大学名の外にある五字
中国教育部のドイツ学校一覧には、罗伊特林根を含む大学名が載っています。しかし、大学名にある五字を見つけただけで、市の中国語表記も確認できたといってよいでしょうか。
そこで、復旦大学管理学院によるドイツ研修の報告も読みました。企業名を曼兹(Manz)、その所在地を罗伊特林根と分けて記しています。大学名の構成部分と、場所を指す地名。この二つの用例を区別した上で、五字を日本語の漢字へ移す案を考えます。
歴史表記
ロイトリンゲンの日本語の歴史的漢字表記は、現時点では原典未確認です。 今回確認した日本語用例はカタカナで、中国語用例は現代の電子本文です。五字の漢字があることだけで、日本語の歴史表記と位置付けることはできません。
市公式の「Daten & Fakten」は、Reutlingenを同名の郡に属する市として紹介し、かつて帝国自由都市であったことも説明しています。本稿が読んだのは現在の市の解説で、帝国自由都市時代の文書そのものではありません。
古い都市の経歴と、日本語の漢字がいつ使われたかは別の問いです。市の沿革から漢字の使用年代を推定せず、初出と選字者は継続調査とします。
日本語での用例
野上記念法政大学能楽研究所の「組織」は、客員所員アイケ・グロスマンの紹介で、出身地をドイツ、ロイトリンゲン市と記しています。
研究者の所属大学は別の欄に記されており、このロイトリンゲンは所属機関名を省いたものではありません。「市生まれ」とあるため、都市を指す日本語の用例と判断できます。本誌の現代日本語名と添える読みはロイトリンゲンです。
このページの当該紹介が最初に掲載された日や、ロイトリンゲンというカタカナの初出は、今回未確認です。現行の研究所紹介で読めたことと、日本語でいつから使われたかを分けておきます。
中国語圏その他の表記との比較
復旦大学管理学院の「浦东新区企业家创新领导力高级研修项目(第六期)——欧洲游学篇之德国斯图加特大学(二)」は、2015年7月7日付です。本文は同年6月の研修を報告し、訪問先企業について位于罗伊特林根的曼兹(Manz)集团と記しています。
ここで罗伊特林根は「そこに位置する」という所在地の地名です。企業名は曼兹、ラテン文字はManzとして別に示されています。したがって、会社名そのものを都市名だと読み違えることなく、罗伊特林根の地名用例を確認できます。ただし、この所在地紹介は自治体の境界や人口範囲を定義する資料ではありません。
中国教育部の「德国学校名单」では、一覧257番の大学名に罗伊特林根とReutlingenが使われています。これはラテン文字との対応を補う用例ですが、主題は学校一覧です。単独の市名を定める告示としては扱いません。
本誌では罗を羅へ調整し、羅伊特林根とします。今回の二資料がすべての中国語圏の用字を代表するとはせず、他地域の字体や異表記は継続調査に残します。
二文字・三文字案の比較
羅根
調整後の先頭と末尾だけを残す本誌の二字案です。既存の市名用例は未確認です。ラ・コンという音読みの例から、ロイトリンゲンは導けません。伊・特・林を省く根拠もないため採りません。
羅林根
先頭と末尾寄りの二字を残す本誌の三字案です。伊・特を落としますが、その省略を支える用例は未確認です。ラ・リン・コンと読んでも都市名の前半は再現できず、三字へ収めることの利点は字数以外に乏しいと考えます。
羅伊特林根
確認した罗伊特林根の順序と五字を保ち、罗だけを羅へ移す案です。二字・三字を標準とする本誌では五字の例外ですが、出典へ一字ずつ戻れること、根拠のない短縮を加えないことを採用理由にします。
五字をラ・イ・トク・リン・コンと音読みしても、ロイトリンゲンにはなりません。添える読みは法政大学の日本語用例に基づく都市名です。漢字の通常の読みから導いたものでも、中国語の発音をそのまま日本語へ写したものでもありません。
万国漢字志の暫定案
現代日本語都市名
ロイトリンゲン
所属国
ドイツ
確認した現代中国語の地名用例
罗伊特林根
暫定制定都市名
羅伊特林根――改
制定状態
暫定制定・原典継続調査
罗を羅へ調整する操作があるため「改」です。無変更の「既」や、日本語の歴史原典に基づく「史」とは分けます。五字という長さを、日本語で自然に読めることの証拠にはしません。
人口はDestatis年次版の2025年12月31日現在119,040人。2022年国勢調査を基礎とする公式人口更新統計で、人口・自治体境界とも2025年12月31日、2026年8月刊の版です。範囲はReutlingen, Stadt、自治体コード08415061の市全体。同名のReutlingen郡全体や、大学の学生数、周辺都市圏を合算した数値ではありません。
採らなかった表記と未解決点
羅根と羅林根は、本誌が今回比較のために組んだ短縮案です。既存の市の略称として紹介するものではありません。五字を残す判断も、将来より短い有力な用例が見つかる可能性を閉ざしません。
羅伊特林根という字体調整後の形を、日本語の歴史刊本で確認したわけではありません。漢字表記の初出・選字者、日本語での使用、他の中国語圏の地名用例は未確認です。研修報告の掲載日を、漢字の成立年とすることもできません。
また、企業訪問先の所在地を確認したことは、歴史的な市域と2025年の統計上の市域が完全に同じという証明ではありません。現在の市と郡の区別は市公式の説明と自治体別統計により、人口はその市の行に限って扱います。
参考資料
- 「組織」、野上記念法政大学能楽研究所。客員所員アイケ・グロスマンの紹介にロイトリンゲン市。当該紹介の初出・更新日は今回未確認。
- 「浦东新区企业家创新领导力高级研修项目(第六期)——欧洲游学篇之德国斯图加特大学(二)」、復旦大学管理学院、2015年7月7日。研修報告で企業の所在地を罗伊特林根と記す。企業名は曼兹(Manz)。
- 「德国学校名单」、中国教育部教育涉外監管信息網、一覧257番。罗伊特林根を含む大学名とReutlingenの対応を確認。学校一覧であり、市域を定める資料ではない。本文の刊行日は未確認。
- 「Daten & Fakten」、Reutlingen市。市と同名の郡との区別、帝国自由都市についての現行解説。
- 『Gemeindeverzeichnis』年次2025版、Destatis、2026年8月刊、Reutlingen, Stadtの行。人口・境界2025年12月31日。
- 「ドイツ基礎データ」、日本国外務省、2025年6月3日表示、一般事情「3 首都」。2026年11月4日に確認済みの首都ベルリンという出典を再利用。
編纂綱領と公式サイト
本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。
次回予告|都市篇 第二百七十号
次回はブレーマーハーフェンを予定しています。Bremen市と別の自治体であることを確認し、市名の五字を検討します。
