万国漢字志

都市篇 · イタリア

万国漢字志 都市篇 第二百九十五号|ローマ――現代中国語の「羅馬」と明治資料の手がかり――

現代中国語の羅馬を採り、明治の見聞録に由来する文字レイヤーの候補と比べる。


病院の図版を手がかりに「羅馬」を探す

岩倉使節団の見聞録には、ローマの軍病院を扱う図版があります。その公開資料の文字レイヤーから「羅馬」が候補に上がります。本誌は台湾の現代公文で使われる二字を採り、|羅馬《ローマ》と表記します。


歴史表記の候補

久米邦武編『特命全権大使米欧回覧実記』(博聞社、1878年)第四編第七十六巻は、明治6年(1873年)のローマ訪問を扱います。

国際日本文化研究センターの公開資料の文字レイヤーでは、60頁の軍病院の図題が「羅馬軍病院ノ浴湯所」と抽出され、翌日の遺構訪問を扱う61頁の図題にも「羅馬」が抽出されます。PDFがHTTP 503を返したため、該当頁の画像との照合は未了です。両図題の字形や当時の読みは未確認です。


日本語での用例

在イタリア日本国大使館の「大使館案内」は、関連機関として在ローマ国際機関日本政府代表部を挙げています。本稿は現代の都市名にローマを用います。イタリア共和国憲法第114条が首都と定める地名はRomaです。


中国語圏その他の表記との比較

中国外交部の領事案内は罗马、台湾の僑務委員会のナポリ訪問報告は羅馬と書きます。後者はローマから会合へ来た人物に言及する箇所です。文字レイヤーの候補も羅馬ですが、明治期の印刷字形や伝来の方向は未確認です。


二文字・三文字案の比較

羅馬

台湾の現代公文にある二字です。ラ・バなどの字音を並べてもローマにはならず、長音をどの字に割り当てるかも決まりません。|羅馬《ローマ》と都市名全体に読みを添えます。

羅馬府

羅馬に都市を示す府を添える本誌の三字の比較案です。府まで読むか、現在の行政区分を示すかが曖昧になるため、現代の用例に沿って羅馬を採ります。


万国漢字志の暫定案

現代日本語都市名
ローマ(Roma)

所属国
イタリア

暫定制定都市名
羅馬――既

制定状態
暫定制定・原典継続調査

台湾の公的資料にある現代表記に基づく「既」です。|羅馬《ローマ》のルビは本誌が添える現代日本語名です。

人口はイタリア国家統計局(ISTAT)の確定版で2,747,290人。自治体コード058091のRomaについて、国勢調査の結果を反映した2024年12月31日の年末人口です。翌2025年1月1日年初と同じ時点の人口として扱います。集計範囲はコムーネ(基礎自治体)で、広域自治体や都市圏の集計とは区別します。


採らなかった表記と未解決点

中国大陸の罗马は現代中国語の用例として残します。明治期にこの二字がいつから使われ、どう読まれたかは、この図版と抜粋だけでは分かりません。歴史上のローマの領域や現在の都市圏も、ここで数える自治体の範囲とは別です。


参考資料


編纂綱領と公式サイト

本稿は万国漢字志 編纂綱領に基づいて調査・選定しています。 都市一覧は 万国漢字志 公式サイト で公開します。


次回予告|都市篇 第二百九十六号

次はミラノ。現代中国語の米蘭と日本語のミラノを見比べます。