雷斯

原文の中間の「乌」を省く二字案で、区分は「改」です。残る二字に字形変更がなくても、省略は本誌の操作です。短くなる分、原名の中間の音を示す材料が減り、日本語の通常の読みでもレウスにはなりません。この形の実際の都市略称は未確認です。

礼宇斯

カナのレ・ウ・スを手がかりに別の字を選ぶ、本誌の「創」案です。「礼」は通常レイとなるなど、これも音を完全には写せません。語義を都市の歴史に結びつける根拠もないため、既存音写との関係が見える「雷烏斯」を優先します。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名

レウス(Reus)

所属国

スペイン

暫定制定都市名

雷烏斯――改

制定状態

暫定制定・原典継続調査

INE年次人口センサス表68065による2025年1月1日の通常居住者人口は111,911人。Sexo=Total・Periodo=2025、コード43123の municipio 全域です。歴史地区だけ、空港の利用者、タラゴナ市との合算、周辺の都市圏の人口ではありません。INE表68065

使用したのは2026年11月7日保存版です。公表日は2025年12月2日、対応PXの作成日表示は2026年4月30日。保存CSVのSHA256は 9e37188faa63aa86e7a8648469834beaa2e728e5338e3364ef1ce4685178d419、該当原行は物理97247行です。

国・現代名・自治体コードを一組で保持します。代表点は選定資料のGeoNamesの位置を継承し、独立した自治体境界ポリゴンの版は未確認です。中世の二つの領主権を二自治体として数えることもしません。


採らなかった表記と未解決点

「雷乌斯」は現代の直接用例として保存しますが、本誌の採用字形とは区別します。「雷烏斯」そのものの直接用例、日本語の伝統的漢字原典、漢字表記の初出・命名者は未確認です。

二通の特許状の原本画像と翻刻全文の照合も残ります。確認した現代の解説が伝える年代、現代中国語の実用表記、本誌の字体調整を、それぞれ別の根拠として示す段階の暫定案です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第三百九十七号

第三百九十七号はカディスを取り上げます。